貞彦309話  『調査官調査が始まる』

 

 

私は病院へいくこともなく、
とことん寝ただけで体調は
元に戻り、いつもの生活を
おくりながら調停を迎えた。

初めて調査官に会う日
だから、いつもとは違う

気持ちではいるけど、
今回は調査官が直接ぷう助に
何かを尋ねることはせず、

そだけは安心しながら

裁判所の門を通る。

気が付くと、いつの間にか
控室も病院の待合室程度の
感覚で座っていられるように
なり、慣れはすごいなと

思っていたら、調停委員が来て

最初に呼ばれた。

個室へ入り挨拶をして、
調停員からこの後の
流れを聞くと、まず最初に
貞彦さんが調査官からの
質問に答えてから、次に
私の番ということで、
私と四条先生はすぐ
控室へまた戻る。

その後、四条先生と
当たり障りのない会話を
しながら50分がすぎた
ところで順番がきた。

四条先生の後ろに続いて
歩き、個室へ一歩足を
踏み入れるとすぐ右側に、
白髪と黒髪が半分くらいで
50歳前後の男性が座っていて、
私はその真横に座る。

皆が座り、会話をする準備が
整ったところで

「こちらが調査官の井波さんです」

と、調停員から調査官を紹介
され、誰よりも1番近い距離で
調査官を見る私が1番初めに
思ってしまったのは、
「本当にこの人が子供の本心を
 知ることができるプロなのだ
 ろうか?」
だった。

眼鏡のフレームが歪んでいる
のかはわからないけど、
お笑い芸人がスリッパで
頭を叩かれてずれる眼鏡
みたいというのはやや大げさ
な表現だけど、左右非対称な
眼鏡のかけ方。

スーツの肩には白髪の
ウェーブした抜け毛が
5、6本ついていて
爪も伸びている。

ただ、人は見た目だけが
100%ではなく、たまたま

仕事が忙しくてシャワーを

浴びる事や爪を切る時間が

なかったということもあるし、

家族が急病だったのかも

しれないから決めつける

ことは出来ない。

そう思い直しながら、
始まった井波調査官の
質問に答える。


「ぷう助君はいま誰と暮らして
 誰が面倒をみているんですか?」

「私と2人暮らしで私が子育てを
 しています」

「保育園ではどんな様子ですか?」

「普通に楽しく友達と遊んでいます」

「どんな遊び?」

「仮面ライダーごっこやかくれんぼ
 です」

「お友達とのトラブルは?」

「そういった話は聞いていません。
 送り迎えの時もお友達と
 仲良く遊んでいます」

「ぷう助君はお父さんの
 ことをなんていって
 いるの?」

「何もいいません。
 嫌な思いがたくさんあるので」

「えっ、だってそれは何も
 言わないなんてことはない
 でしょ、それなりにお父さんと
 遊んでいるんだし」

「いいえ、遊んでいま」

「いやー、だから何かは
 いってるでしょってこと!」

「いいえ、本当にな」

「いやさー、だーかーらー、
 何か一言でもいってるでしょ
 ってことをききたいの!」


そうって鼻で笑う。
でも、私は今更こういう

やり取りをしたところで驚かなく
なっていた。

調停員だって想像していた
人とはまったく違っていたし、
質問の後半は私がまだ話を
しているのに最後まで
聞くこともせず、自分がいって
欲しい言葉を求める話し方。

なんだか聞き覚えのある
話し方だなと思うと、
児童相談所の金山という
人物を思い出す。

似ている話し方で返答する

のが嫌になるけど、こういった
調査官に巡り合ってしまった

ことにたいする落ち込みは

小さいものだった。

何を言ったところで
調査官をかえてもらうことは
できないのだから、
仕方なく受け入れる。

そして、何よりも
二宮先生の意見書が
ぷう助を守ってくれた
ことに感謝しきれない
ほど感謝した。
 

 

☆まだスマホがなく携帯電話が主流の時の

お話です。

現在は離婚して平穏に暮らしています。

 

☆個人の特定につながらないよう

一部の表現をかえています。

 

 

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最後の最後まで読んで頂き

ありがとうございます。

 

悲しい気持ちが少しでも

安らぐ明日になりますように。

大切なことを忘れないで

時間を大切にできる明日に

なりますように。