「ある子供」「少年と自転車」などで知られるベルギーの名匠ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ兄弟が、母子支援施設で暮らす5人の若き母親たちを描いた群像劇。
若くして妊娠した女性たちを支援する施設で共同生活を送る、ジェシカ、ペルラ、アリアンヌ、ジュリー、ナイマの5人の少女。頼る人を持たず、貧困や暴力などさまざまな問題を抱える彼女たちは、戸惑い、悩み、目指すべき家族像を見いだせないまま母親になる。押し寄せる孤独感に飲み込まれそうになりながらも「愛する」ことを望む少女たちは、時に誰かに寄り添われ、それぞれが歩むべき道を選びとっていく。
「CLOSE クロース」のルーカス・ドン監督が共同プロデューサーに名を連ねた。2025年・第78回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品され、脚本賞とエキュメニカル審査員賞を受賞。
2025年製作/104分/G/ベルギー・フランス合作
原題または英題:Jeunes mères 映画.comより転載

ダルデンヌ兄弟の作品、近年はほぼ観ています、ほぼと言っても3年に1作という感じなので多くはないですが。
ドキュメンタリー映画ではありませんがドキュメンタリータッチと言いますか、ドラマなのに作り物的ではない、リアリズムがある。
カメラが登場人物の表情や動作を追い続け、気が付くと観客も登場人物に寄り添っているという感じ。
本作は群像劇で、5人の若い母親を描いている。支援施設で共同生活を送り出産、子育て、もちろん幸せではない訳ありです。
母に愛されなかった、薬に逃げた、男に逃げた、愛がほしかった。
愛されるということがわからない、愛することに自信が持てない。

執拗に付きまとう母は男に去られ、自分に依存しようとしているだけという悲しい現実、赤ちゃんの愛らしい笑顔、最良だがつらい決断を選ぶ。

愛を知らない、愛されたことはない、見たこともない母を探し当て会いに行く。
「なぜ捨てたの?」、母に愛はない、でもわずかに心が動いたのがわかる、それだけでも救われる。
観客は同情するわけでもないし批判するわけでもない、ただ、見入ってしまうのです、そして時々感情があふれ出す。
5人それぞれの置かれた状況は様々だ、それぞれの状況を丁寧に描き、それぞれの心情の変化もとても説得力がある。
それぞれが苦難から新しい一歩を歩みだす、そこには自分は一人ぼっちじゃないという力強さが加わっている。
赤ちゃんの父親と結婚して新たな人生を歩みだす一人、「赤ちゃんにはこの曲がいいわね」と、学生時代の恩師がピアノでトルコ行進曲を弾いてくれた、瑞々しく多幸感に満ち溢れる、彼らの前途には幸せがあると。
私は映画を観て泣くことはあまりないのだけれど、このやさしさには泣けてしまった。
本年度ベストの一作。