今日は北風がとても強く寒いので
夜は豚汁を作ることにしました。
切った大根ときのこを少しの時間だけ
北風にさらしておきながら、
日が暮れたところで暗い家の電気を
キッチンだけつけて水を入れた
鍋を火にかけました。
静かな時間。
北風がぶつかるようにベランダの柵を
通り抜ける音。
北風が網戸を吹き飛ばそうとしているか
のように揺らす音。
アナログの時計が1秒を刻む音。
鍋から湯気があがり、キッチンが温まって
きたところで長ねぎを切ってお米をといで、
冷蔵庫から味噌をだそうと思ったら
ドアの開く音がバッタッ―ン!と響き
「かあさんいるのーーー!?おかーさーん!
ただいまー!今日さー!クラスで」
と、私の静かな時間が突然終わりました。
「電気つけてよー!暗いから
まだ帰ってきてないのかと思ったじゃん!」
「キッチンだけつけていれば十分でしょ」
「これはさすがに暗いって~」
「お母さんはこれが好きなんだよね。
ばあちゃんちの土間でね、窓からはいって
くる夕陽で晩ご飯の支度をして、陽が落ちたら
たまにチカチカする元気のない1本の
蛍光灯をつけて続きをするの。強風で家の
前にある大きなくすの木の葉っぱが
ざわざわ音をたてて、どこからはいって
きているのかわからない隙間風は幽霊
みたいに怖い音をだすんだよ。薄暗いから
余計に不気味なんだけど、でもお鍋のなかで
じゃが芋やにんじんが勢いよくグツグツ
煮られている湯気が温かくて怖さが
ちょっとだけ消えるの。それで、味見をして
おいしかったらパッと幽霊はただの風の音に
もどってるんだよ」
ぷう助にこんな話をしてしまいました。
子供の頃、夕暮れ時に祖母の手伝いを
していた頃の思い出です。
ぷう助には、いつか私とすごしている今が
同じ思い出になるのかなと思いながら
一緒に豚汁をたべました。
毎日少しづつ103話までが無料に
なります。どうかストレスのないよう
お時間のあるときにお読み頂けると
嬉しいです。
最後の最後までお読み頂き
ありがとうございます。
笑っていられる日も
悲しい日にも限りが
あるのなら、すべてが
終わってしまう前に
悲しい日を消せるくらい
みんなの笑顔で心いっぱいに
なりますように。