貞彦469話  『就学時検診』

 

 

11月。
予想はしていたけど
各所での手続きは
かなりの時間を使い、
手続きをした後も
いきなり高額な税金の
支払い用紙が届いたり、
国民保険の支払い額が

跳ね上がっていたりなど、

役所へ聞くために何回も

通った。

複雑な状態でくらして
いたものをみんなと同じ
ようにすると、当たり前に
あるシステムに何かが
ひっかかってしまい、
こういった請求がきてしまう
ようで、窓口で正しい金額を
だしてもらい一安心する。

ぷう助の戸籍も移す
ことができて1ヶ月間、
心落ち着く暇がなかった。

財産分与の件では、
四条先生からのメールで
詳細な金額を郵送で送った

という連絡がきていたけど、
返答しなくてはいけない
ものではないから、
手紙を開封するのは
後回しにする。

そんな疲れた毎日を
送っていた時、
保育園へ迎えにいった
ぷう助の機嫌がものすごく
悪かった。

久しぶりにこんなぷう助の
顔を見て、帰りながら
何がおきたのかを聞こうと
すると、ぷう助から
口をひらく。


「お母さんどうして僕の
 いっていることをちゃんと
 きかないの!!

 お母さんのせいで
 ぼくはみんなと同じ
 学校に行けなく
 なっちゃったんだよ!」


自転車をこぎながら
訴えをきき自宅に
着いた頃には、ぷう助が
怒りながら泣いていた。

私は意味がわからず、
そのまま泣いている
ぷう助の手をつなぎ
家へ入ってから話の
続きが始まる。


「ぷう助はここに住んで
 いるからみんなと同じ
 小学校に入学するんだよ」

「だから入れなくなっち
 ゃったんだって!
 
 お母さんに何回も
 いっていたのにちゃんと
 聞いてくれなかったじゃん」

「えっ!?
 なんの話?
 学校の事?」

「そーだよ、みんなもう
 学校にいったんだよ!」


そういわれ思い出したのは
就学時検診。

ぷう助がいう通り、たしかに

離婚が成立した頃、ぷう助の

お友達がお母さんと学校へ

行ってきたという話を
聞いた。

その話を聞いて、就学時検診の
知らせが順に届くんだなと
思い込み、ぷう助にも
「すぐ届くから待ってて」
と返事をしてからもう1ヶ月。

離婚の手続きですっかり
忘れていた。

ぷう助には謝り、明日
役所へ就学時検診の
お知らせが届いていない
事を伝えに行く約束をしたけど、

ぷう助は納得しないまま、

むくれた顔で夕食を食べ

お風呂に入り、すぐ眠った。


翌日、約束通りパートへ

行く前に役所へ寄って、

窓口を担当している職員さん
に話してみると

「住民票のある人には全員
 送っているので。
 もうそちらの小学校は
 就学時検診が終わってるから」

そういわれ、私たちは

先月まで住民票を持っていな

かったけど、引っ越し
てきた時からそういった
手続きはしていて、
行政の支援や保育料もこの
地域に住んでいる者として
生活しているという説明を
したけれど、就学時検診は
住民票が全てとの事だった。

ここで話が終わってしまい、
どうすればいいのかを
聞かなくてはと思っていると、
窓口の奥から30代後半
くらいの職員さんがきて、
私の話しをした職員さんに
事情を聞くとすぐ対応を
変わってくれた。


「申し訳ないです。情報を
 取りこぼしてしまったようです。
 
 ご住所の小学校ではすでに
 就学時検診が終わってしまい、
 大変申し訳ないのですが
 ここから離れている
 ●●小学校がまだやって
 いるので、そちらに
 いって受けてきてくださる
 ことは可能でしょうか?
 
 実はそちらも明日まで
 なんですが…」


●●小学校はうちから
遠く、バス停もはなれていて
自転車ならなんとか行ける
けど、雨に降られたら
その中でぷう助を連れて
いくとなると、タクシーで

行くしかない。

明日に行かなくては
いけないというのも、急
すぎて返答に悩んだけど
行く事にした。

私もぷう助の話を
適当に聞いて返事を
していたし、これを
役所にしっかり対応して
下さい!というのも
無理な話。

特例のような状態で
長い間暮らしていた
のだから、こういうことは
自分でも気をつけないと
いけなかった。


次の日、ぷう助はご機嫌で
保育園を早退して、
通ったことのない道や
小学校に大喜びで無事に
終わり私は疲れてしまって、
自転車をアパートに置いて
から、夕食はファミレスへ
行く事にした。

ぷう助は良い事だらけ

の1日でずっと笑って
いて、私もそんな顔を
みていると疲れはとれ
ないけどほっとする。

いつもは外でお酒を
飲むなんていうことは
絶対にしないけど、飲み
たくなってしまい
100円のグラスワインを
たのみぷう助と乾杯
した。

ワインはグラスの半分
までしか飲まないと
決めて、飲みながら
ぷう助がポテトフライや
ハンバーグを食べている
姿を眺めていると
『幸せだな…』と思う。

そう思えるところまで
やっときていた。

家へ帰ったら、四条先生

から届いていた封筒に

入っている財産分与の

金額を確認して、入金され

ていたら大学病院へ
寄付する下調べを

しようと思う。

 

 

 

 

☆まだスマホがなく携帯電話が

主流の時のお話です。

 

☆個人の特定につながらないよう

一部の表現をかえています。

 

☆メッセージをたくさんいただき

ありがとうございます。

お返事がとてもおそくなって

しまいすみません。

あたたかいお言葉に感謝で

いっぱいです。

本当にありがとうございます。

 

 

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【お気に入りの紹介です】

ブログでご紹介している

『ねこはるすばん』を描いている

町田尚子さんの絵本です。

 

ずっとネコヅメのよるをご紹介

したかったのですが、楽天で

確認すると、いつ入荷されるか

わからず、ご紹介できる日を

待っていました。

 

道を歩いていると、たまに

今日はよく猫を見かけるな…

という日があるのですが、

この絵本を読んだ時、

道を歩く猫たちのひみつを

知ったような気持ちになり

ました。

ねこたちが大好きな、ある夜の

お話です。

 

最後の最後までお読み頂き

ありがとうございます。

不安と恐怖の中でいくつもの

決断をして、向かい風でも

生きることを諦めないで

いる人に幸せな明日が

きますように。

絶対に来ますように。