第9幕の2 | 百火繚乱

百火繚乱

特撮大好きです。変身する前も後も、変身した中の人も、声の人も好きです。
ゴーカイジャー、シンケンジャー、仮面ライダー中心かな。
シンケンジャーの小説、殿様で恋愛小説も書いてます。

「で、流ノ介、本当の用事は何だ。歌舞伎の宣伝だけに来た訳ではなかろう」
彦間が座敷に戻って流ノ介に向き直る。丈瑠も何か勘付いているようだし、この際聞いて貰うことにする。
 流ノ介が辺りを見回す。
「大丈夫だ、人払いはした」
「はあ、実は、」
流ノ介が言いにくそうに言葉を切る。
「栞殿のお父上のことか」
彦間が言いにくそうな流ノ介に代わって聞く。丈瑠が目だけで彦間を見る。
「ご存じだったのですか?」
流ノ介が意外そうに彦間を見る。
「何となくだがな。流ノ介、何か知っておるのか?」
「はあ、私の父が、先日知り合いの家臣の方から聞いたところによりますと、何でも、殿を志葉家十九代目当主とは認めぬ一派が出来ているそうで、その先導に立っているのが、榊雄一郎様だと」
榊雄一郎。栞の養父、筆頭家老である。
「まさか、榊様のご息女が許嫁としてこちらへ参っているとはつゆ知らず」
「しかし、認めないと言っても、今更どうするつもりだ」
「はあ、そこなのでございます。秋にある家老会議で、その議題を持ち出す様な事を。何か、殿を当主から降ろす確実な手段を用意している様で。姫は反対しているようですが、何しろ榊様とは力の差が」
榊は、家老とは言え志葉家の懐を握っているため、影響力はかなりあった。
「殿、栞さんをここへ置いておくのは危険なのではありませんか?何か、向こうの魂胆があるはずです」
丈瑠は黙って聞いていたが、流ノ介にはっきりと言う。
「いや、栞は大丈夫だ」
「殿っ」
流ノ介が食い下がる。
「栞は大丈夫だ。ここへ置いておく」
「殿」
流ノ介が黙る。丈瑠にこれ以上言っても聞き入れないことは、経験から分かっている。
「流ノ介、これからもその件について探りを入れてくれぬか。どうも、ここは警戒されていて情報が入ってこぬ。栞殿は大丈夫だと思うが、何かをご存じなのも確かだ」
丈瑠も彦間もなぜ栞をこんなに信用するのか分からなかったが、流ノ介は一応頷く。
 流ノ介に席を外させて、丈瑠は彦間に向き直った。
「ジイが隠してたのはこれか?」
「何の事やら」
白を切る彦間を、丈瑠が睨む。
「隠していた事は知っている。ジイは知っていたんだろう」
「はあ、何となくですが」
諦めて白状する。
「俺は、ドウコクを倒すために当主になっただけだ。別になりたかった訳ではない。返せと言うならいつでも返す」
「殿、またそのような」
彦間が丈瑠をたしなめる。
「それで、栞はどう関係している」
「そこがジイにも不思議で。榊様が、殿が当主になられた事に反対されているのならば、栞殿との結婚にも反対するはず。榊様は、初めから栞殿を殿の許嫁にする事を承諾してはおりませんでした」
「栞は父親の事を」
「多分ご存じかと」
栞は志葉家の内情に詳しかった。栞が知っている事は間違いない。
「栞が屋敷に来た事に関係あるのか?」
「時期的に見て、そうでしょうな」
彦間もそこまでは把握していない。
「母上の所の黒子も何か関係があるのか?」
丈瑠に隠し事は難しい。彦間は諦めて、知っている事を話す事にする。
「姫が、話し合いで何とかすると。あの黒子は栞殿の監視です。姫も栞殿は大丈夫だと言っておいででしたが、父親から何か接触があるかもしれぬと」
話を聞いて、丈瑠が考えるような顔をする。
「監視か」
「しかし、流ノ介の耳にまではいるとは、かなり広まっている様子。ここだけに伝わってこぬのは」
丈瑠も頷く。
「秋の家老会議か」
呟いて、何かに気付いたように顔を上げる。
「栞がここにいるのも秋までか」
彦間が頷く。
「ジイが考えたのは、栞殿は父親を止めるため、ここへ来たのではないかと。殿を当主から降ろそうとしても、娘が屋敷へいればそれも出来ない。まあ人質のようなものです。栞殿はその役を自ら買って出たのかと。しかし、それもはっきりせず」
丈瑠が小さく頷く。
「しかし殿、知らぬ間に随分と栞殿にご執心のご様子。あれだけ自信を持って栞殿を信頼するとは」
にやりと笑う彦間を、丈瑠が睨んだ。
「別に、俺は」
気まずくなるとすぐに顔を背ける丈瑠を彦間は優しく見つめる。
 栞は父親の思惑が何にせよ、丈瑠を裏切るような事はしないとは思う。せっかく上手くいきそうなのに、何か横槍が入りそうな気配だった。




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