近日、ジェラートショップをオープンされる方からアドバイスを求められた。

なんでもバイト、パートをどのタイミングでどれだけ入れるかで悩んでおられるとのこと。


僕なりにアドバイスさせていただきました。



1999年6月、能登本店で開業した僕は最初の立ち上げ2年はほぼ一人で製造、販売をこなしていました。
忙しい時は母に接客をお願いしましたが、基本的には自分以外の人間がお店に立つのを嫌っていました。当初からそのような店舗設計でやっていました。
オープン10時で6時クローズ、次の日のジェラートミックスの仕込みやカップ詰めに追われ寝るのは毎日夜中12時を過ぎていました。
毎日が予期せぬハプニングの連続でした。
昨日の夜、徹夜して一人で作ったジェラートのカップ1500個、保管する冷凍庫のスイッチの入れ忘れ、また半分冷凍庫の扉が開いていたせいで全て次の朝には溶けていました。
もちろん全商品廃棄処分で、また作り直しです。
ジェラートの味のレシピもオープン1年過ぎたころまで試行錯誤でした。
何度も何度も作り直しては試食し、お客様に甘すぎる、何か物足りないと言われ次第に自分の目指す味というものがわからなくなってきていました。

ですが不思議と休みなく働いていても全く疲れはありませんでした。楽しくてしょうがなかったのです。
自分の夢が形になって叶ったのですから。
毎日お客様からいただく味に対する評価に、なんとか答えようと毎日製造室にこもっている毎日でした。能登のお店にお越しになるお客様はそんな20代の若いジェラート職人にとことん付き合ってくれました。僕はお客様に育てられている、、この時震えるほど感じました。
今頑張らないでいつ頑張るのかと自分を奮い立たせて、真剣にジェラート製造に向かい合いました。

多分、ここまでがんばっているやつは日本中探しても自分しかいないな、と自信を持っていましたし、バイトやパートの他人に自分の作ったジェラートを売ってもらう気はさらさらありませんでした。
自分で作ったものは自分のこの手で売る、他の誰にも売らせないしさわらせない、そんな強い想いを持っていました。

今は、お陰さまで会社もなんとか軌道にのり、自分一人では手が回らなくなってきて、たまにバイトやパートにお願いしたりお店を任せることがあります。

また、県の方からブランド素材(能登ワイン・加賀の紅茶)をつかったジェラート製造のお話をいただいたり、ほか、県内のメーカーからPBブランドでのジェラート製造をお任せいただいたり、最近は海外でのライセンス生産のお話もいただいたり、自分一人では全てを製造できない規模のお話になってきています。
人に任せる勇気を持ち、自分の右腕を育て経営者としての資質を問われてきています。
もはや、ジェラート職人として追及していく立場だけではなくなってきており、そのバランスをどうとっていくか、そのスタンスも問われてきています。
ですが、最初にお店を立ち上げた時は基本的には自分一人でやれるところまでやるという強い意志を持っていました。

ジェラートショップの数だけそのやり方があると思います。
が、オープン前の今からバイトやパートの心配は無用かと思います。
そのような心配をされてしまうのは、どこかで自分が楽をして仕事をするかという自身に対する甘えが見え隠れしてしまうのです。
仕事は、特に自分のお店を持つということは甘くはありません。
お店はやる気になればすぐに誰にでも立ち上げることができると考えます。
ですが、継続させていくのは誰にでもできることではありません。

僕が住む金沢でも、毎月多くの店がオープンし、そして潰れています。
僕がお店を出した12年前は牧場主がジェラートショップを持つというのがブームで
たくさんの酪農家がジェラートショップをオープンされました。

今では牧場直営のジェラートショップも全国に本当に多く、それだけでは差別化は難しい時代です。
自分が他の誰にも負けない唯一無二のものを生み出すまで、もがいてみてください。
そしてそのもがき苦しむ苦難を心から楽しんでみてください。

今までの人生は何だったんだと、きっと心からジェラート作りの醍醐味を楽しめます。

最初のうちは、体も十分に動ける若くて健康な奥さまがいらっしゃるので奥さまにお手伝いしてもらう形をとってはいかがでしょうか。
他人を雇用するのは、大きな責任も伴います。お店の経営に直接響きますし人件費が経営を一番圧迫します。

これはあくまで僕の経験則に照らし合わせたアドバイスですので、答えではありません。
何度も言うようですが、その人にはその人なりのやり方があります。
ですが困ったら助けてくれるだろうという甘えが少しでもあると、事業というのは概ね失敗します。僕も過去に失敗しています。綿密な創業計画書を練っていても失敗する事例は多くあります。

あくまでご自身のお店は独立採算性でお金がまわる仕組みを模索してみてください。


こんな感じの意見をさせていただきました。
最近、僕にとって本当に不思議な縁で繋がった大きな出会いがありました。期待していただいてるなとひしひしと感じますし、自分がさらにステップアップするチャンスをいただいた気がします。一体なぜ僕なのですか?直接その方に質問をぶつけてみた。将来性かな、僕には先が見えるんだよ。嬉しかった。能登出身のジェラート職人がどこまで通用するのか、もっと先の自分を知りたくなった。もっと自分の心に正直に生きてみたくなった。
12年前、奥能登の牧場から頼りなく始まったストーリー、、、その続きを明日も紡いでいくのです。
明日は富山の大手デパートに商談です。
taizo