第18幕の2 | 百火繚乱

百火繚乱

特撮大好きです。変身する前も後も、変身した中の人も、声の人も好きです。
ゴーカイジャー、シンケンジャー、仮面ライダー中心かな。
シンケンジャーの小説、殿様で恋愛小説も書いてます。

 栞が小さくため息をつく。
「私がここへ来た時、黒子の仕事をするのを許してくださったのは、それが丈瑠様の許嫁として役に立つと思われたからではないのですか?」
彦間が閉口する。確かに初めは、栞が丈瑠と結婚するなら、屋敷の裏方も知っておいた方がいいと思って黒子の仕事を許可した。
「それならこのままではだめですか?今はまだ、学校とも両立できます。その内、勉強や会社が忙しくなれば、屋敷の事は出来なくなります。今だけかもしれませんから」
栞が訴える様な目で言うが、彦間も負けてはいない。
「しかし、栞殿が黒子の仕事をしたいと申し出たのは、ご自分の計画に都合がよかったからでございましょう。もう、その必要もなくなりました」
栞が少し目を見開いた。丹波なら、この辺で折れてくれるが、彦間はそうはいかない様だ。
「姫にお聞きになったのですか?私は、姫が言う程計算高くはありません」
確かに初めは、動きやすくするため黒子の仕事をすると申し出た。しかし、今はそうではない。
 それには、彦間も頷いた。確かに、栞が屋敷へ来たのも、黒子の仕事をしていたのも計算だろう。ずっと敬語を使ったのも、和服でいたのも。
 でも、丈瑠に関してだけは、栞は計算していなかった。それは、栞にとっても計算外だったのかもしれない。丈瑠もそれに気付いていたから、栞を屋敷に留めたのだろう。
「まあ確かに、殿に対する栞殿の態度は、計算しているとはとても思えません」
彦間にでも栞の気持ちはすぐに分かった。栞が少し赤くなって俯く。
「では、無理をなさらず、忙しくなったら必ず仰ってください」
彦間が折れて、栞がにっこりと笑った。正論の理詰めと笑顔で勝負する栞に敵うはずもない。あの丹波でさえ、栞には負けていた。
「では、横になってください」
「しかし」
彦間の反論は聞かず、にっこり笑ったまま、栞が手を添えて立ち上がるのを手伝い、彦間は布団にうつ伏せになった。
「全く、栞殿には敵いません」
彦間が観念した様に言う。
「湿布を持ってきました。切れていると言っておりましたから」
栞が持ってきた湿布を見せた。
「私が貼ってもよろしいですか?」
「いやそこまでは。黒子にやらせますので」
「黒子さんの手を煩わせなくても、私がすぐできますので」
嫌がりながらも、腰が痛くて抵抗できない彦間の着物を脱がせ、湿布を貼り、また着物を戻して腰をさする。
「栞殿、もう本当に」
「上手くありませんか?やった事はありませんが、腰痛のマッサージです。効かないかもしれませんが」
料理と同じく、実践を伴わない栞の知識だ。
 すっかり栞のペースに乗せられてしまった彦間が諦めた様に息をつく。
「いや、とても気持ちがいいです。しかし、栞殿にこのような事をして頂いては、殿に叱られます」
栞が首を傾げる。
「何故丈瑠様が?」
「殿は案外ヤキモチ焼きですので」
彦間が言って、栞がため息をついた。




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