1960年代中頃の四国の田舎町を舞台に、ベンチャーズに憧れ、ロックバンドに情熱を燃やす高校生たちを軽快に描く青春ドラマ。監督は「ふたり」の大林宣彦。第105回直木賞を受賞した芦原すなおの同名小説(河出書房新社・刊)を原作に、脚本を石森史郎、撮影を萩原憲治と岩松茂が担当。特別出演するベンチャーズの「パイプライン」をはじめ、60年代のロック・ミュージックが全編に散りばめられている。

1992年製作/135分/日本
配給:東映                                        映画.comより

                          

                

 

今も色褪せない青春映画の傑作

芦原すなおの原作1991年の直木賞受賞作でかなり話題になりました、1年後映画化されて、当時邦画を観ることが少なかったのだけれど、原作が面白かったので珍しく映画館へ、とはいうものの映画の記憶はほとんどない、寺の跡取り息子の合田富士男が高校生のくせに変に世慣れていて言うことなすことがいちいち笑える(すでに一人前の跡取りなんだ!)というくらいの印象しか残っていない。

しかし、高校生の浅野忠信を観たいな~、という”不純”というかまっとうな映画ファンの動機でDVDを借りたのだが・・・・
すみません、驚いた~、これ大林亘彦監督の映画だったんですね。
大林監督作の常連俳優が適材適所軽妙な演技で脇を支え、それぞれの人物描写に大きな魅力があります、主人公竹良の父と母ベンガルと根岸季衣さん、なるほどこういう家庭の息子か~、とか、恩師ということになる岸部一徳さんの軽妙さとか、いたよねこういう先生、こういう先生に出会って人は成長するんだよな~、いまはどうなんだろう?

香川県観音寺市の海辺の町がノスタルジーたっぷりに描かれている。
でも映画はノスタルジーが主ではない、音楽への情熱と共に描かれる友情や初恋、そして大きな時間を割いているわけではないがさらりと描かれる人生の選択。いつかは別々の道を歩む彼らの友情をセンチメンタルにならず爽やかに描き切っています。

4人の少年たちの描きわけもそれぞれか個性豊かで、主演の少年はやはり大林映画の主演というところありです。

で、目的の浅野忠信・・・まっとうな演技は主演の少年、コメディパートはお寺の跡取り息子とドラムスの不器用な三枚目の少年、彼らの間にあってさほど個性を見せるわけでもないし演技が上手いわけでもない、でも魅力的なんですね~唇の端でちょっと笑うはにかんだような線の細さが個性を見せなくても十分個性的、今の浅野さんがあるのがわかります。

突然挿入される空想シーン、カメラに向かってしゃべるシーンとかが『花筐』とか今公開中の”遺作”などとの映画的展開とのつながりを感じさせテンションが上がりました。

夏休みにアルバイトして手に入れたギターやドラムス、その時のうれしさ、そのうれしさを共有できるだけでも幸せな気分になる映画です。