山田風太郎『警視庁草紙』を読んでたら、

 それがさきごろの赤坂食い違い事変の手柄で突如抜擢されたものじゃから、今やウドンゲの花咲く時が来たとばかり武者ぶるいしておる。

というセリフがあった。

「ウドンゲ」を漢字で書けば「優曇華 (憂曇華)」だ。

「優曇華」とは、いかなるものなのか?

私だって、名前だけは知っている。ただし、具体的なことはさっぱりだ。

そこで Wikipedia [うどんげ] を見たら、驚くべし、

 実在の植物を示す場合、伝説上の植物を指す場合、昆虫の卵を指す場合とがある。

とある。

「実在の植物」としてはどこかで読んだような気もするが、「伝説上の植物」とか、まして「昆虫の卵」のことなど、全く知らなかった。

そもそもは仏教の経典に由来し、「3000年に一度花が咲く」とされているとのこと (ibid.)。

つまり、極めて珍しいこと、めったにないことを表しているわけだ。

引用したのは、幕末期に新選組の隊士だった藤田巡査が油戸巡査に話している場面から。

話を聞いている油戸巡査も、かつては仙台藩士だったから、どちらも佐幕派だった人間同士だ。

それが新政府の首都警察、つまり警視庁の巡査となっているのである。

「武者ぶるいして」いると評された松岡警部とて、かつては佐賀つまり「肥前藩」の藩士だったが、「赤坂の食い違いの変」における実行予定犯の1人を事前逮捕した功績が認められたのだ。

「喰違の変」は岩倉具視暗殺未遂事件のことで、フィクションではない。襲撃者は元土佐藩士たちであった。

作中でも触れられているが、その後には佐賀の乱が発生する。

ちなみに「喰い違い」という変な地名は、「江戸城外郭城門のひとつ」のあった場所 (→ Wikipedia [喰違門])。