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【実食レポ】サツマイモ“3タイプ”食べ比べ! 相性の良い調理法を栄養士ライターが指南

大別すると3タイプ

 焼き芋、ふかし芋、大学芋、スイートポテトなど、料理からスイーツまで幅広く使われるサツマイモ。私たちにとって、とても身近な存在ですが、店頭に並ぶ多種多様な品種に「何が違うの?」と迷ったことはありませんか。この記事では、サツマイモの品種と持ち味の違い、相性の良い調理法を探ってみたいと思います。

【焼き芋・レモン煮・大学芋】ほくほく・しっとり・ねっとり…どのサツマイモが相性良い?実際にぜーんぶ、作って比較してみた!(画像7枚)

 中南米生まれのサツマイモが、日本へやってきたのは江戸時代の初め。中国から琉球(沖縄)へ伝わり、薩摩(鹿児島)を経て、日本全国へ広まりました。現在、日本で栽培されているサツマイモは、約60品種(参照:農林水産省webサイト)。料理やお菓子などでおなじみの食用のほか、いも焼酎、でん粉、加工食品など、さまざまな用途に利用されています。食用のサツマイモの品種は、大別すると3タイプに分けられます。

【ほくほく系サツマイモ】

高系14号(ほくほく&しっとりめ)、なると金時、べにあずま、べにさつま、パープルスイートロードなど

昔ながらのサツマイモらしい粉質でほっくりとした食感、ほどよい甘さが魅力。水分が少なめで、加熱しても形が崩れしにくく、料理に使うと、油や調味料とよくなじみ、おいしく仕上がります。天ぷら、煮物、炒め物、サラダに相性◎。

【ねっとり系サツマイモ】

安納芋、べにはるか、べにまさり、ひめあやかなど

蜜芋ブームの火付け役が、こちらのタイプのサツマイモ。水分を含んだ粘りの強い、ねっとり感と濃厚な甘さが特徴。適温でじっくり加熱すると、とろけるようなやわらかさに。強い甘みを存分に生かして作られる干し芋やスイーツも人気です。

【しっとり系サツマイモ】

シルクスイート、クイックスイートなど

ほくほく系、ねっとり系の魅力を併せ持つ、中間質のサツマイモ。なめらかな口当たりと上品な甘さが特徴で、加熱後の保水性とやわらかさのバランスも絶妙。幅広い料理・スイーツに活躍するオールラウンダー。

 こうなると気になるのが、「ほくほく系」「ねっとり系」「しっとり系」のサツマイモと料理の相性です。焼く・煮る・揚げるなどの調理法の違いで、おいしさや食感は変わるのでしょうか? ほくほく系(なると金時)、ねっとり系(べにはるか)、しっとり系(シルクスイート)の3品種を使って、「焼き芋」「レモン煮」「大学芋」を作って、食べ比べ検証をしてみました。結果はいかに!?

3タイプのサツマイモで「焼き芋」「レモン煮」「大学芋」を作って食べ比べ

▲左から順に、ほくほく系(なると金時)、しっとり系(シルクスイート)、ねっとり系(べにはるか)。

▲左から順に、ほくほく系(なると金時)、しっとり系(シルクスイート)、ねっとり系(べにはるか)。© LASISA 提供

 食べ比べたのは左から順に、ほくほく系(なると金時)、しっとり系(シルクスイート)、ねっとり系(べにはるか)。

●焼き芋は“ねっとり系”が秀逸です!

 まずは、焼き芋から検証していきましょう。

 サツマイモが持つ素材の甘さを最大限に引き出せるのが、焼き芋。3タイプの食感と甘さの違いを最も感じられる結果となりました。家族全員が「甘い!」と思わず口を揃えるほど文句なしにおいしかったのが、ねっとり系(べにはるか)。文字通り、特有のねっとり感とクリーミーさが、まるで天然のスイートポテトのよう。

 一方、ほくほく系(なると金時)の焼き芋は、栗のようにほっくりとした食感で、ほっとする優しい甘さ。お茶なしでは飲み込みづらいほど、しっかりした粉質を感じることができました。

しっとり系(シルクスイート)の焼き芋は、上品な甘さで、きめが細かくてなめらか。ほっくり感がありながら、べたっとしすぎないみずみずしさも感じられました。好みが分かれるだけで、ねっとり系、ほくほく系、しっとり系いずれのタイプも焼き芋に合うと言えそうです。

 参考までに、おいしい焼き芋の作り方を紹介しましょう。

(1)水洗いしたサツマイモを濡らしたキッチンペーパーでくるむ→

(2)アルミ箔ですき間なく包む→

(3)予熱なしのオーブンで140度×90分→サツマイモの上下を返し、さらに140度×60分焼く→

(4)そのままオーブン内に60分放置して余熱調理

 サツマイモは、ゆっくり温度を上げて長時間加熱することで、芋の中に含まれる酵素(β-アミラーゼ)が芋のでんぷんに作用して麦芽糖が作られ、甘みが増加します。電子レンジでの加熱調理は温度上昇が急激すぎると麦芽糖が生成されにくいので、ご注意ください。

●煮物には「ほくほく系」が安定感あり!

 お惣菜やお弁当のおかずに重宝する「さつま芋のレモン煮」は、作りたて・冷めた翌日の2パターンを食べ比べました。

 ほくほく系の(なると金時)は、仕上がりの色が最も美しく、冷めた翌日は一層よく味が染みているように感じました。しっとり系(シルクスイート)は、作りたてはしっとり、冷めると少しシャクシャクとした歯触りに。芋の個体差によるのかもしれませんが、作りたての方がおいしいと感じました。ねっとり系(べにはるか)は水分の多い、べっちゃりとした仕上がりで甘さ控えめ。正直、煮物向きではないかも?と感じました。

●大学芋は「しっとり系」がバランス良し!

 最後の食べ比べは、揚げもの系おやつの「大学芋」。

 ほっくり感×なめらかさのバランスが絶妙で無限に食べたくなったのは、しっとり系(シルクスイート)。ほくほく系(なると金時)は、ふかふか×ずっしりした食べ応えで、「しっとり系」と甲乙つけがたいおいしさでしたが、粉質感がやや喉に残る感覚も。ねっとり系(べにはるか)は、水分が多く食べやすい一方で甘みが少し物足りない印象。大学芋は焼き芋よりも短時間×高温で加熱調理するため、ねっとり系の濃厚な甘みを引き出しきれていない気がしました。

検証を終えて…

 焼く・煮る・揚げるの違いで、思っていた以上に食感や甘さに違いが出る結果に、正直びっくり。芋の個体差や嗜好の違いがあり、一概には言えませんが、参考になれば幸いです。ほかにも、蒸し芋、サツマイモごはん、スイートポテト、芋ようかんなど、食べ比べを試したいサツマイモメニューがいっぱい。機会があれば試してみたいと思います。

 いずれにしろ、迷うほど多種多様な品種があり、さまざまな料理やお菓子に活用できるのもサツマイモの大きな魅力。みなさんも、気になった品種で料理やスイーツを楽しんで、それぞれの“推し芋”を見つけてください。

▼たまにスーパーで焼きたてのサツマイモを買うことがありますが、この記事で言うと、「ネットリ系」ですね。非常に甘い。だから夏になると、冷やし焼き芋なども登場するようになったのでしょうね。冷やしても甘さを充分に感じることができる。昔はサツマイモの美味しさの表現は「ホクホクしてうまい」だったのですが、いつの間にか変わってしまいましてね。やはり洋菓子などの普及などが背景にあるように思いますね。逆にかぼちゃなどは、ネットリ系からホクホクした西洋かぼちゃが主流になっています。かぼちゃの場合は、甘くて料理がしやすいということで普及するようになったのでしょう。

 果物もサツマイモもかぼちゃも、どんどん甘くなっているのは、洋菓子の影響が大きいんだと思いますね。