2.近代化の恩恵(近代化の功罪の「功」)



批判されることの多い「近代化」だが、そのすべてを否定すべきではない。

問題になっているマイナス面を批判するばかりではなく、プラス面の恩恵はきちんと評価することが大切だ。

現代社会の豊かさや便利さが、近代化の産物であることを理解しておこう。




(1)生産性の向上


産業革命の最大の恩恵は、生産性の向上だ。

工場の機械化により、大量生産が可能になり、商品の価格が下がることで普及が進んでいく。

さらに無駄を省いた合理化効率化を追求した結果、それまでにはなかった商品やサービスが簡単に手に入るようになり、便利で快適な生活が実現して、人々は物質的豊かさを得た。




(2)自由競争


資本主義は、需要と供給のバランスに基づく市場経済自由競争を前提としているが、生産者が利益を追求する中で、より良い商品がより安く提供されるようになり、それが消費者の利益にもつながっている。

また、戦後日本で行われた財閥解体や独占禁止法制定のように、健全な競争を妨げる独占・寡占・カルテルなどを防ぐ経済政策により、多くの人々が競い合い、試行錯誤を重ねることで、品質やサービスが向上し、産業が発達してきた。


これに対し、個人の努力が報われにくい社会主義国では、生産性が上がらず、品質やサービスの低下が問題になった。

中国などが、政治面では社会主義体制を維持しながら、経済に関しては自由経済を取り入れたのも、この競争原理の効果を認めた結果といえる。




(3)分析主義


分かれたものごとをまとめる「統合」に対し、ものごとを細かく分けて考えるのが「分析」だ。

近代の哲学や科学は、この「分析」を重視し、細部に注目することで、対象をより詳しく知ろうとしてきた。

複雑で多様な世界を、直接観測できる単純な要素の集まりとして捉えようとすることを「還元主義」というが、特に、物質をものごとの本質とし、精神や意識は実在する物質から導かれるものとする「唯物論」や「物心二元論」という考え方が、近代科学の前提になっている。


こうして、現象を細かく分けて観察・分析することで法則性などを発見しようと努めた結果、近代科学は急速に進歩し、肉眼では見えないほど小さな世界を探求するナノテクノロジーや、複雑な生命のしくみの一部を解明して利用できるようにするバイオテクノロジーを発達させた。


こうした考え方には宗教的な背景もある。

自然というものを、人知を超えた一つの大きな命のようなものとして捉える東洋的な思想に対し、自然は神から与えられたものと理解する西洋では、人間による自然支配を肯定する機械論的自然観」に基づいて開発が進められ、自然災害の克服にも積極的に取り組んできた。

もともとヨーロッパは、地中海周辺を除けば、かなり寒冷な気候で、大昔の人間が暮らすには相当厳しい環境であり、それを人間の力で住みやすくしてきたという歴史も影響している。




(4)市民社会


先述の通り、市民革命は、市民社会市民意識を生み出した。

詳しくは「社会」の項で改めて説明するが、革命によって国を動かす主権を手に入れた市民は、代表者が集まって国の行く末を話し合う議会政治を始め、自分たちが獲得した自由や平等を、生まれながらの人権として守るために、市民としての義務と責任を果たすようになった。