かつてヘアメイクドレッサーとして活躍した「ミスター・パット」ことパトリック・ピッツェンバーガー。ゲイとして生きてきた彼は、最愛のパートナーであるデビッドを早くにエイズで亡くし、現在は老人ホームでひっそりと暮らしている。そんなパットのもとに、思わぬ依頼が届く。それは元顧客で親友でもあったリタの遺言で、彼女に死化粧を施してほしいというものだった。リタのもとへ向かう旅の中で、すっかり忘れていた仕事への情熱や、わだかまりを残したまま他界したリタへの複雑な感情、そして自身の過去と現在についてなど、様々な思いを巡らせるパットだったが……。

「バクラウ 地図から消された村」「ダンサー・イン・ザ・ダーク」などの名優ウド・キアが主演を務め、主人公パットを強烈な個性で熱演した。2021年・第34回東京国際映画祭「ワールド・フォーカス」部門では「スワン・ソング」のタイトルで上映。

2021年製作/105分/G/アメリカ
原題:Swan Song                 映画.comより転載

 

 

人生の最後に、自分を肯定し愛と誇りを取り戻していくロードムーヴィー。

老人ホームで”ひっそりと”暮らす元伝説のヘアメイクドレッサー”ミスターパット”

問題ありの老人でホームのスタッフを日々悩ませている、それはアーティストのこだわりであったり、プライドであったり。

そんなところへ元顧客リタの死化粧の依頼が舞い込む。

平静を装うが彼の心は揺れている。

パートナーであるデヴィッドを亡くしてから、不幸のつるべ打ち、すっかりひねくれて失意のうちにホームで暮らしているわけですが、パットの心はアーティストとしてのプライドや、かつての裏切り、提示された金額、様々なことに揺れ動き、朦朧としたままリタの元に向かっているようだ(観客にもよくわからない)。

 

かつての顧客であり親友だと思っていたリタの葬儀に向かう混沌とした行動の中で時系が変わるわけではないが、夢や妄想の中何が事実だったのか次第に彼の認識が変わっていく。

それとともにカリスマヘアメイクドレッサーとしての自信を取り戻していく。

 

彼の人生は空回りで終わるところであった、最後の最後、愛情や友情や信頼、そんなものに恵まれた豊かな人生であったことに気が付く(目線を変えれば物事は違って見える、幸不幸は表裏一体、自分次第、それがこの映画のメッセージだろう)。

 

スワンソングとは白鳥がこの世を去る際に、最も美しい声で歌うとされる伝説から生まれた言葉らしい。

アーティストの生前最後の作品を指すようだが、パットの場合それはリタの死化粧を指す。

もちろんパットスワンはこの上もなく美しく歌うのです。

 

自分は幸せな人生を生きたのだと満足な思いでこの世を去る。

この映画もまたつじつまの合わないところ多々、でもそれがそんなに大事なことだろうか、多幸感を感じさせてくれることはもっと大事だと思わせてくれる映画。

コメディテイストなので重くないところも良い。

 

ウド・キアーさんの怪演が大きな見所です、さすが~、という嵌りぶり!

 

老いてなお魅力的。

 

 

当時のヒット曲が使用されていて懐かしい。