あんたがいらないならば、私がもらってあげる。

ずっとこの男がほしくて、焦がれて、人生を焼き尽くして自らの裸足のあしの裏を火傷してもここまで追いかけてきたの。


どんな男でもいい。

この男が、どんな人間でもいい。


あんたが捨てるなら、私があと拾ってあげる。






この女のこの狂気のような情熱はどこから生まれるのだろう。

途切れたり、消えてなくなったり、疲れて休んだりはしないのだろうか、

答えは女の目をみればわかる。

そんな断絶の瞬間は、一秒も一瞬もない。



国境を越えて

はるか過去から今この国の現在まで

ただ一人の男を信じ続けたこの執着に

なまぬるい恋にうつつを抜かしてかわいいやきもちなどと一芝居打って眠ってる

そんな彼女には

この女の業の前では霧のように消滅してしまう。



細いしなやかな

肉の腕で

さらわれて

男を連れていかれても

いまなら夢であったと

恋に恋していただけと諦めてしまえる程度の甘い想い。


嫉妬に血を流し

たとえ生まれ変わっても

絶対に誰にも渡さない。




そんな女の命のありかを、私は見た。


土砂降りの、厚い雲の上空は新月で

そこに雲があろうが

なかろうが

どのみち、この夜は闇。

















作詩 花房灯子

眠れぬ初秋の暑い夜に。