ごはん(玄米・小豆・ごま塩)、つみれ汁、鯵の干物、焼き豆腐のえのきがけ、焼きいも

唐揚げ専門店の倒産が相次ぐのに、増え続ける「コンビニ唐揚げ」 ファミチキ、からあげクンと並ぶ存在に育つか

ひと頃のタピオカブームのように、コロナ禍では唐揚げ専門店が街中に乱立し、一種の唐揚げブームを引き起こした。しかし最近では専門店の衰退もささやかれ、実際に閉店や倒産が進んでいる。

 一方、ブームに便乗するように新商品が投入された「コンビニ唐揚げ」は専門店の衰退をよそに売れ続け、現在でも販売が続く。各社が販売するコンビニ唐揚げの特徴と、売れている要因についてまとめていく。

●需給双方のニーズにマッチも、近年は衰退傾向

 コロナ禍で、街中に多くの唐揚げ専門店が現れた。大衆酒場のように明るい店舗は人出が少なくなった街で目立つ存在であり、人気店には行列もできていた。地場の企業が営む店舗だけでなく大手も参入し、モンテローザは「からあげの鉄人」を、ワタミは「から揚げの天才」の出店を進めた。ガストは「から好し」ブランドを併設した店舗を増やし、唐揚げメニューを充実させてい

 日本唐揚協会によると、各年4月段階の唐揚げ専門店の数は、2018年の1408店舗から20年には2445店舗へと増加。コロナ禍でさらに増え、22年には4379店舗となった。

 唐揚げ専門店ブームは需要面と供給面から説明がつく。

 需要面から見ると、家庭で揚げ物を調理することが減り、コロナ禍以前から外食や中食で取り入れることが一般的となった。そんな中でのコロナ禍は外食需要を抑え込み、代わりに中食需要が伸びたことで専門店に客が集まった形だ。スーパーの総菜や冷食と比べると高いものの、専門店の唐揚げは味にこだわったものが多く、自粛期間中の閉塞感を破る存在としても求められたと推測される。

 供給面から見ると、初期投資の低さが唐揚げ専門店ブームを引き起こしたと考えられる。持ち帰り専門にすれば狭い店舗でも開業でき、揚げるだけなので細かいノウハウもいらない。苦境の飲食店に代わる業態として出店した業者もいたようで、さまざまなプレーヤーが参入した。

 しかし、22年の冬あたりからメディアでその衰退が取り上げられるようになった。先述の日本唐揚協会によると、22年4月から23年4月にかけて店舗数は4379→4388と横ばいだが、関東では164店も閉店しており、首都圏での閉店が衰退のイメージを強めたといえる。帝国データバンクによると23年の後期は倒産件数が特に増えており、実際に規模が縮小していることが分かる。

●ブームにあやかり増えた「コンビニ唐揚げ」

 コンビニ各社も唐揚げブームに乗ってきた。以前から何らかの形でホットスナックの唐揚げを販売していたが、コロナ禍では新商品の発売やリニューアルが目立っていた。

 19年7月に「ななから」を発売したセブン‐イレブンは、コロナ禍でリニューアルを重ねて21年3月に従来品よりもジューシー感を出す改良を実施。下味に漬ける時間を伸ばし、衣を薄皮にしているという。

 現在は通常のななからと、ななから(にんにく醤油)を1個当たり89円で販売している。発売当初に報道された内容によると、肉質の柔らかい若鶏を使用。タレに漬けてから生姜・でんぷんなどを混ぜ合わせた味付け用の粉をまぶし、衣を付けた上で工場で揚げているという。ここまでの工程はタイにある工場で行われ、各店舗へ輸送後、店舗で再度揚げることによって“できたて感”を再現している。

 「ファミチキ」のイメージが強いファミリーマートでは、唐揚げ店「もり山」が監修した「ファミマのからあげ」を16年に発売。その後、21年10月に「和風からあげ」を4個入り200円(当時)で発売した。

 22年5月には、和風からあげに代わる新商品として「ファミから」を発売し、現在は醤油味・塩味の2種類をそれぞれ1個98円で販売している。地域ごとにサイズが異なるようで、ファミから(醤油)の場合は北海道・関東・中四国・九州・沖縄だと1個につき約103キロカロリー、東北・東海・北陸・関西だと約125キロカロリーである。ちなみに、セブンの通常のななからは82キロカロリーだ。

●まとめ売りでお得に提供するローソン

 1986年に「からあげクン」を発売し、看板メニューに育ててきたローソンも、コロナ禍でスタンダードな唐揚げを発売した。そもそもからあげクンは名前こそ「唐揚げ」だが、サクッと感はなくふわふわなイメージがある。その意味で唐揚げとは別の商品であり、ブームで伸びたようなカリッとした唐揚げの必要性に迫られたのだろう。

 そこで、21年11月に「鶏からもも」を発売、23年10月には温めなくてもおいしい点を訴求する「Lから」を発売している。現在では鶏からももの旨塩味、Lからをそれぞれ4個入り260円で販売している。1個当たり65円、カロリーは90キロカロリー前後であり、まとめて売ることでセブンやファミマよりもお得に提供できるのだろう。1月にはLからの「スパイスミックス」味と「ねぎとごま油」味を発売し、レパートリーを増やしている。

●コンビニ唐揚げの好調は「食事」と「スナック」の違い

 冒頭の通り、唐揚げ専門店ブームは終息に向かっているが、コンビニ唐揚げは好調だ。特にファミからは人気のようで、22年5月から23年12月にかけて累計販売個数は1億2500万食を超えたとしている。Lからも「満足度は高い」とローソンはアピールしており、先述したように新フレーバーも発売した。新商品の更新が早いコンビニでは、売れ行きが芳しくなければ早々と撤退していたはずである。現在でも販売が続くことから、少なくともかつての「コンビニドーナツ」のように売れない商品ではないようだ。

 ちなみに「コンビニ唐揚げの普及が唐揚げ専門店の衰退をもたらした」という意見も聞かれるが、筆者はあまりそう思わない。専門店の唐揚げは、まとめ売りや弁当など食事目的が想定される。一方のコンビニ唐揚げは、紙製のパックや透明の容器に入れられることが多く、その場で消費する「スナック」のような位置付けだ。コンビニで買った唐揚げを家でご飯とあわせる行動はそれほど多くないのではないか。気軽に唐揚げを食べられることが、コンビニ唐揚げ定着の要因と考えられる。

 唐揚げ専門店が衰退した背景には外食産業の回復もある。選択肢が増えた分、中食として唐揚げを選ぶことが少なくなった。また供給面では、鶏肉価格や食用油の高騰によって専門店側が利益を得られなくなったことも関係している。そういった意味で、コンビニ唐揚げは既存の唐揚げ市場を奪ったのではなく、スナックとしての新たな市場を開拓したといえる。

 とはいえ実際に店舗へ寄ってみると欠品も目立ち、そもそも置いていない店舗もある。唐揚げではなく、ファミマであればファミチキ、セブンは揚げ鶏など、一回り大きい類似商品を見かけることの方が多いと感じる。そう考えると、コンビニ唐揚げは少なくとも現時点で「定番商品」には至っていないといえる。今後伸びるのか、それとも終焉を迎えるのか、見極めるにはもう少し時間がかかりそうだ。

▼タピオカ?口にする機会がなかったですね。「から揚げ」も同じ運命をたどるのでしょうね。家とか自動車にも流行(ブーム)があるんだと思います。でもそれらの流行に乗ることは簡単ではない。その点、ファッションは裾野が広い。80円、90円の唐揚げはもっと広い。「食」の流行は誰でも参加できる。そういう類の話だと思いますね。

 だから、「一億ピラニア軍団」が登場しやすい。ひところ、八百屋さんからバナナがなくなったり、それを繰り返している。このことを理解するには、「から揚げ」だけを考えても何もわからない。流行を追いかけるのが好きな日本人を理解しないと分からないと思いますね。何となくここまで流行を追いかけるのが好きな国はないのではないかと思うのですが。どうなんだろう?

 何となく恥ずかしい気がする。