貞彦455話 『燃えた理由』
報告を受けた人たちが
入れ替わりながら
ベランダへ出て上を
見上げては
『あれか』
『こりゃ酷いな』
といいながら、写真を
撮ったり無線で連絡を
いれたりしている。
そして、私も消防の人に
ベランダへ来て欲しいと
いわれ説明を受けた。
「アパートの屋根の近くに
雨どいがありますよね?」
「はい」
「あの横になっている雨どいでは
なく、縦に下へ伸びている
下へ雨水を排出する
ほうの雨どいが少し斜めに
ぐらついているんですが、
その雨どいを支えている
金具のような部分をみると
緩んでいてそこが
黒く焦げています。
どうしかというと、
おそらくこの雑誌が
そこへ挟み込まれて
いたからです。
管理会社なのか誰かが、
劣化などで金具が緩み
雨どいがぐらついているのを
修理するために、金具と
雨どいの隙間にこの雑誌を挟み、
雨どいがぐらつかないように
したんだと思います」
「ここは建て替え予定で
修理をしない方針みたい
なので、そういった補修の
しかたはなんとなく想像
できるのですが、なぜそれが
燃えたのですか」
「そっちの右下を見てください。
タバコの吸い殻が下に
いくつも落ちています。
多分、向かいの建物の
3階に住んでいる人が窓から
吸ったタバコを投げ捨てて
いるんだと思います。
そのタバコがたまたま
こちらへ投げられ雑誌へ
のっかり燃え落ちてベランダに
というような感じでは
ないかと」
たしかにベランダは、タバコ
を投げたら簡単に届くくらい
近い位置にお隣のアパートが
ある。
消防の人は、燃えた雑誌から
わずかについていたタバコの
燃えカスも見つけ、さらに
別の雨どいと金具の隙間も
丸めた軍手を挟み補修
されているのを発見したという。
今までベランダにタバコの
吸い殻が落ちていたことは
なかったけど、ベランダの
周囲をみると、たしかに
落ちている。
この件は、消防の人が
向かいのアパートを
管理している人に電話を
して、住人にタバコの
ポイ捨てを注意するよう
即し、私が住んでいる
アパートの管理をしている
不動産にも、火災に繋がる
ようなものを使用しない
という指導をするという
ということで、無事に
解決することができた。
沢山の警察官や消防、
捜査をする人達が
帰り支度をしながら
『旦那さんじゃなくて
よかった』
『はっきりわかって
よかったよ、わからなかった
ら今夜怖いもんな』
『この結果でご安心して
いただけましたでしょうか?
もし不安なことがあったら、
なんでもいいので連絡
ください』
と、気遣う言葉をかけて
くださり、本当にありがた
かったけど複雑な心境。
私が貞彦さんではないと
思っていても、通報登録を
していると何かあった時に、
警察や消防の人たちは
貞彦さんを念頭におく。
例え通報登録をして
いなくても、放火の可能性が
あったから大事になって
しまったのかもしれないけど、
登録をしている私だったから
さらに事が大きくなって
しまったのだと思う。
けれど、警察官や消防の
人が丁寧に細かく対応
してくれて、実際に
何かあった時はこうやって
来てくれるということも
わかり、ありがたくも
あった。
ただ警察官や消防、近所の人
にも心配をかけ、私も疲れた
1日になってしまい、タバコを
窓から捨てるのは本当に
辞めて欲しいと思った日だった。
☆まだスマホがなく携帯電話が主流の時の
お話です。
現在は離婚して平穏に暮らしています。
☆個人の特定につながらないよう
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【お気に入りの紹介です】
ブログでご紹介している
『ねこはるすばん』を描いている
町田尚子さんの絵本です。
ずっとネコヅメのよるをご紹介
したかったのですが、楽天で
確認すると、いつ入荷されるか
わからず、ご紹介できる日を
待っていました。
道を歩いていると、たまに
今日はよく猫を見かけるな…
という日があるのですが、
この絵本を読んだ時、
道を歩く猫たちのひみつを
知ったような気持ちになり
ました。
ねこたちが大好きな、ある夜の
お話です。
最後の最後までお読み頂き
ありがとうございます。
今日の歩みが未来の不安を
1つずつ消してくれますように。