"Yes, we can."とか、"This is your victory"とかより今回の勝利演説の方が全然いいと思った。
http://sankei.jp.msn.com/world/news/121107/amr12110721220018-n1.htm
現職らしく、別に勝利に浮かれてなくて、むしろ、相手を称え、もはや選挙が終わり、今後は団結し、共に、今後取り組まねばならない課題が山積していることを、指摘しいて、今の勝利より、今後の仕事への覚悟を示していて、冷静でとても良いと思う。
にしても、まずオバマで改めて思ったのが、とても若くて上院議員としても大した経験も積んでないのに、よくそれなりに、まともな政策を4年間つづけ、米国に安定と休息を与える、という必要なことをやってきたな、ということ。
演説でいっている、
‐最悪の経済状態を引き継いで、それなりに回復させてきている。
‐イラクから撤退し、ビンラディンを殺害している。
など、4年前課題だらけだった米国に対して、それなりの安定した状況を残している。経済が悪い状況の中での姿勢だから、それだけでも、ダメだという評価を受けやすく、リーマン後の大統領が、二期続けるのは、ただでさえ難しいと思うが、なんだかんだ、それなりに安定している。これだけ見ても、国民からApprovalがでるのも、まあ妥当な判断という感じがする。
一方、この人4年間に何やったのか、とふと振り返ってみると、あまり個人的に印象に残ることはなく、あるのは、前回の選挙戦で熱狂を巻き起こしたこと。実際Wikiで読んでみても、前回の選挙のことは書いてあるけど、大統領として何をしたか、ということが不思議とほとんど記述がない。オバマケアについては、長らくアメリカの課題だったので、偉大な成果だと思うが、記憶に残るのはそのぐらい。ただ、逆に、大きくしくじった、という決断もあまり思い浮かばず、一言でいうと、大統領としては、あまり存在感がない。
周囲に抗して強硬な決断を行う、という意志やそれを裏付ける経験は、実際あまりない気がする、だからあまり目立たないのだろう。この意味では、ジョージ・W・ブッシュと好対照で、彼は決断するにしても、目立ったし論争となり、また、それゆえに敵も多かった。クリントンもそういうところはある。(ちなみに、今回の大統領選での、クリントンの応援演説は圧巻だった。やっぱり実務能力として、クリントンは優れていて、頭が切れるのだろうな、というのを感じだ。)が、実は、目立つ政治家がいい政治家、とも限らないかもしれず、オバマは、指導者としてはそれほど目立たないが、敵をつくらず、全体としての冷静さとバランス感覚(ほんとに感覚)はあるように思う。周囲に有能な人材を配置すれば、そのバランス感覚から、無難に政権を運営できる、ということか。そういう意味で、ワシントンとは似ているのかもしれない。
経済については、ガイトナーの方がいろいろ出てきている感じだし、そもそも大まかな方向性は、ブッシュ政権の末期で決定されており、あとはただそれを時間をかけて粘り強く続ければよいので、特に指導力は必要としない。減税か、財政支出か、というのは結構重要な経済論争だが、ここでもオバマ自身が前面に立っている、という感じはしない。
外交についても、ともかく静かにしていればよい、という方針で、一方、ヒラリー・クリントンががんばって世界中ぐるぐる回っているのでまかしておけばよい。アラブの春で、ムバラク政権の崩壊とか、ほんとにそれでいいんですかアメリカは、という感じだが、ともかくほっといている感じだ。イランについても強硬姿勢だが、ただ、オバマが前面に立ってそれをやっている、という感じは全然しない。よって残りの部分は、社会政策で、実際彼もこの分野の方が得意な感じがする。で、オバマケアとなる。
が、一方、他の人に操られているという感じもしない。ハリケーンサンディーの対応で評価を上げたそうだが、救援活動でバリバリ実務能力を発揮する、というのもあまり想像できない。なんとなく、演説が仕事の人、という感じがする。(まあ、大統領とは、国民への説明が何よりの仕事、というのはそうだと思うが。)
今、ちょっとネットで調べてみたが、ふつう有名人にはよくある人物評や、能力への評価、性格、とかほとんど出てこない。
正直、オバマというのは、つかみどころがなく、不思議な人、というのが印象だ。
一方、いわゆる白人は、65%ぐらいが、ロムニー支持で、それ以外は、黒人は9割、アジア系、ラチーノなどで、6~7割が、オバマ支持で、今アメリカでは白人の人口比率が減っていてたぶん今60%ぐらいだと思うが、今後も減ってくるだろうから、白人じゃない、というのは、人物的にそつがなければ、選挙にはプラスで、今後白人じゃない大統領がでてくる、ということも十分考えられる。オバマが大統領選に二回も勝利した、というのは、人物や能力以前に、そういうことなのかもしれない。
最後に、大統領選、というのは、ほんとに僅差で決まるんだ、というのを改めて痛感。今回も全国での支持率の差はせいぜい2%、それが、選挙人で200対300ぐらいの違いになる。特に、Swing Stateなど、ほんとに2%以内で勝者が決まってくる。
あと、Real Clear Politicsのサイトをよく見ていたが、ブッシュ対ゴア以降では、共和党州は共和党のままで、例えばテキサスなどずっと共和党支持で、ニューヨーク、カルフォルニアなどは、ずっと民主党支持で、ホントに勝負は、フロリダ、オハイオなど、Swing Stateで決まってくる。また、各州の拡大図をみても面白いのが、いわゆる都市部ではほぼ民主党が勝っていて、田舎では、共和党が勝っている。傾向として、都市部の方が、いろんな人種がいて、リベラルになりやすく、田舎は保守的、ということなのだろうと思う。で、ここ数年あまり変わっていないが、白人の人口比率が減っていることを考えると、徐々に民主党に有利になる傾向となるのだろう、と思う。
今後共和党は選挙に勝てるのだろうか。