小麦グルテン不耐症は増えている | 幕内秀夫の食生活日記

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5日間、小麦粉断ちして体調がよくなれば「小麦グルテン不耐症」の可能性あり。パンやパスタやうどんを諦めても代え難いグルテンフリーのメリットとは

パン、ラーメン、うどん、ケーキにパスタ、あるいはピザ……美味しいものの多くは小麦からできている。でもその小麦を控えることで慢性的な頭痛や疲労感、肌荒れがなくなるとしたら、ちょっとやってみるという選択肢もありだと思えるのでは?

書籍『たんぱく質と腸の新常識』(Gakken)より一部を抜粋・再構成し、小麦が腸に与える影響を解説する。

頭痛、疲労感、集中力低下、肌荒れなどを引き起こすグルテン不耐症

実は、たんぱく質の中にはできるだけ摂らないほうがいいものがあります。それが小麦粉に含まれる小麦グルテンです。

小麦グルテンは、小麦粉に含まれるグルテニンとグリアジンという2種類のたんぱく質が絡みあってできる網目状の成分のことです。

パンやうどんなどを作る際、小麦粉に水を加えてこねると手にベッタリと張りつき、なかなか取れなかったという経験がある人もいるのではないでしょうか。この粘りと弾力を生み出しているのが小麦グルテン。パンをふっくらさせたり、麵がもっちりしたりするのは、小麦グルテンのおかげです。

しかし、小麦グルテンの粘りと弾力がかなりの曲者。グルテンの「glue」は、ラテン語・英語で「のり」という意味です。一度にたくさんの小麦グルテンを摂取すると、胃で消化しても粘りが残り続け、その名のとおり、のりのように腸内にベタベタと張りつきます。それが腸内に長く留まり、腸内環境を悪くして腸漏れ(リーキーガット症候群)の原因となるのです。

また、乳製品における「乳糖不耐症」と同様に、小麦粉にも「小麦グルテン不耐症」があります。小麦グルテン不耐症の人がパンやうどんなどを食べると、小麦グルテンを消化することができず、お腹の調子が悪くなります。

小麦粉を摂るとお腹の調子が悪くなったり、頭痛、疲労感、集中力低下、肌荒れなどを引き起こすことがあるなら、体が小麦グルテンによって悪影響を受けている証。腸内で炎症が起こり、腸漏れが起こっている可能性が高いといえます。

実家がピザ屋のジョコビッチ

しかも、小麦グルテンは依存性が高い成分です。喫煙者がなかなかタバコをやめられないのと同じで、パンやピザを長年食べ続けている人は、体が小麦グルテンを欲するようになり、なかなかやめることができなくなります。これも、腸漏れを悪化させる大きな要因です。

この小麦グルテンを摂らないようにするのが「グルテンフリー」という食事法です。小麦粉食品の摂取を制限することで小麦グルテンを除去したり、控えたりする食事法で、世界的なテニスプレイヤーのノバク・ジョコビッチ選手が実践し、圧倒的な好成績を残したことで広く知られるようになりました。

ジョコビッチ選手の実家はピザ屋だったので、幼いころから毎日のようにピザを食べていたそうです。ピザの生地は小麦粉でできていますから、何年も小麦グルテンを摂り続けていたことになります。

ジョコビッチ選手は、誰にも負けないほどテニスの練習に励みましたが、体調不良がつきまとい成績が安定しませんでした。

そこで、医師からすすめられたグルテンフリーを実践したところ、みるみる体調がよくなり、集中力も格段に上がり、数々のグランドスラム大会で優勝を収めるようになりました。ジョコビッチ選手の不調は小麦グルテン不耐症によるものだったのです。

腸にベッタリ張りつく小麦グルテンを5日間断ってみる

「小麦グルテン不耐症」かどうかは、遅延型フードアレルギー検査をすればある程度はわかりますが、少量ではアレルギーが発症しないケースや年月が経ってから発症するケースも珍しくありません。そのため、不調があっても、その原因が小麦グルテンにあるとは気づきにくいのです。

そこでおすすめしたいのが「5日間小麦粉断ち」です。たとえば毎日パンやパスタ、うどんなどを食べているなら、5日間やめてみたらどうなるかを体感してみてください。調子がよくなったら大成功! そのまま継続することができれば、腸漏れ改善は大前進です。

ちなみに、内視鏡検査では、腸内に小麦グルテンがベッタリと張りついた様子を数え切れないくらい見ています。私たちはこのような腸を「ベッタリ腸」と呼んでいます。たとえ、小麦グルテン不耐症ではなかったとしても、「ベッタリ腸」が腸に悪影響を及ぼすのは間違いありません。だから、私たちはもう何年もパンを食べていません。

しかし、パンが好きな人にとっては、パンを食べてはいけないと言われるのはつらいことだと思います。絶対に食べてはいけないとなれば、ストレスが溜まって心身に悪影響を及ぼす可能性もあります。

まずは常食をやめて週1回などルールを決めて食べるようにしてみてはいかがでしょう。小麦粉を使ったパンをやめて米粉パンを食べるのもいいアイデアです。少しずつでも食べる機会、量を減らせば、きっと心と体には少しずつ変化が訪れるはずです。

▼私も上記の著書の共著者になっています。なぜ引きうけたのか?大きな理由は、原因がわからないが体調不良の人に実は「小麦グルテン不耐症」の人が増えていると思ったからです。なぜ増えているのか?かつて、いや今でも関西などでは小麦粉のことを「メリケン粉」と呼ぶことがあります。アメリカから小麦が入ってきた際、アメリカ人を「メリケン人」と呼んでいたことからそう呼ぶようになったと言われています。アメリカの小麦は国産の小麦粉と比べて、グルテンが多く、パンに向いていたためどんどん普及します。私が小学校時代に食べていたコッペパンはまさにアメリカ産の小麦粉で作られていました。ところが、その後、パン食が普及するとともに、フワフワのパンを求めるようになり、よりグルテンを含む、小麦粉が求められるようになります。実際、現在はグルテン含量をもっとも含む、カナダ産のものがトップになっています。

 国産→アメリカ→カナダ産 そして製粉技術が進歩し、よりグルテン含量の多い小麦粉が作られるようになっています。

 そのことでグルテンの摂取量が非常に増えています。したがって、小麦グルテン不耐症の人が増えていると考えたからです。

 もう一つの理由は「グルテンフリー健康法」と言う言葉に対する違和感です。グルテン不耐症の人が増えていてもおかしくない。ただし、それを一般化して誰にでも勧める「健康法」にしてもいいのか?出版社もそれを考え、私への依頼が来たのではないか?と考えています。ただしただし、複雑な話になりますが、グルテン問題も含めて、精製糖が使われ、食品添加物も使われ・・・副食も油脂だらけになる「パン食」の常食は勧めたくないですね。

 結論:原因不明で体調不良の人は、グルテン不耐症を疑ってみることをおすすめします。そうでないとしても、精製糖と食品添加物を使ったパン食の常食は勧めたくありません。