第18幕の4 | 百火繚乱

百火繚乱

特撮大好きです。変身する前も後も、変身した中の人も、声の人も好きです。
ゴーカイジャー、シンケンジャー、仮面ライダー中心かな。
シンケンジャーの小説、殿様で恋愛小説も書いてます。

「ほう、大分楽になりました」
彦間は、栞と向かい合って座った。
「栞殿、では、栞殿は自分の気持ちを殿に話されましたか?」
栞が曖昧に首を傾げる。
「こうなる前は、言った事があります。でも今は、丈瑠様の負担になりそうで言えません」
言いながら目を伏せる。
「自信をお持ちください。栞殿は自分の事なので、よく分からないのかもしれませんが、私から見ると丸分かりです。ご自分の気持ちをきちんと話して、殿にもお聞きください」
「でも、私は、まだ丈瑠様に話していない事があります」
栞が彦間をじっと見つめる。影武者の事だ。
「そのことは前にも申しましたとおり、栞殿のせいではございませぬ。それに、殿がそんな小さな事を気にするとお思いですか?」
「小さくなどありません。丈瑠様の人生を変えてしまったのです」
栞が少し強く言って、彦間はため息をついた。
「ではもし、反対のお立場だったとしたらいかがですか?殿の代わりに栞殿が影武者になっていたとしたら、栞殿は殿を責めますか?」
栞がすぐに首を振る。
「殿も同じです」
「同じではありません」
栞が遮る。
「私は影武者にならなくても、ここへ来る運命でした。でも、丈瑠様は違います。こことは全く関係のない、別の世界を生きる事ができたはずです」
彦間はしばらく考えるように黙ってから、言い聞かせる様に口を開く。
「どんなに栞殿に責任はないと申しましても、栞殿がそのように気にされるのでしたら、殿に話してしまわれてはいかがです」
栞が驚いて、彦間をじっと見つめる。
「私は、殿をよく知っております。殿も私と同じ事を仰るでしょう。そんな事は気にしないと」
彦間が自信を持って頷く。栞は、両手をぎゅっと握りしめて唇を噛む。
 しばらく沈黙が続いて、栞が顔を上げたが、その顔は曇ったままだ。
「戻ります。また腰が痛い時にはいつでも言ってください。私でよければお揉みします」
答えの出ない栞に、彦間は小さくため息をつき、栞はお辞儀をしてから、彦間の部屋を出て行った。

 座敷に戻ると、ちょうど丈瑠も奥から出てきた。
「ジイの所に行っていたのか?」
訊かれて栞が頷く。
「腰がお辛そうだったから。湿布を貼って、少し揉んでみました。少しは楽になるといいけど」
「栞がか?」
素直に頷くと、丈瑠が眉間に皺を寄せる。
 栞は丈瑠の表情に首を傾げてから彦間の言葉を思い出す。ヤキモチだと嬉しいと思いながら丈瑠を見つめていると、丈瑠が栞に近付いて、不意に抱きしめられて、栞が身を竦める。
「ジイでも面白くないな」
丈瑠の声が耳元で聞こえて、本当にヤキモチを妬いてくれた事を知る。
 栞は丈瑠に体を預けて、嬉しくてつい顔がほころんだ。
「丈瑠様も、どこか痛めたら、ちゃんと看病してあげる」
背中に手を回しながら言われて、丈瑠が小さく笑う。
「丈瑠様も彦間さんのお部屋に行くところだったのでは?」
栞がしばらく抱きしめられてから、思い出した様に聞く。
「気が変わった」
「だめ。心配してたくせに」
栞が体を離して丈瑠を見上げて、丈瑠は栞の頭を軽く撫でると、素直に彦間の部屋の方へ出て行った。



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