『あいさつの意味』

 

 

学童へ私がお迎えに
行くようになってからは、
トイレが水浸しになる事が
なくなり、ゴールデン
ウイーク後にお迎えを
やめて、ぷう助は1人で
帰宅するようになり
私は楽になった。


夜、ぷう助と夕食を
食べながら学校での
出来事を聞いていると、
挨拶週間というものが
あり、毎朝上級生が門に
たち大きな声であいさつを
しているという。

そこからぷう助の
「なんであいさつをするの?」
という疑問がはじまった。

私には挨拶で思い出す人がいる。
若い頃、バイト先へ行く
途中の道に、ダンボールの
家を作ったホームレスの人が
何人か暮らしているところが
あった。

毎朝、その道を通ると70代
くらいで腰の曲がった
ホームレスのおじさんが、
通る人全員に笑顔で
「おはようございます!」
と挨拶を仕事にしているかの
ように元気よく言う。

返事が返ってこなくても
無視をされても、関係なく毎日
笑顔で挨拶を続けている。

当時の私はホームレスの人に
声をかけられるということに
驚いて、軽く頭を下げつつ
足早にその道を去った。

でも毎朝笑顔で挨拶をして
もらっているうちに、
いつのまにか私も笑顔で
挨拶をかえすようになり、
その道を通る人達も
挨拶をしていた。

挨拶をすることが
当たり前になり、たまに
おじさんが2日続けて
いないとすごく心配に
なったりして、会えた
時には
「心配しちゃいました」
と、挨拶以外の一声を
かけたりするように
なっていた年の瀬。

その年最後のバイトが終わり、
寒くて早くストーブの真正面に
座りたい気持ちで家路を急ぎ、
おじさんが暮らしている道を
通った時、おじさんは
寒くないのか、年越しの
食べ物があるのか気に
なってくる。
 

道を通り過ぎた後も

気になる気持ちが大きく

なってしまい、引き返して

ダンボールのおうちの前へ
行くと、出入り口のところから
光が漏れていて中にいる
ようだった。

寝ていたら起こしてしまうと
悪いから小声て

「おじさん、いますか?」

と聞いてみると、中からすぐ
顔をだしてくれて朝と同じ
笑顔で

「おー!ねえちゃんか!
 さむいぞー、ちょっとまってな」

といい、外に置いてあるダンボール
をあけて中からカップラーメンを
だし、ポットのお湯を注ごうと
した。

私は大切なご飯をいただくなんて
できないと思い慌てて止めた
けど、2個目も出してお湯を注ぐ。

気を使わせてしまい、声を
かけないほうがよかったと
後悔していると、割り箸を
渡されさらに

「卵おとすか?」

と聞かれた。
カップラーメンを
受け取りながらおじさんに
来た理由を話すと、
笑いながら積み上げられた
ダンボール6箱すべてを
見せてくれた。

その中身は全部食べ物で、
インスタントラーメンに
お節セット、缶詰、お菓子、
缶コーヒーにジュースも
あり、道を通る人が持って来て

くれて、お正月には
お雑煮も作って持って

来てくれるという。

そして、部屋の中に置いて
あるものも紹介してくれた。

布団は冬山の登山に
使う寝袋でとても温かく、
壁にはB5サイズの写真が
何枚も飾られている。

ランタンの明かりに
照らされている写真を
見るとモノクロのおじさんが
写っていて、それは
道を通っている人が
若い写真家で撮ってくれた
のだという。

「みんなたくさんもってきて
 くれるから俺は
 何も困らないんだよ。

 たまにボランティアが
 非常食もってきてくれる

 んだけど良い生活してる

 からいらねぇんだ」

そういいながら、生活の
豊かさを教えてくれる。

私は、挨拶の力って
こんなに凄いんだと知り、
そんな私もおじさんが
心配になり声をかけた1人で、
逆にカップラーメンまで
ごちそうになってしまった。

一緒にラーメンをすすり
ながら、おじさんの挨拶は
元気がでて嬉しいという
話になると

「毎朝、暗い顔して
 会社に行く人とか、
 うつむいてふらふらっと
 歩いている人がいるから
 声かけちゃうんだよ」

という。

私はまたおじさんと
年明けに会うことを
約束して、その帰り道
『挨拶』という
シンプルなコミュニ
ケーションがこんなにも
人との関係を変える力が
あるのかということに

感動した。

挨拶をする関係に
なると、助けの手を
差し伸べやすくなると
いうことでもある。

まったくの他人が困って
いそうな時に声をかけるのは
勇気がいるし、余計な
お世話になってしまう
かもしれないとか、
無視されたら自分が
傷つくから、やっぱり
声をかけないほうが
いいかもと思ってしまう
ことがある。

だけど、たった10文字
未満の言葉を使っていれば、
助けてもらえる事も増え、
思いやりの言葉もかけ
やすくなる。

おじさんは見返りなんて
関係なく、みんなに元気を
毎日あげていた。

だから、もらっていた私も
おじさんが大切な人になり、
困っていることがあれば
なにかしてあげたいと
思う。

ぷう助には、当時
みんなに元気をいっぱい
くれたおじさんの話をした。

おじさんは私が出会ってから
4年後、夜に倒れ病院へ
はこばれてから数日後に
亡くなったという話を、
毎朝、同じ道を通る人
から教えてもらった。

おじさんが挨拶をして
くれたおかげで、おじさんの
最後を教えてくれた人とも、
同じ道を通るというだけの
他人だったのに顔見知りとなる。

挨拶はとても簡単なのに
いいことだらけの
コミュニケーション。

ぷう助にも覚えておいて
欲しいなと思った。

 

 

 

☆過去のお話になります。

 

☆個人の特定につながらないよう

一部の表現をかえています。

 

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思い、担当の方に辞退を

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明日に続きます。

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【お気に入りの絵本です】

 

保育園や幼稚園でもみかける

絵本です。

電車が大好きというわけでは

なくても、男女関係なく

みんなが楽しく読めます。

 

蒸気機関車で出発すると、途中で

新幹線や貨物列車を見つけどんどん

連結していき、線路が切れていれば

つないで、夢のような電車の旅をします。

 

この絵本のすごい所は、色々な

電車が登場して連結していく

なかで、連結した電車は

それぞれの特徴的な役割を

はたしてくれるので、電車好きな

男の子の心にもしっかり届きます。

 

他にもシリーズがあり、夢の

ような旅となっているので、

この絵本から出発することを

お勧めします。

 

 

 

 

最後の最後までお読み頂き

ありがとうございます。

パートナーのことで

悩んでいる人に、

心に寄り添う言葉が

届く明日になりますように。

 

病気でベッドの上に

いる人の気持ちが

全部叶う明日になりますように。