当日、東京の空は晴れ。
確か予想では、曇りだったはずだけど。
そういや、私は所謂「晴れ女」だったっけ。
四大陸選手権の時、会場付近では、あちこちのテレビ局が、まおちゃんファンばかり、カメラに映していた。
マスコミの、真央ちゃん中心の報道、何とかならないものかな。
常々思う。
もうちょっと、選手を平等に放送して欲しい。
これじゃ、努力して、今や人気ではなく、実力でトップ集団に上り詰めて来た、あっこちゃんが、余りに悲しい。
バンクーバー以来、飛躍の活躍を続ける彼女を、もう少しきちんと取り上げる気になれないのか。
実力を持った選手が出て来ても、人気の高い選手だけを報道する、理解不能なマスコミ。
今度は、一発かましてやろうと思って、取材に来てるカメラの前で、思い切り、あっこちゃんのバナータオルを振って、世間に少しでも、あこちゃんをマスコミに代わってアピールしようと思い、さりとて、嘘をついて仕事を休んで来た身では、間違っても顔を撮られる訳にはいかない。
なので、帽子にサングラスにマスクと言った、必殺、変装三道具をわざわざ買って、バッグに入れて持って行ったら・・。
代々木第一競技場の前、マスコミ一人もいないでやんの。
出鼻をくじかれた格好で、大勢の人でにぎわう、会場の中に入って行った。
私の席は、北側スタンドの、キス&クライに近い、H列の一番端。
応援席も見れるし、割り合いいい席だった。
と、思ったら。
後ろにとんでもない爆弾娘が控えておった。
友達二人で来ているらしい。
もう一人の子は、声も普通だし、控え目なのだが、私の真後ろの娘が、飛び蹴りかましたいほど、クソうるさい。
何しろ、声が半端なくデカイ。
学校の教室で、一番後ろの席から、教壇の、先生に向かって、
「せんせー、黒板の文字、よく見えないんですけどー。」
と、言うくらいの声で、話しまくる。
スケートの生観戦は、今回が初めてらしい。
加えてこのお嬢さん。
声が悲惨なまでに可愛くない。
どす声に、ハスキーボイスが、最悪の割り合いでプラスされたと言う様な。
そんでもって、何が一番問題かと言うと、話し方だ。
女の子らしくない、ふてぶてしさの塊。
正に話す凶器。
20代に、少し手が届くかどうか、と言う年頃なのだが、スケートには詳しいのか、付け焼刃の知識なのか、やたらと、選手についてえらそーに、語るんだな。これが。
それがうるさくてうるさくて、既にペアの試合が始まってるのに、上記のデカイ声で、一人ぺちゃくちゃ。
私は対処を考えた。
1・警備員に注意してもらう。
2・振り向きざまに、胃にボディーブローを一発入れて、黙らせる。
3・肘鉄で、脳天割り。
嗚呼。
40年も生きて来て、何でこんな事態を予想する事が出来なかったのだ。
どうして、私はこういう事を予想して、予め「広辞苑」を持って来る事が出来なかったのだろう。
あれを、後ろの娘さんの頭の上に落としたら、うまくすれば二時間は、ぐっすり眠っていてくれたはずなのに。
このお嬢さんの話は、後ほど続けるとして、当日の代々木の会場は、四大陸の大坂の会場と、随分空気が違った。
出場国の、選手団は、面白いし、場内を度々、爆笑させた。
でも、選手が滑っている時、大坂の会場で感じた、あの、暖かい、家庭的な空気がない。
余りにもシーンと静まり返って、会場全体が審査員の様な、冷たい空気。
勿論、選手がジャンプやスピンを決めたり、或いは失敗すると、拍手で盛り上がるのだが、どうにもこうにも、空気が冷たい。
観客が、緊張してるのかな、と、思った。
それにしても、生の会場って、ライトで凄く明るいし、観客同士が、対面と、真っ直ぐ向き合う形になるから、どうにも居心地が悪い。
観客同士が互いに丸見えなのだ。
映画やライブや、歌舞伎やミュージカルやお芝居等、相撲を除けば大抵の会場は、舞台に向かって観客は並ぶから、観客同士が向かい合う事ってないし、慣れていない。
まるで自分達の姿が、鏡に映されてるみたいで、落ち着かない。
こういう、張り詰めた空気の中で、明るい照明の下では尚更だ。
中国のペアが滑り終えた時だったか、キス&クライで、中国選手の応援団(選手だけど)が、おどけて最後に、みんなでジャッキー・チェンみたいな、カンフーのポーズを取った。
私はそれを見て、「カンフー!」と、声を上げた。
会場は、結構ウケていたが、そういう声が、他に上がらない。
やりにくいなー、と、正直思った。
スマートなんだけど、上手にイベントを楽しめるのが、苦手な人が集まったみたい。
各国の応援団は、思い切り(中国を除いて)楽しみまくっているのに。
中でも凄いのが、うーん、どっちからあげるか。
フランスから行こう。
着ぐるみで全員が応援
「ピカチュウ」の着ぐるみを着た選手が、キスクラで、寝ているお耳を立てて、カメラの前を横切って、観客を笑わせる。
まあまあ。
見ているだけで、可愛い集団でした。
で、中でも凄かったのが、アメリカ。![]()
自国の選手が登場する度、ある有名なロックの・・・あー、ごめんなさい、忘れたっ![]()
サビの部分を、手拍子で打って、会場全体を引きこんでくれるのだね。
その上、アメリカ選手チームが、ウェーブを始めて、
ワハハ、すぐ隣の、南側スタンドの人たちが、アメリカチームに促されて、全員ウェーブを始めた![]()
しかし、やっぱりフィギュアだから、野球みたいに、立ってウェーブにはならなかったけど、私の正面、南側スタンドから、みんな座ったまま、反時計周りにウェーブを続けて、それが各国の選手チームの席まで戻って、そこで選手達がウワーッと、盛り上がり、アメリカがそのままウェーブを続けたもんだから、
気の毒に、こんな事態には慣れていないであろうフィギュアファンは、どこで止めていいか分からず
、またしても会場半分ほどウェーブが続いてしまった所で、アメリカ選手がリンクへ出たから(ペアのね)、やっと、そこでウェーブが終わった![]()
![]()
いっやあ。
流石アメリカ人。
何で、日本人が、君らの国の選手の為に、会場全員でウェーブをやらんといかんのかね![]()
![]()
まさか、日本で、ここまでアメリカらしさを堪能させて頂けるとは、予想もしてませんでしたよ。
まあ、こういう所、アメリカ人の憎めない国民性なんだよなー。
と、言うよりアメリカ人のこういう所が好き。
ロシアもマラカス持ったり、「ブブー、ブブー」って、何かの楽器を吹き鳴らして、多いに盛り上がってました。
カナダと日本は、格好は普通かなって感じだったけど、カナダも凄く楽しんでたな。
ちょっと寂しいのが中国でした。
何か、中国だけ浮いちゃってる感じ。
周りに合わせ切れないで。
最初、みんなでカンフー決めたんだから、あの調子で、アクション頑張って、はしゃいじゃえば良かったのに、静かに以降は、パンダの帽子を被って、キスクラに集ってました![]()
![]()
それで、まずペアが終わって、勿論トイレへ行くと、既に長蛇の列。
「最後尾、二時間待ち」なんて書いた看板持った、係員いないだろうな、と思いつつ。
お茶を買うにも、自販機にも並ぶ有様。
この間に私は、用意していた、あっこちゃんの誕生日プレゼントを、会場のプレゼント預かり場所へ、預けて来た。
ここで、ちょっと余談。
前の日記で書いた通り、可愛い包装紙&額を包めるサイズの包装紙がなかったので、私は東京に着いてから、雑貨屋さんを探して周り、ようやく見つけたので、すぐ店員さんを捉まえて、
「包装紙探してるんですけど、この包装紙小さくて。」と、裏側が八割剥き出しの状態を見せて、
「これに合うサイズの、包装紙あります?」
って聞いたら、店員さん、私の持ってるそれを眺めて一言。
「・・・うちは、包装紙はあるんですけど、その、可愛いタイプのもので、お客様がお持ちの様な、お使い物の様な種類は置いてなくて・・・。」
いやー、思わずズッコける所でした。
「これは、誕生日プレゼントだから、かわいい包装紙が欲しいの!!使い物じゃねーの!!」
声にこそ出しませんでしたが、心の中で、魂の叫び、っつーのをやってしまった・・・。
気を確かにしてから、「いや、あの、可愛い包装紙ください・・・・」
ちょっと、消え入る様な、情けない声しか出て来なかった。
包装紙がある所に案内してもらって、あった、あった、プレゼント用のラッピング![]()
しかし、やっぱりサイズがない、と、店員さんに言われた![]()
で、同じものを二枚買って、包装するしかない、と言う事で、図々しいが、私がやると、ゴミになること約束された結末なので、お願いして、そこでやってもらう事にした(人生で最も正しい判断の一つだった)。
あっこちゃんの衣装に合った、綺麗な水色の包装紙があったので、それを選び、それにつけるリボンも、水色に映える、綺麗なブルーの華やかなリボンを買って、
後は、店員さんに、全て任す、と。
有り難い事に、綺麗にラッピングしてくれた上に、ドデカイ紙袋(しかしサイズピッタリ)まで
頂いて、その中にお菓子も入れて、会場で預けた。が。
「はいはい、鈴木選手ですね。」と、無造作に置かれた。
この前の時は、ちゃんと各選手用の袋があって、プレゼントはそこに入れてくれた。
私は自販機に並びながら、あれはきちんと、あっこちゃんに届くのか?
自問した。
不安なら、先手を打つが必死。
私はお茶をようやく買うと、すぐさまそこへ戻って、自分のプレゼントを返してもらい、紙袋の前後に、大きくボールペンで「明子ちゃんへ」と書いて返した。
これで、間違われる事はあるまい。
安心して、席へ戻り、さあ、女子のフリーが始まる、あっこちゃんのバナータオルを、もう出しておこう、とした時・・・・・。
先ほどおトイレに行った時、あっこちゃんのバナータオルを、汚したくなくてバッグから出して、あっこちゃんの、プレゼントの紙袋の中に入れておいたのを思い出した。
立ち上がって、悲しみの全力疾走。![]()
![]()
三度、プレゼント預かり所を訪れる私![]()
しっかりとバナータオルを取り戻し、再び席へと、自業自得の全力疾走。
女子のフリーが始まって、第一グループが終わり、とうとう、あっこちゃん達、第二グループの出番となった。
ここで、ちょっと私の真後ろにいた、娘さんに話を戻そう。
彼女はペアの間中、
「あー、転んじゃったー。」
「あー、オーバーターンだよ、あれ。」
「あっ、すごいうまーい!」
「ねー、リード姉弟っていつ出るのかな。」×5回
女子フリーが始まっても、友達に、いつリード姉弟が出るか、話しかける。
そう。
フリーが始まってからも、だ。
「リード姉弟なら、昨日出たじゃねーかおい!最初から、あそこの応援席にずっといるじゃねーか、いー加減気づけよ、今日はペア!アイスダンスは昨日っ!!」
と、言う私の心の怒りは爆発寸前。
フリーが始まったら、
「まおちゃんまだかなー、まおちゃーん、まおちゃーん。」
と、やたらに、更にうぜえ。
第一グループで、まおちゃん叫んで、まおちゃん出て来るかっ。
アホっ![]()
私は鬼と化し、その頭には、既に角が、5本は生えていた。
自制。
自制。
あっこちゃんが出て来たら、私もこのガキなみに、大声を張り上げるんだ。
人の事を言える立場じゃない。
我慢しろ。私。
そうして耐える、私の真後ろから、とうとうこんな言葉が響いて来た。
「あーあ、今日出るの、まおちゃんとカナちゃんだったらなー。明ちゃんじゃねー。」
「殺す。思うのは勝手だが、こういう所で口に出すんじゃねえ。命要らないと見た。このガキ上等。便所でシバクか。」
と、思ったが、耐えた。
しかし私の頭の角は、20本ほどに増えていて、針山の様になっていた。
まー、いい。
まー、いい。
あっこちゃんの演技終わってから、同じ言葉が言えるか楽しみにしてやろうじゃないの。
とは言え、フリーの間中も、この喋り声に悩まされるのかと思うと憂鬱が増した。
あっこちゃんの演技中、何か言われた日には、どうしよう私。
一体、どんな顔をしてるんだ、と思って、チラッと後ろを見てみた。
真後ろなので、見えにくい。
まさか、ガン見する訳にもいかないし。
チラ見で目に入ったのは、そのお嬢さんの、胸辺りからスカートと、その下の膝辺りだった。
自分が見たものが信じられず、しばらく考え込んでしまった。
上は、ピンク色の、トレーナーみたいな服。
フロント部分に、適当なデザインがあるだけの。
で、スカートが・・・目の錯覚か、豹柄の、プリーツスカートで、黒タイツ・・・・。
なまじチラ見をしてしまったが為に、このお嬢さんの、声に加えて、格好が、Wで私を激しく揺さぶる。
50代辺りで全身ピンクハウスのワンピを着て、街を歩く女性を見かけてしまった時の様に、「見たい、見たい、ちゃんと見たい。」
と言う誘惑がむくむくと出て、目の前のスケートに集中出来ず、心を決めて、私は後ろをそっと振り返った。
そして、相手の顔まで、しっかりと見てしまった。
向こうは、真ん前の人間が振り返って見てるのに、リンクに釘付けになっている。
ぽっちゃりした体。
トレーナーだと思ったのは、セーターだった。
そして、スカートは正しく豹柄で、セーターと全く合わない素材のレースの生地の様なプリーツ。
声とは裏腹に、可愛い、まだあどけない、ぽっちゃりしたそのお顔には、何と、べっこうらしき太い縁の眼鏡がかかっていた・・・。
そして、髪の毛は後ろに一本でまとめて結んでいる。
おお神よ。
私は白旗を上げます。
これは、おしゃべりを止めてもらえる相手ではありません。
あたしゃ、何しにスケートの会場まで来たんでしょうか。
このお嬢様の、大きなお声を聞く為なのでしょうか。
後で分かったが、履いていたのは、スニーカーだった・・・・。
続く・・・・・・。