オスカー女優のアネット・ベニングとビル・ナイが離婚の危機を迎えた熟年夫婦を演じ、「ゴッズ・オウン・カントリー」のジョシュ・オコナーが息子役で共演した家族ドラマ。イギリス南部にある海辺の町シーフォードで暮らすグレースとエドワードは、もうすぐ結婚29周年を迎えようとしていた。独立して家を出た一人息子のジェイミーが久しぶりに帰郷した週末のこと、エドワードは突然「家を出て行く」とグレースに別れを告げる。その理由を聞いてグレースは絶望と怒りに支配され、そんな母を支えるジェイミーも自身の生き方や人間関係を見つめ直していく。「グラディエーター」「永遠(とわ)の愛に生きて」でアカデミー脚本賞に2度ノミネートされたウィリアム・ニコルソンが、自身の実体験をベースに脚本を執筆し、自ら監督も手がけた。
2018年製作/100分/G/イギリス
原題:Hope Gap 映画comより転載
致命的にダサい邦題 (ネタバレ)
なんなんでしょうか、このセンス。
映画が秀作だけに腹立たしい、原題『Hope Gap』で意味は伝わらなくとも鑑賞後納得できる、イギリス南部の海辺、絶景の崖下に広がるHope Gapと呼ばれる入江は主役の一部だから。
監督・脚本を手掛けたウィリアム・ニコルソンの若かりし頃の家族の崩壊を描いています、両親アネット・ベニングとビル・ナイ、そして彼自身をジョシュ・オコナーが演じています。
29年間連れ添った夫からまさかの離婚宣言。
まさか?そうかまさかか~、そういう妻なのだね、アネット・ベニングお得意の役で嵌っています、インテリで自信過剰で押しつけがましい。
私が夫なら5年以上は無理かな、夫は私に不満などないはずと思いこみ自分の価値観でマウントをとってくる。
最初はそういう女性も魅力的だったかもしれないが、大きなストレスになっているのがわかる。
片やそれを受け止めるビル・ナイはかなりの忍耐強さだ、これまた彼にぴったりの役。
実は精神的に弱く自立できないのは妻の方で本人は自信たっぷりでわかっていない、支えてきたのは夫・・・・良くある話だ。
多分、夫は忍耐強く受け止め続けるつもりであったのではないかと思うが、彼には新しい未来と希望が見えてきた、自分のために生きると決めたらこういう忍耐強い男性に翻意などない(妻への情は欠片も残っていないというのが残酷)。
「円満な家庭や夫婦関係には努力が必要」と繰り返し言う妻だが、努力にも方向性がある、夫がその努力を早々に諦めたのがよくわかる(逃げたともいうが)。
一つの家族の崩壊を会話中心に、英国が誇る詩人の詩などを織り込み、怖いような断崖絶壁と優しく癒してくれる入江を対比させながら、描いていく、なかなか格調高いのです。
この母に育てられた心優しい息子、この映画の監督のことだけれど、少々マザコン気味、支配的な母だからこのくらいで済んでよかった、自立できない心配もあったくらいだが、この息子がいたから母は、なんとか生きる一歩を踏み出せたのかもしれない。
夫が家を出ていく決心が出来たのは、夫に愛する人が出来たから。
でも、それを認められない・・・つまりそれは嘘で自分から逃げ出したいからと思う妻があまりに痛い。
でも、認めざるを得ない事実を目の前に突き付けられる。
夫の恋人と対峙することになる、う~ん、このシーンは無い方がよかったように思います、どういう女性かはわからないが彼は恋をしているということにとどめておいた方がより上出来だったかもです。
崩壊の痛みを乗り越えまた新しい未来が開けると思わせるラストシーンにはあたたかい眼差しが感じられます。