貞彦292話  『4人の医師が同じ診断』

 

 

玄関で靴を履き
ぷう助を抱いて待って
いると、救急車は電話を
してから8分で来てく
れて、担架へぷう助を
乗せる。

救急隊員が状態を確認して

くれている間に、もう1人の
隊員が酸素マスクを準備。

大学病院には連絡済み
であることや、昨日の事も
伝え救急車はすぐに
発車した。

私は救急隊の対応を
見て、ほっとするという
表現はなにか違うような
気がするけど、そんな
気持ちになる。

ぷう助の苦しんでいる
姿は私しか知らなくて、
風邪にしてはおかしい
と思っているけど、
知識がないぶん自信も
ないなか、やっと
ぷう助の苦しい状態を
知ってもらえて私自身が
救われたように感じた。

救急隊員はストレッチャー
で酸素マスクをつけ
ぐったりしているぷう助を
励ましてくれたり、
私にも話かけてくれる。

そんななか、顔色が

もどってきたぷう助が

酸素マスクを嫌がり

外そうとした。

私と隊員はぷう助を
説得しながらマスクを
外さないように口元へ
押さえたりしたけど、
顔に付くマスクの
感触や酸素が気持ち悪い
といい全力で首をふり
嫌がる。

なんとか酸素マスクを
つけてもらおうと必死に
やりとりをしたものの、
最後はそんなやり取りが
出来るくらいぷう助の
呼吸は回復していて
救急車が病院へ着いた。

私は、また昨日の
ように
「で、何で来たの?」
といわれるんだろうなと
思ったけど、救急隊が
最初の苦しい状態を
詳細に伝えてくれて、
診断が変わるかも
しれないという気持ちで
30代くらいの医師が
聴診器をあてている
姿をじっとみつめる。


医師はそんな私の

ほうを見て


「悪い音もきこえないし
 風邪の症状でしょう。
 明日かかりつけ医の
 とところへ行ってみて
 ください」

「えっ、昨日2回も
 救急にきてほとんど
 眠れず、日中は苦しく
 なりませんでしたが、
 さっきも苦しくて
 酸素マスクをつけて
 いたんですけど」

「子供は咳き込むと
 一時的に酸素の入りが
 悪くなることがあり
 ますが、すぐ元に
 戻るものなので」

「でも、食事も食べられ
 なくなってしまい
 水分をなんとか飲んで
 いる状態なんです」

「水分がとれていれば
 あとは、ゼリーとか
 食べられそうなものを
 あげてください」

 「えっ…、でも」

「こういうことは子供に
 あることなので、
 救急車は利用しないで
 ほしいです」

「……すみませんでした」


診察が終わる。
これで、かかりつけ医
も含めて4人の医師が
風邪だというのだから、
次にぷう助が苦しく
なっても病院へ行くのは
やめようと思う。

ぷう助は歩く力がなく、
靴はもってきたものの
抱っこをして外へでると、
タクシーは1台も待機して
いなくて、そのまま大通り
まで歩いたけど、電車の
事故の影響なのか
たまに通るタクシーにも
お客さんが乗っていた。

しかたなく、ぷう助を
おんぶにかえて歩く。

歩けば家まで1時間以上
かかり、途中で空車
のタクシーが通って
くれたらいいなと期待し
ながら道路を見ていたけど、
車すら通らなくなった。

ぷう助はうとうと眠って
はすぐ起きて、そのたびに
苦しくないか聞きながら、
前にもこんなことが

あったなと思い出す。

あの時は、山で桜をみた
帰りに貞彦さんが怒って、
私とぷう助は山の中に
おいていかれてしまい、
日が落ちる前に山を

下りなくては危険だったから
ぷう助をおんぶして

歩いた。

あの時と今は、何が
違うのだろうかと
考える。

タクシーに乗れなかった
から家まで歩いている
けど、もしタクシーに
乗れていたら、食費は
さらになくなり生活が
できなくなる。

それでも私は離婚を決めた
事を後悔していないのか
と思っている時、ちょうど
オレンジ色の街灯が続いて
いる大きな橋を渡りはじめる。

人も車もいない
街頭は不気味で、
橋を渡り終わった
所に死神が立って
いるような気がする、
なんて冗談交じりに
思った。

だけど、例え死神がいたと
しても私はぷう助と1秒でも
長く生きられる方法を
選ぶだけだから、
死神だろうと貞彦さん
だろうと相手が何者
でも関係なくて、そう

思うと早く家に帰ろうと

いう力が湧いて来たし、

後悔なんて無いと

はっきりわかる。

 

そして、何とか2時間は

かからずにアパートへ着く。

玄関にぷう助をおろし、

私は安堵と疲労で

息を深く吐くと

「お母さん、寝てから
 もずっと手をにぎって
 いて」

「いいよ」

「ぼくが寝てもどこかに
 いかないでね」

「うん、約束する」


ぷう助が小さな声で
いい、一緒に布団へいって

毛布の中で手を繋ぐ。

 

 

☆まだスマホがなく携帯電話が主流の時の

お話です。

現在は離婚して平穏に暮らしています。

 

☆個人の特定につながらないよう

一部の表現をかえています。

 

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モラハラ夫と過ごしてる

人が、連休を無事に

乗り越えられますように。