もう、「また、明日ね」は、やってこない。
人生の中で初めて遭遇したこと。
最期のお別れは雨の日だった。
多感な17歳での出来事は、40を過ぎた今でも時折思い出す。
特に、雨の日には。
お別れの日は雨だった。
誰かが「涙雨だね」と言っていたのを覚えてる。
前髪がところどころ焦げていて、
「どうしたの?」って聞いたら笑ってはぐらかされた。
自分で始末をつけていたと知ったのは、それからあとの話。
父の最期を看取り、仕事に没頭した20代。
結婚と家庭生活で心を壊した30代前半。
克服しつつも、もがいていた30代後半。
そして、今。
一番ひどい時には思い出しもしなかっただろうけれど、
そうじゃないときは時々、その人を想いだす。
私は、生きるよ。
生きることを選ぶよ。
「また、明日ね」がない現実も知っているから、
「また、いつかね」はできるだけ作らない。
元気になった私は、会いたい人には、できるだけ会いに行く。
土地には、行かなくても後悔はそれほどでもないと思う。
人には、会いに行かなかったら後悔すると思う。
でも、相手には求めないんだ。
求めたくなるけど、求めないんだ。
会いに行くよと言って、会ってくれる人に、会いに行く。
こっちに来ても、会えないのはそれぞれに、その時々の理由があるから。
社交辞令のやんわりしたお断りかもしれない。
だから、会いに行くよと言って、会ってくれる人に、会いに行く。
自分が動くのであれば、自分の理由で動けるから。
それでも、
「いつかね」
そう言われた時に、時々心の中に雨が降る。
泣きたくなるのは、きっと、雨のせい。






