第2次大戦後のニューヨークを舞台に、作家志望の青年の目を通して、アウシュビッツから生き延びたポーランド人女性ソフィーとユダヤ人の恋人の過酷な愛のドラマが綴られる。反ユダヤ主義の環境に育ちながらナチに人生を踏みにじられた女性をメリル・ストリープが熱演し、アカデミー賞主演女優賞を獲得。

1982年製作/151分/アメリカ
原題:Sophie's Choice

 

 

 

この映画、もう40年近く前の作品なんですね、時のすぎるのは早いです (ネタバレ)

DVD鑑賞していますが、もう一度観る勇気の出ない映画でしたが、もう一度観たいという気持ちはずっとありました。

コロナカで映画館へはほとんど行かなくなり、この機会にDVD鑑賞するという・・・まあ、チャンスと言いますか、良い方に考えることにして、やはり観てよかった。

 

本作、ざっとのストーリーを書かないと、なんだかわからないレビューになってしまうのですが、そこをまとめるとレビューに時間がかかってしまい、ご推察くださいという無責任なレビューです。

 

先ず、原作が名著なのと、それをハリウッド的華のある映画にしているのは、さすがアメリカ映画、同じ題材でもヨーロッパ映画のナチス物とはカラーが全く違います。

語り手が作家志望の冴えない若者スティンゴ、彼が出会った二人ソフィーとネイサン、仲の良い美男美女のカップルでスティンゴのあこがれだった。 でも彼は徐々にこのカップルに違和感を感じる、ネイサンの奇行、それに対処するソフィーの不自然さ、自分ならもっと彼女を幸せにできるのにという思いが芽生える。

そして明らかにされてくるソフィーの壮絶な過去、ソフィーの過去は彼女にとって正視できないものであり自分でもどれが本当かわからないほど混乱している、でも彼女にはわかっているのだ、その辛さは想像を絶する。

人生は選択の連続で今がある、その選択は自分が責任を負うものであるけれど、負いきれないものもある、なかったこととして生きられない、その時で時間は止まり、”その機会”を待つのみ。

なぜソフィーがネイサンを恋人として選んだのか、それはもちろん愛していたからだろうが、彼に自分と同類のものを感じていた、終わってしまった人生を生きている者同士。

 

強制収容所での過酷な選択、誰もが狂気に陥っていた、ナチスの将校や医師もまた(そういうようには描いていないが、狂気だということはわかる異常な残酷さ)、彼女が選ばされたもの、彼女の子供たち、どちらが大事かなどとは考えたこともなかった、でも、一人を選ばなければ二人ともがガス室行きだ、選べば一人は助けると言われれば?残した子供の方が可愛かったのか?と言えばそうではない、でもそうなのだ、その時に初めて分かった本心なんだろう、何と残酷な。

この選択で子供たちは死んだ、でも実はソフィーも心が死んだのだと思う。

 

スティンゴと幸せな人生を選ぶことも出来た、でもその幸せが彼女に決意させたのかもしれない、自分の人生にふさわしい場はネイサンとともにある。

ベッドに横たわるソフィーとネイサンの安らかな死に顔は幸福そうにさえ見えた。

 

この映画を観て、2016年制作の『マンチェスター・バイ・ザ・シー』を思った。

過失で子供たちを焼死させてしまった夫であるリーは立ち直れない、荒れた生活を送っている。

対する妻ランディは夫をののしり憎むことでようやく前を向くことが出来るようになってくる。

「あなたを散々ののしった」とランディは言う、それが彼女の生きる支えになっていた、そして再婚してもう一度母になろうとしている。

言葉にできないほどつらいだろうが、リーとは立ち位置が違うのだ。

自分が殺したんだという思いからリーが解放されることは生涯ないだろうと思うけれど、少しずつ癒されていくことはあるのかもしれないそういう救いがかすかに感じられる映画だった。

 

メリルの演技は申し分なくしかも彼女の美しい時代(30歳代半ば?)、そしてケヴィン・クラインの魅力的なこと、多彩な才能を見せてくれる。

特にケヴィン・クラインのファンというわけではないが、その才能に魅せられる。