総合商社の中東の経営企画に思い切ったキャリアチェンジしてみて | MBAによるキャリアチェンジへの挑戦

総合商社の中東の経営企画に思い切ったキャリアチェンジしてみて

2014年4月に、中東のドバイでの大手総合商社の中東エリアの経営計画の仕事に、思い切って、キャリアチェンジし、まもなく3年になります。キャリアチェンジするまで、知的財産の仕事しかしておらず、海外勤務は初めてで、英語のMBAコースで学んだ経営の知識だけを頼りに、総合商社での中東勤務が始まりました。

 

最初は、会議で営業部門からトレードの話を聞いても、MBAコースでは貿易の仕組みについて学ぶことがなかったので、単語の意味すら分からない日々でした。ジェトロの「貿易実務オンライン基礎講座(基礎編)」を受講してから、トレードの単語の意味が何となく分かるようになりました。

 

一方、MBAの米国交換留学時にファイナンスのクラスを集中的に受講していたこともあり、基本的なP/Lの読み込むはできると、実感しました。ただし、プロジェクトの投資案件になると、IRRなどの話は分かりますが、プロジェクトファイナンスのケースをやったくらいでは、投資の申請書の中身を深く理解するのは難しい、というのも実感しました。
    
仕事を通じて、自分が深く理解出来たと思うのは、中近東エリアの政治・経済の情勢と会社の仕組み。

 

一橋ICSのMBA在籍中にマクロ経済を学ぶことができなかったので、ハーバードビジネススクールのBGIE(Business, Government and the International Economy)のコースをもとにした

 

 

を読んでみた。サウジについて、著者のリチャード・ヴィートー教授の分析の深さに感銘を受けた。また、IMFの”Financial Programming and Policies, Part 1: Macroeconomic Accounts and Analysis”をオンラインで受講してから、IMFの各国についての Article IV Consultationの経済レポートの読み方が分かるようになった。上記2つにより、中東各国の財政の数値が示唆することの理解に一歩近づけるようになったと思います。マクロ経済の理解は、ある国への投資基準を判断する際に重要であるため、MBAホルダーには必須だと思います。

 

また、ドバイで開催される中東各国のセミナーへの参加や日々の中東情勢のニュース記事を読む環境にいたこともあり、日本に居続けたら、サウジやイラン情勢をはじめ、ここまで詳しくなることはできなかったと思います。中東の政治情勢は、一般的な日本人が考えているようりも、世界の政治に与えるインパクトがかなり大きいので、中東の政治情勢を理解できる土台を築けたのは、一生ものの財産だと思います。

 

総合商社の営業ではなく、経営企画の仕事をしていたからこそ学べたのは、会社のグループ経営やリスク管理、社内監査、コンプライアンス、コーポレートガバナンス等の会社の仕組み。特に、総合商社は子会社や投資先、事業会社がたくさんあるため、グループ経営という考え方は、通常のメーカーにいたら学べなかったことだと思う。グループ経営につき、松田千恵子さんの

 

 

を読みながら、総合商社の経営は、「グループ経営」というレンズでみると「なるほど!」とうなづくところがたくさんあった。また、同じく松田千恵子さんの

 

 

を読んでからは、勤務先の取締役会の人員構成を変わったことや社長が株主(出資者)を意識した発言をしていることにつき、コーポ―レートガバナンスの要請が時代の流れに伴い変化しているためであることを実感できた。松田千恵子さんの本に巡り合えたことで、日々の業務を通じて感じていることがグループ経営やコーポレードガバナンスという視点からつながり、目から鱗が落ちる感じでした。

 

それ以外では、アブダビの行政手続きで大変苦労したことにより、新興国での役所手続きの大変さを骨身に染みたこと、インド・パキスタン訛りの英語が理解できるようになったことも、ステップアップしたことの一つ。また、ドバイは、世界の様々な国の人が集まり、多様性(ダイバーシティ)を実感できたのも良かった。多様性の世界を経験すると、日本のように主に日本人だけで成り立っている世界に違和感を感じるようになる。

 

最後にイランについて。日本の総合商社はイランに拠点を持ち、イランには出張以外にもプライベートで何度も行き、テヘランでイラン人のお家にホームステイまでした。イランは人口約8,000万人の超大国で、治安も良く、イラン人はびっくりするほど親切かつ優秀であり、イランは米国のレンズを通した報道とは全く異なる魅力的な国であることを実体験して、世界観が大きく変わるぐらい感動した。

 

メーカーの知的財産から中東での総合商社の経営計画の仕事に思い切ったキャリアチェンジをして、何とか業務をやってこれたのは、新しいことを学ぶ吸収力や意欲だけではなく、転職前に英語のMBAコースで基礎的な財務・経理の知識があったことや、大前研一ライブ等を通じて、日々、世界各国の政経情勢や企業動向について興味を持っていたからだと思います。勤務先から言われた仕事だけを通じて学んでいく優秀なサラリーマンだったら、私のような職種、業界、勤務地、住む場所の4つが変わる転職は正直、かなり辛いモノになっていたのではと思います。

 

知的財産の実務業務に関係がない経営・ビジネスを自分がこれまで興味を持って学んできたことが、思い切ったキャリアチェンジに役立ったことはとても嬉しかったです。また、自分のキャリア形成の上でMBAが役立ち、若き頃に仕事を辞めて、英語のフルタイムMBAコースに進学を決断したことは、振り返ってみると、とても良かったと思います。