武蔵野うどん(東京)

 ほうとう(山梨)

麺の「のど越し」

 

 暖かい日が多くなってきました。暖かくなると、にぎわう飲食店は蕎麦屋さんです。もっと暑くなると、食べたくなるのは素麺や冷麦です。逆に食べなくなるのは餅です。おそらく、長野のお焼きも暑くなってくると、食べる人が減ってくるのではないでしょうか。

 かつて、蕎麦やうどんは味噌汁に団子にして入れて食べてきたのだと思います。暑い夏に、だれかが蕎麦やうどんを薄く延ばし、細く切って食べたら、「のど越し」が良くなって食べやすくなることに気付いたのでしょう。そこから、現在の「蕎麦切り」が誕生したのだと思います。うどんも、現在でも、「麦切り」と呼ぶ地域があります。わざわざ、「切り」と呼ぶのは、特別な食べ方だったからです。手間のかかる食べ方ですから、庶民は特別なときだけしか食べなかったのでしょう。長野では今でも、お客さんに蕎麦を出す際、「ふるまう」という方がいます。まさに、ご馳走だったころの名残りなのでしょう。したがって、「蕎麦切り」は、お殿様が住んでいた、江戸で普及したと言われています。

暑くなって胃袋が疲れてくると、顎の筋肉に指令を出します。疲れるから、硬い餅やするめなどは入れないでくれという命令です。香川の「さぬきうどん」は、その喉越しに特徴があります。地元の人たちの中には、うどんを「飲む」と言う人がいます。まさに、温暖な地域ならではということができるでしょう。ただし、細くてのど越しの良すぎる麺は、空腹を満たすには適さなくなります。したがって、香川の「さぬきうどん」の店に入って見渡すと、ほぼ全員の方が、天ぷら、寿司、おにぎり、おでんなどを一緒に食べています。

私の住んでいる東京の多摩(武蔵野)地区は米がとれない地域でした。そのため、小麦が食べられてきました。三食ともうどんということもあったのでしょう。うどんで空腹を満たす必要があったため、麺を細くしなかったのだと思います。今でも、「武蔵野うどん」は麺が太いのが特徴です。群馬の「おっきりこみ」、山梨の「ほうとう」も同じです。

昔から、蕎麦やうどんで空腹を満たしてきた地域は、今でも太い麺が残っています。平成の時代になっても、それが残っているというのがおもしろいですね。(長野の雑誌の連載)

▼東京は昨日、今日と猛暑は抜けたような感じです。数日前は38,39度などとんでもない暑さでしたが、「このまま8月になったらどうなるのか?」。さすがに40度、42,43度にはならないものですね。取り敢えず、ホットしました。