妊娠中は様々な原因で尿のうっ滞が
起こり、水腎症(腎臓内の腎盂と言う
ところに尿が溜まって拡張すること)を
起こします。
最も頻度の高い原因は人体の解剖学的
特徴で、腎臓と膀胱を繋ぐ尿管が妊娠に
より肥大した子宮により圧迫されて起こる
ものです。
この妊娠子宮の圧迫による水腎症は
圧倒的に右側が多く、好発週数は20週
前後からです。
また子宮の重量が更に重くなると子宮が
下方へ移動するので32週ごろから軽快
してくるという特徴もあります。
また、妊娠によるホルモンバランスの変化が
尿管の蠕動運動を低下させ尿の膀胱への
移動が遅くなることも原因と言われています。
更に付記すると、妊娠中は非妊時に比べ
2倍以上の尿路結石のリスクがあり、
結石による水腎症もたまに見かける病態
です。
(*ちなみに妊娠中に頻用される緩下剤の
酸化マグネシウムは、尿管結石の発生を
予防する効果があります。)
症状は下腹痛、腰背部痛、切迫早産、血尿、
腎盂腎炎に発展すると高熱や全身への炎症の
波及、流産などのリスクがあります。
診断は比較的簡単で、仰臥位で胎児超音波を
行った後、そのまま妊婦さんに左右の側臥位を
とって頂き、腰から超音波を当てれば一発で
腎盂の拡張の有無が分かります。
合わせて尿定性や沈査を追加で行い
尿路感染の有無を調べることも有用です。
結石の際は、超音波での診断は中々難しいです。
造影剤を用いない単純MRIを行えば結石の診断
は可能ですし、単純CTもその被ばく量は胎児への
影響が心配と思われますが、器官形成期を
過ぎれば1~2回の下腹部CTは閾値以下であり、
問題は無いと考えられます。
治療は安静と、水分の補給、切迫早産があれば
子宮収縮抑制剤を使用しますし、腎盂腎炎予防に
抗生剤を用いる事もあります。
重度の水腎症の場合は泌尿器科にお願いして
尿管ステント留置を行っていただきます。
分娩を終えると速やかに改善するのも妊娠水腎症の
特徴ですので、(結石は排石されないと症状は継続
しますが)しっかりと対応すれば決して怖い病気では
ありません。
日頃の妊婦健診の胎児エコーの際に、ちょっと横寝を
してもらって腰からエコーを当てるだけ診断することが
出来ますので、下腹痛や腰背部痛、尿の違和感の
ある妊婦さんは、積極的に申し出ると良いのでは
ないでしょうか?
