第18幕の8 | 百火繚乱

百火繚乱

特撮大好きです。変身する前も後も、変身した中の人も、声の人も好きです。
ゴーカイジャー、シンケンジャー、仮面ライダー中心かな。
シンケンジャーの小説、殿様で恋愛小説も書いてます。

「栞殿は榊の跡継ぎでした。それが、弟御がお生まれになった途端、それまでちやほやしていた者たちに突然そっぽを向かれたのです。たった十の子供のこと。心に受けた傷はどれほどだったか。だから栞殿は、相手に対して距離を置こうといたします。栞殿が唯一心を許すのはハナさんだけ。栞殿自身もお気付きになっているかどうか」
「栞が影武者にならなかったのは、榊を継ぐためか?」
丈瑠の質問に彦間はとても驚いた顔をする。まさか栞が話したのだろうか。
「殿?」
彦間の訝しげな表情に、丈瑠も眉をひそめる。
「違うのか?俺より栞の方が影武者に相応しいと思ったんだ。そうならなかったのは、歳のせいか、栞が女だったからだと思っていた」
彦間が感心したように微笑んだ。
「よくお気づきになりましたな。栞殿は必死に隠そうとしておりましたのに」
「栞も知ってるのか」
丈瑠が意外そうに呟く。栞は知らないと思っていた。
「前に、栞が火のモヂカラを使うのを見たと言っただろう。何故使えるのかはこの間ようやく分かったが。あいつが本気を出せば、多分俺を凌ぐ。母上の一番近くにいたのも栞だ。母上と栞が並ぶと、姫が二人いるようだった。それで気付いたんだ。栞は母上の影のようだと。本当に影武者になるはずだったのは、栞だったのではないかと」
 榊は、「お前をあそこから遠ざけようとしていた」と言った。あの時は、丈瑠の許嫁のことだと思ったが、あれは多分影武者のことだ。 
 彦間が観念して全てを話す。
「影武者の計画が持ち上がった時、生まれたばかりの栞殿が次の当主の影武者になる事は決まっておりました。栞殿の母上は志葉の血を引いております。父親も立派な侍でした。ですから、栞殿が火のモヂカラが使える事を見越して。まあ、本当に使えるとは驚きましたが。しかし、その後すぐご両親が亡くなり、榊様には当時子供はなく。榊は、志葉にとっても大切な存在でしたので、当時の殿は、唯一の榊の跡継ぎとなる栞殿を影武者にする事を諦め、そして、当主は男の方がいいと独自に影武者の候補を探していた家臣が見付けてきた殿が影武者になられたのです」
丈瑠が納得したように頷く。
「殿はこの事を知って、栞殿を恨んだりはしなかったのですか?影武者になる事は、殿にとって、とても重い荷物だったはず」
丈瑠が小さく笑った。
「栞に責任はないだろう。それに、逆じゃなくてよかった。栞は戦う事も嘘を付く事も出来ない。あれは、子供の頃傷付いたからじゃなく、元々の栞の性質だ。きっと俺よりずっと苦しんだ」
彦間も頷く。栞に能力は十分ある。しかし、丈瑠の言うとおり、栞は戦うにはやさしすぎた。
「栞が自分を犠牲にしてまで、俺を助けようとしたのは、そのせいか?」
丈瑠が一番の懸念を口にした。彦間は答を知っていたが、敢えて教えない。
「ご自分でお確かめに」
丈瑠が彦間を睨むと黙って立ち上がる。
「殿」
「早く休め」
彦間が呼び止めたが、丈瑠はそのまま部屋を出て行った。




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