映画『マイ・ブックショップ』のレビューを昨日UPしました、そこで、その内容の中の重要な部分。
本を通じて人はお互いにかけがえのない存在になっていく・・・それがこの映画の一つの重要なテーマだったと思います。
この映画の場合、それはレイ・ブラッドベリの本、特に「タンポポのお酒」です。
私の持っているのは、晶文社”文学のおくりものシリーズの中の一冊。
青少年向けの文学全集として出版されました。
これを読んだのは30年以上前なので、ほとんど印象しか憶えていないのですが・・・
解説から
それでは、たんぽぽのお酒の栓を開けたとき、そこに現出するものはいったい何なのでしょうか?夏の感動、生命の歓喜、永遠の生の救い・・・・しかし、これを一方的に謳歌するというのはブラッドベリの行わないところです。
これらは、夏のさなかに忍び寄る秋、死の誘惑、孤立して暗闇に呑み込まれる生に対置されていること、それに打ち克ってはじめて意味を持たされていることにわたしたちは気づくはずです。わたしたちは死と虚無につねに脅かされている存在です。孤立してその恐怖に負けるとき、わたしたちはどうなるのか?反対に、死と孤独から救われるにはどうすればよいのか?
ファンタジーの織りなす個々のエピソードと解釈は、それぞれにおまかせすることにしましょう。
ともあれ、この作品を読みおえたとき、ひと夏の経験を作者とともに過ごしたという気持ちにあなたがなれば、作者としてはそれだけで充分に目的を達したことになると言えましょう。
やがて秋の訪れをあなたが実感したとき、そのときこそ、たんぽぽのお酒がまた必要なのだと、作者は最後に言いたいのかもしれません。
部分抜粋 解説、北山克彦 1971年5月
映画『マイ・ブックショップ』で伝えたかったこと、それはこの本の内容と重なって見えます。
本というものへ、そしてブラッドベリへの深い愛情と尊敬の念でもって作られた映画だと思います。