密封されたパッケージを
ぱちり はさみで開ける
途端にあふれる香りに
あなたは頬をゆるめて


あなたは何も 知らないね


難しい名前の難しい機械で
上機嫌のあなたは珈琲を入れる
産地がどうの
種類がどうの
淀みなく紡がれる言葉と
淀みなく動いている指先


あなたは何も 知らないね


煎れたての珈琲を
陶磁器の器に注ぎ込み
夜の一番深い陰に
よく似たそれを嚥下する
香りがどうの
煎れ方がどうのと
こだわるあなたに倣って
私も珈琲をブラックで


あなたは何も知らないね
私が本当は珈琲より紅茶派だとか
珈琲にはミルクと砂糖をたっぷり入れるとか
戸棚の奥には紅茶道具が一式揃ってるとか
そういう
あなたと私の違いのすべて


珈琲の苦みを舌にのせ
上機嫌のあなたを見る
それがどんな甘味より
私を楽しませてくれるから


珈琲のある生活は
まだ暫くはやめられない