【閲覧注意】 日本のイルカ漁を描いた問題作「ザ・コーヴ(the cove)」 | ま、いっか。のブログ

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閲覧注意

■”虐殺”か”食文化”か 


”仕事”が開始されると、男たちは棒の先端に変わった形の銛を付けた道具で、近くにいたイルカの頭を思い切り突き刺し始めた。

 

真っ赤に染まる入り江の海。

 

頭から血を吹き出しながら逃げ惑うイルカたち。

しかし、パニックになった百匹近いイルカたちは、網に囲まれていて「逃げ場」はない。

 

暴れ狂うイルカの上に、別のイルカが乘っかかって逃げようとする異常な光景の中でも、男たちは冷静だ。入り江に逃げ込んだイルカたちに、容赦ない一網打尽の凄まじい屠殺作業の光景が繰り広げられてゆく。

 

刺して刺して刺して、とにかく、刺しまくる。

 

捕鯨条約では動物たちの苦痛を和らげるため、急所となる脳への一刺しで即死させなければならないはずが、銛が思うようにあたっていない。銛が頭をそれて別の部位に当たる為、何度も突き刺されるイルカたち。体中から噴水のように血を出しながら、悲鳴に似た叫び声を上げる者。即死できずに全身痙攣してるも者、尾びれをバタつかせながら水中で息絶えて沈んでいく者。本当に地獄絵図だ。

 

まるで満員電車の中で、通り魔が見境なく周囲の人間に包丁を振り上げてるようだ。

何度も何度も刺されながらも、なかなか死なないため、さらに男たちに刺されるイルカ。

中にはお腹が膨れ、子供を身ごもっているだろうメスイルカもいたが、ここではそんなことなど関係ない。

問答無用に”処理”されるのだ。

 

いつもは可愛いはずのイルカの鳴き声が、この阿鼻叫喚の世界ではまるで別の生き物のような奇声となって、あまりにも悲しく、そして不気味にさえ聞こえてしまう。

 

入り江に追い込まれたほとんどのイルカがシメられた頃、入江の奥の隅で一頭の若いメスイルカが入江を囲う網の僅かな隙間をかいくぐって逃げようとしているのを外国人の撮影者が見つけた。

日本人の男たちは気づいていない。

 

でもイルカは、すでに体をかなり負傷してしまっているようだ。

多分、頭を刺されてしまったのだろう。血を吹きながら、まるで人間が溺れてるように沈んだり浮き上がったりしながら、必死に入り江から逃げだそうとしている。

ああもう、今にも力尽きそうだ。

 

(このイルカは駄目だ。直に息絶えるだろう)

私はそう思った。

「ピューイピューイ」

かすかに聞こえるような小さな泣き声で助けを求めるイルカに、思わず目を背けた。

 

だがそこへ、男たちの乗ったボートがゆっくり近づいて来た。

男はもっていた武器を取り出すと、慣れた様子でそのメスイルカの脳天にトドメを刺した。

 

男たちは事前に入り江に逃げ込んだイルカから綺麗なバンドウイルカだけを殺さずに選別していて、大型トラックで来ていた水族館の業者に引き渡しが終わり、その日の作業は終了した。

 

 

上映終了後、私の後ろに座っていた日焼けした色黒の小柄な男性が立ち上がり、

イルカが頭良いだって?嘘つくなよ。バカだぜ、あいつら!」って大声で館内で叫んでいました。

随分不釣り合いなスーツを着ていましたが、もしかしたらどこかな漁業組合の方かもしれません。

 

この映画は2010年に公開され、公開2週目に渋谷のミニシアター「シアターN渋谷」に観に行きました。

公開前から日本の捕鯨団体から反発が凄く、今後は他館上映はもちろん、DVD化もされないだろうと思ったからでした。

 

タイトルの”THE COVE”。

英語で「入り江」を指しますが、それでは少し不十分な気がする。定冠詞の"The"がつくので、「あの」とか「例の」といった意味合いを強め、「(噂になってるあの)入り江」「(悪名高い例の)入り江」みたいなニュアンスに近いと思う。入り江とはもちろん、追い込み漁でイルカを追い込む太地町にある、「(あの)入り江」のことです。

 

 

『THE COVE (ザ・コーヴ)』

2009年に公開されたアメリカ合衆国のドキュメンタリー映画。監督はルイ・シホヨスが手掛けた。和歌山県の太地町で行われているイルカ追い込み漁を描いている。コーヴ(cove)は入り江の意。PG-12指定。2009年のサンダンス映画祭で観客賞、2009年度第82回アカデミー賞長編ドキュメンタリー映画賞受賞作品(wikipediaより)。

 

  予告編

 

 

【映画概要】

 

■追い込み漁は、イルカショー用のバンドウイルカ捕獲が目的

まず驚いたのが、太地町における年間2万3千頭にも及ぶイルカ漁の目的が実は水族館やイルカショー用に高額取引できるバンドウイルカの捕獲が主であって、日本が世界へ向けショー用イルカの巨大供給源となっている、という話。追い込み漁はてっきりイルカを食するのが目的だと思っていたから。
(※映画ではショー用バンドウイルカは1頭あたり300万円で取引されてると言っていました)

 

◇◇見解◇◇

どこまで本当かわかりませんが、水族館の関係者らしき人がバンドウイルカを選別するシーンは存在していましたし、他国の水族館のサイトを見ると日本から来たイルカという表記も結構出ていますので個人的には、煙のないところには何とやらじゃないかなと思っています。

 

■明治時代以降、乱獲により漁場が1つに

かつて太地町の他にも、伊豆地方には田子、戸田、土井、安良里、富戸という追い込み漁の漁場があったが、明治以降、乱獲なのかイルカが激減していき、1990年代には富田と太地町を残すのみとなった。

それでも年間数万頭の継続しつづけ、富田では2000年初頭にはバンドウイルカ群が途絶。現在は漁を休止(再開を目指すも20年経った2020年現在もバンドウイルカ群が探知できず)。し、太地町を残すのみとなった。

 

■一網打尽の屠殺作業

序盤で書きましたが、高値で取引されるバンドウイルカ以外は、妊娠したイルカはもちろん、子供のイルカも見境なく、とにかく皆殺しです。映画ではこの点がかなり批判されていましたが、日本側は狩漁頭数制限は守っているとしてあくまで条約を遵守してる主張していました。

 

◇◇見解◇◇

個人的には、最初にバンドウイルカを選別する際に、合わせて選別できないのかと思います。

ただでさえイルカが減って漁場が減ってるはずなのに、妊娠したイルカや子供イルカまで殺すのはどうだろうと思います。

 

■長い時間苦痛を与える、銛による屠殺方法の問題

映画でイルカ漁が問題視されていた理由のひとつは、イルカを食べるという行為ではなく、その残虐性です。牛や豚がそうですが、処理の際は苦痛を和らげるために短時間でほぼ即死になる目指します。

これに対し、日本側は銛を改良し、イルカの急所となる頭を1発でつくので即死していて苦痛はないと主張。ですが、映画を見るとわかりますが、人間の何万倍も聴覚が優れてるイルカに長時間、高い金属音を海中で鳴らし続け、嫌がるイルカを入り江に追い込むまでの行為は、すでに十分すぎるほどの精神的なダメージを与えてるように見えます。また、銛で突く方法も実際には急所をかなり外しており、血を流して逃げ回るイルカたちが多かった。何度も刺されて「ピギィー!!!」と叫びながら逃げ回るイルカを見ていると、とても苦痛がないようには見えなかった。かなり長時間苦しみ悶えています。

 

◇◇見解◇◇

イルカの捕獲は賛成も反対もしないですが、この部分に関してはイルカ側がかなり苦しみながら死んでいる

ように見えるのは否めません。せめてもっと楽になる方法(電気ショックとかで気絶させてからとか)をさらに議論して考えていくべきだと思います。

 

■イルカの高濃度メチル水銀汚染問題

イルカには高濃度のメチル水銀が含まれており、厚生労働省の通達には

「鯨肉のうちイルカ(歯鯨類)の肉には特に高い濃度のメチル水銀が含まれるため、妊婦、幼児、近く妊娠を予定されている方は、イルカ肉の摂取を控えることをお勧めします。なお、イルカ肉が「ミンククジラ」「クジラ」等と不適正な表示をして販売されるケースもあるのでご注意ください。」と表記がある。

 

魚介類・鯨類の水銀についてのQ&A (jccu.coop)

 

マグロにも一定量含まれているそうですが、イルカの含有量はそれよりも多いらしい(たぶん食物連鎖の上にいるからですかね)。

 

■「クジラ肉」偽装問題

生物学上の分類として、イルカはクジラ科に分類されるのは有名な話です。ですが、1999年にJAS法が改正され、農林水産省の「魚介類の名称のガイドライン」に”種名”を記載する一般ルールが設定されました。

したがってイルカ肉をクジラ肉と表記することはJAS法上不適切であると言われます。ですが当然スーパーの食品売り場で出てくる「クジラ」肉はじつはイルカ肉だったりします。映画でも出てきました。

まあ当然ですが、「イルカ」ってかくよりは「クジラ」って書く方が、消費者からすれば抵抗感は下がりそうですからね。ふだん知らず知らずクジラと思って食べてたのが歯鯨=イルカの方だったなんて知ったらびっくりすると思います。

 

 

■反対派の隠し撮り、妨害行為について

本編は太地町の入り江におそらく不法侵入して隠し撮りしたような映像になってるため、違法性を含め製作者側に法律上の問題点がかなりあると思います。追い込み漁の網を破ってイルカを逃がす行為などは、器物損害ですし、業務妨害というか、明らかに違法で許される行為ではありません。あくまで個人的な話ですが、殺される動物を逃がしたくなる気持ちはわからないわけではないけど、反対派の妨害行為のやり方はよくないです。

 

 

【総評】

もし一般人が毒を混ぜたご飯を100匹の野良の犬猫に与えて殺したとしたら、どうなるか?

もちろん捕まりますよね。

でも実際には自治体主体で、年間50万頭の犬猫の毒殺が合法的に行われてる。

合法か違法かの線引きはどこにあるのか。

 

入り江に座礁したイルカを海水浴客が力を合わせて沖へ返す感動的なニュースがある一方、食用として許可をとれば、めった刺しにして皆殺しをしても問題はない。

倫理って一体何だろう。わからなくなってしまった。

 

食用であれば豚だろうが牛だろうが、必要以上に苦痛を与えて殺してもいいのだろうか。

 

ただ人間にとって害であるかどうか、必要であるかどうか。

それだけが動物たちの生死を分ける基準になってるんだろうか。

じゃあ、許可を取れれば庭に糞尿する猫を処分しても問題ないんだろうか?

いろいろとわからなくなってしまった。

 

 

イルカの食文化には反対はしないけど、倫理って一体なんだろうってもう一度考えるきっかけが出来た映画でした。ただ、屠殺方法に関しては、もっと考えていかなればならないと思います。

銛の形状を改良して苦痛を和らげる対策を取っていたり、日本川もかなり考えてるようですが、急所を外すんじゃ効果は低いと思いました。本当にそんな原始的な方法しかないんだろうか。

 

 

この記事についてもいろんな意見があると思いますが、まず映画を見てください。

食文化がどうだこうだ、とそういう話もないわけではないけど、それはほんの一部です。

もっと違った側面での問題提起が主体となってますから。

 

まず映画を見て欲しい。

(視聴方法は、レンタルか、購入しかできないです。ストリーム形式では視聴できないと思います)

 

 

今年も9月。

追い込み漁の季節がやってきた。

 

 

 

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