全世界で累計1500万部を売り上げたディーリア・オーエンズの同名ミステリー小説を映画化。

ノースカロライナ州の湿地帯で、将来有望な金持ちの青年が変死体となって発見された。犯人として疑われたのは、「ザリガニが鳴く」と言われる湿地帯で育った無垢な少女カイア。彼女は6歳の時に両親に捨てられて以来、学校へも通わずに湿地の自然から生きる術を学び、たった1人で生き抜いてきた。そんなカイアの世界に迷い込んだ心優しい青年との出会いが、彼女の運命を大きく変えることになる。カイアは法廷で、自身の半生について語り始める。

リース・ウィザースプーンが製作を手がけ、ドラマ「ふつうの人々」で注目を集めたデイジー・エドガー=ジョーンズが主演を務めた。音楽は「ライフ・オブ・パイ トラと漂流した227日」でアカデミー作曲賞を受賞したマイケル・ダナ。テイラー・スウィフトが本作のためのオリジナルソングを書き下ろしたことでも話題を集めた。

2022年製作/125分/G/アメリカ
原題:Where the Crawdads Sing          映画.comより転載

 

 


人間も生物としての種の一つである、と主人公が本能的に?考えているとわかったところでミステリーとしては読めてしまいます。

人間も自然の一部であるならそこには人間社会の善悪とは違う基準が存在する、カイアはそんな基準の中で生きている。

彼女にも6歳までは家族がいた、その6年の間に人間としてのベースができていた、そして思春期を迎えるまで生き抜く知恵を身に着け一人で生活していたが、それは自然の摂理とともにあった、絶妙なバランスで成り立つ人物です。

 

その行動原理は人間社会のそれとは違っている、だからだれもが見抜けない、けれど観客には見抜けるシーンがある、そこで、あ、そうなんだと思うのですが、それが良くないわけではなく、魅力的な布石になっています(サスペンス映画としてはどうかな?と思うシーンですが)。

この人間社会を超越したカイアという主人公の人物造形がが本作に単なる恋愛映画やサスペンス映画ではなく文学的香りをもたらしているのでしょう。
原作者は動物学者のようですが、なるほどと頷けます。

 

この人物の背景になる湿地帯の映像がとても魅力的で、主人公を演じたデイジー・エドガー・ジョーンズが硬質でセンシティヴである種ピュアな人物像を見せてくれます、自然と一体化した暮らしにしては可愛い衣装の数々ですが、そこは映画ですので、この映画の作りには合っていると思います。

ザリガニの鳴くところとはどういうところでしょうか、人間社会の常識を超越したところなのか、自身の依って立つべきところなのでしょうか、いろいろ考えます。