「そこのみにて光輝く」「きみはいい子」の監督・呉美保と脚本家・高田亮が3度目のタッグを組み、現代を生きる子どもたちの日常を生き生きと描いた人間ドラマ。
10歳の小学4年生・上田唯士は両親と3人家族で、おなかが空いたらごはんを食べる、ごくふつうの男の子。最近は、同じクラスの三宅心愛のことが気になっている。環境問題に高い意識を持ち、大人にも物怖じせず声をあげる心愛に近づこうと奮闘する唯士だったが、彼女はクラスの問題児・橋本陽斗にひかれている様子。そんな3人が心愛の提案で始めた“環境活動”は、次第に親たちも巻き込む大騒動へと発展していく。
「LOVE LIFE」「ちひろさん」などに出演する嶋田鉄太が主人公・唯士、本格的な演技は本作が初となる瑠璃が心愛、ドラマ「3000万」の味元耀大が陽斗を演じた。クラスメイト役にはオーディションで選ばれた子どもたちを起用し、ワークショップを通して共通の時を過ごしながら、呉監督とともにそれぞれのキャラクターをつくりあげた。脇を固める大人のキャストとして、唯士の母・恵子役で蒼井優、担任教師・浅井役で風間俊介、心愛の母・冬役で瀧内公美が出演。
2025年製作/96分/G/日本 映画.comより転載
呉美保監督と言えば2015年の『きみはいい子』です、以前の自分のレビューを読むと絶賛していました、とはいえ10年も過ぎているので忘れているところも多いですが、高良健吾さんの新米教師の成長が印象に残っている・・・かな。
本作はより以上に子供に焦点を絞った映画だと思いました。
タイトル通り”普通のこども”です、過剰な演出、子供らしさというのではなく、文字通り”普通”です、これは難しいでしょうね~、リアリズムなナチュラル…なんだかわかりませんがそんな感じ。
少年唯士と母(蒼井優)、子供の成長に心を砕いているが過保護とか過干渉ではない、普通かな、普通の家族の普通の子供。
この少年が映画の出来を決めているか?良いのです、癒し系、天然にも見えるが、内に秘めた10歳という成長過程にある子供のリアルに、ああ、そうなのか、あるあるかな?と身につまされるところあり、またその表情にニマニマと笑わせられるところあり。
三人のなかよし、生き生きとした疾走感がよし。
小学校4年生という年齢は女子のほうが大人びてしっかり者、男子はまだまだガキンチョというイメージがあり、映画でもそう見えるけれど、実は案外そうでもないと思うところあり。
問題が起きるのは授業での作文、ここで担任教師の、教師としての未熟さが見え隠れする、問題があるというほどではないが、力量不足というか。
無神経な言葉で生徒を傷つけても自覚がないとか、問題点が分かってもスルーして逃げているとか、それが後々問題になってくる。
「地球温暖化はおとなのせいだ」という心愛の作文をきっかけに物語は展開する。
心愛の気を惹きたいために環境問題に関心がある振りをする唯士、一見かっこいい
陽斗が気になる心愛、見た目より子供な陽斗は悪乗り気味に、三人で”活動”を始めるが、そこは子供で、やったことの結果を近視眼的にしか想像できない、結果手に負えない事態となってしまう、ありえない展開だが、そのありえなさを納得させてしまう勢いと魅力のある映画だ、どう収束をつけるのかはわからないが、最終盤、それぞれの親が学校に呼び出され、校長、担任を交えての事件の検証の場となる。
誰が悪いのか、というものではないが、このシーンはかなり面白かった。
いちばんのしっかり者に見えた心愛は自分の考えしか見えない(大人だったら原理主義者といえるのか)。
いちばん幼く見えた唯士が意外や大人な面があり、自分を客観的に見ていた。
そして陽斗は論外に子供だった。
彼らそれぞれの母は、ああ、こういう環境で育てたんだな、というところあり。
瀧内公美が心愛の母、若いころは突っ張っていたんだろうなという過去が見える強烈なキャラクター、彼女の言うのは正論なんですね~、うっかり頷いてしまうところもあるのですが、この親有りてというところあり。
さてさて事件はどういう結末に、というところは語られていないし、語る映画に作っていないところがとても良いのです、やりっ放し・・・・邦画には少ない作り。
映画は出色の出来だと思います。
追記
オーディションで選ばれたという子供たち、演技ではないような演技というか、自然体を引き出している、特に駄菓子屋での唯士との会話シーン、何と言ったらよいのか唯士が好きなんだろうけれど、けっこうあっけらかんとしていて、この女子ってやるね~と、座布団三枚!