ニック・ブイチチ氏から学ぶ話し方 | 石渡誠 Language Teaching for a Better World

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FORWARD代表 石渡誠

スピーチの朗唱練習から学べるのは、英語だけでなく話し方です。同じ言葉でも、話し方ひとつ変えると全く違うように伝わるものですよね。逆に言えば、話すときの姿勢から表情、体の動きや声の調子など学ぶことはたくさんあります。

ところが熟練した話者でも、話し方が単調になりがちです。なので、先月はトーストマスターズ春季大会で、話し方についてワークショップをさせて頂きました。



そしてそこで、私達の模範ともなる話者として紹介させて頂いたのが、オーストラリア人のニック・ブイチチ(Nick Vujicic発音はニック・ボォイジッチのほうが近いです)さんでした。

YouTubeなどで観られている方も多いかもしれませんが、手足なく生まれた彼は、今講演者として世界中の人達に勇気と感動を与えています。

実はワークショップのちょうど1週間前に、ニックさんの日本初講演があり私も楽しみに行ってきました。


(ちょうど話しかけている時に、シャッターが、、、でも彼はいい笑顔)


感動せずにはいられない、90分間のお話だったのですが、内容だけでなく、ニックさんの話し方にも深い感銘を受けました。

どのようにしてそのような話し方を会得したのかを、講演後に直接尋ねてみたところ、コーチから1回1時間のセッションを10回受けたことがあるそうですが、あとは、自分自身で磨き上げたそうです。

察するところ、手足が無いだけに、普通の人以上に、体の動かし方から、表情のつくり方、また声のメリハリなど工夫されたのではないでしょうか。

向上の秘訣は、passion - discipline - experience、すなわち(伝えることに)情熱を持ち、訓練を重ね、経験を積むことだと言ってくれました。

すでに3000回を超える講演数をこなし、3万5千件もの講演依頼がきている彼のスピーチは必見です。

YouTubeに沢山の動画がアップされていますが、私がトーストマスターズのワークショップでご紹介したのは、こちらです。英語字幕入りですのでわかりやすいかと。この短いクリップからだけでも、彼の話し方の上手さが伝わってくるのではないでしょうか。




ところで、内容とは別に私が驚いたこと3つありました。

1つ目は、日本語が上手だったことです。「こんにちは」と綺麗な発音で日本語で挨拶をしたかと思ったら、その後も少し日本語で話を続けていました。実は高校時代に日本語を勉強していて、奥様も日系人、お子様の名前もキヨシ君だそうです。何か嬉しいですよね。

しかし、2つ目は日本に来たかった理由です。「日本が好きだから」ということを言うのかと思っていたのですが、予想外のことを言われました。それはちょっとショッキングでした。「世界中でイスラエルと日本が特に自殺者が多い国だから。」だということでした。

そして、3つ目はニックの著書のこと。世界中で大好評の中、一番販売数がまだ低いのが日本だそうです。翻訳本が出ていますので、彼の話をもっと多くの日本人が読むべきだと思いました。

キーワードとして出る HOPE という言葉。彼から発信されているからこそ、重みがある言葉として響いてきます。