ミャンマーの国軍によるクーデターは勿論批判に値し、ミャンマー社会に打撃を与えているのは間違いない。しかし、既に起こってしまった現在、正義を叫ぶのではなく、まず内戦激化回避、次に安定と経済発展再開を目的とし、現実的な手段を考えるべきだ。

         

以上踏まえた私見は以下。

最も回避すべきはNUGの武装闘争による内戦の激化で、国軍を悪NUG正義と煽るのは事態を悪化させ絶対に避けるべきだ。国軍全否定も民主派全否定も非現実的だ。どのみちNUG勝利に強い利害を持った周辺諸国がない中で、NUGが国軍を武力で打倒するのは非現実的で、仮に打倒したとして国軍の重しが外れたら内部抗争が始まり別の内戦が長期化し、状況は悪化する。戦術的にも非暴力で国際社会に支援を訴える方が効果的だ。国軍がNLDを解体しようとするのはやり過ぎであり国民は絶対について来ず非現実的だ。お互いゼロ百を主張しては永遠に問題は解決しない。

 

自分は武力闘争を断固抑える一方、早期の選挙実施、特にミャンマーの選挙制度を比例代表制として、選挙を実施するだけでよいと思う。3/4の民主主義は当面維持し、国軍は当面一定の勢力を保つことが現実的だ。民主主義の歴史の浅い多元社会で小選挙区制では無理が来るのではないか?国軍側も元々民主化自体に反対ではなく、総選挙も約束している。選挙を公正に実施すれば、国際社会から信任が得られ、経済活動は再活性化し、国民の不満は和らぐ。現実通り国軍派が3割程の議席を得れば、少数派の国軍派も安心する。NLDもスー・チー氏個人独裁を自省する機運が生じ、若手が台頭する事は長期的に望ましい。民族問題も抱える中、初期民主社会で国軍による秩序維持は寧ろ不可欠であり、民主化は時間をかけて段階的に進める他ない。

 

欧米の独善を断固拒否し、ASEAN、日本、中国が現実路線を進めるべきだ。社会状況を考慮しない欧米によるナイーブな民主主義の押し付けと反対派の一方的正当化は、リビアやシリアのような結果にしかならない。エジプト、タイのクーデター程何故騒がれないか?そもそも問題の原因を作った英国だ。国軍が欧米を信用しないのも当然だ。

 

本記事の執筆の動機は、正義のNUGが悪の国軍を武力で打倒すべしという過度に単純化された大多数の論調への問題提起にある。目的は正義を主張する事でなく、現実を客観的機械的に把握した上で、内戦激化回避、社会の安定と成長にあり、現実的効果的な手段を考えるべきだ。論理的は批判は歓迎する。

 

更に欧米メディアへの追従ではなく自分の頭で考えた見解を提示するのが寧ろ我々の世界に対する責任と問題提起したい。民主主義絶は絶対善でなく手段の一つに過ぎず秩序はその前提であり、例えば反温暖化は貧者を苦しめ絶対善等と言えず、欧米メディアの主張は主観的な一見解にすぎない。

 

アルジャジーラはいう。

 

One opinion, and the other opinion.

一つの意見があれば、もう一つの意見がある。