『赤い闇 スターリンの冷たい大地で』

 

1930年代の世界的な大恐慌のなかで、なぜソビエト連邦だけが潤っているのか? そんな素朴な疑問をヨシフ・スターリンにぶつけるべく、かの国に赴いたジャーナリストがいた。文字通り命賭けで真実を追求したジャーナリストの生き様を通して、国家による虐殺行為と欺瞞を暴く・・・という映画。

理想をあざ笑うかのような現代社会を上手に泳ぎ渡ってゆく、その先にあるもの、その陰に隠されたもの、1930年も現在もさほど変わりない(それを告発しようとする使命感を持つジャーナリストの運命は今も昔も変わりない)、そんなことを描きたかったのだろうと思う。

この映画の脚本家の祖父はホロドモールの生き残りであったらしい。

ピーター・サースガードが良い仕事をしていたと思う。

 

『ドッグヴィル』

 

これは、傑作です。

177分という長さ、人の本性を暴き出すという露悪趣味な映画、コロナカの時間のある時じゃないとなかなか観る気がおきない。

しかし、見始めたらあっという間、長さを感じさせません。

章立てになっていてプロローグと9章、その一つ一つがあっという間に終わります。

弱いということは罪だ、他人を欺き自分を欺く、それはいずれ自分自身を滅ぼす、偽善者を叩きのめす怪作(自分は絶対偽善者ではない、そう言い切れる人がいたらおめでたいと思うが)。

 

地味な豪華キャストが贅沢で、とことん節約(じゃなく意図された?)したセットが効果的、町全体が俯瞰で見渡せる、そこに蠢く人間が突き放して捉えられている。

弱くて醜悪な人々の中でグレース!=ニコール・キッドマンの美貌が際立ちます。