菅野寛教授の「全社戦略が分かる」(日経文庫) | MBAによるキャリアチェンジへの挑戦

菅野寛教授の「全社戦略が分かる」(日経文庫)

一橋ICSのMBAコースで、大変お世話になった菅野寛教授(現在、早稲田大学院経営管理研究科教授)の「全社戦略が分かる」(日経文庫)を読んだ。菅野先生は、BCG(ボストン・コンサルティング)で長年パートナーを勤められて、自分が一橋ICSのMBAコースに入った2008年に教授になられた方。菅野先生からはオペレーション戦略の授業を習いましたし、色々、教官室でご相談にものっていただき、今でも深く感謝している。

 

「全社戦略が分かる」の目次は、以下の通り。

第1章     全社戦略では何を考えるのか

第2章     事業ポートフォリオ・マネジメント

第3章     シナジー・マネジメント

第4章     全社ビジョン

第5章     全社組織の設計

補論1  全社ガバナンス

補論2  全社人材マネジメント

 

まず、最初に経営者の視点で、全社戦略と個別事業戦略との違いが述べられている。「全社戦略」の定義として、「複数の事業を持つ企業において、本社(コーポレート)が立案・実行すべき戦略」とある。全社戦略では、上記の目次に記載のような内容が問われるのに対して、個別事業戦略では各事業部毎の戦略立案・実行が求められる点で大きく異なる。

 

本書で圧巻だったのは、BCGのPPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)により、キャノンの1970年代から2015年頃までのPPMの推移をチャートをもとに、各年代ごとの事業ポートフォリオ上の課題ととるべきアクションが明快に記載されているところ。第2章を読むだけで、なぜ、事業戦略だけではなく、全社戦略の視点が経営者に求められていることが、キャノンの事例から深く学ぶことができる。

 

個別事業戦略に関する研究や書籍はたくさんあるのに対して、全社戦略に関する文献や本は少ない。また、ビジネススクールの経営戦略のクラスでも、中心は事業戦略であり、全社戦略は少ししか教えられていない。その点で、本書にて「全社戦略」をどのように考えるべきか?については、頭の整理がついたし、本質の理解が深まった。本書の内容は、以前のブログ記事に書いた松田千恵子氏の著書「グループ経営」にもつながるものがある。

 

MBAホルダーの方も、改めて本書を読むことにより、「全社戦略」について理解が深まるので、お薦めの書ですので、読んでみてはいかがでしょうか?