先日、オバマがウエストポイントで演説し、アフガニスタンへの三万人の増派を決定した。
英語の勉強がてらその演説を読んでみたが、まずその要旨から。
http://www.huffingtonpost.com/2009/12/01/obama-afghanistan-speech-text-excerpts_n_376088.html
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・アメリカがアフガニスタンで戦う理由があり、それに対する国民と国際社会の支持がある。
アメリカは911テロで、国土に攻撃を受け、3000の犠牲者を出した。アルカイダ、またある海田を匿うタリバンに対する報復は、議会で圧倒的多数で可決され、同盟国にも支持されたものだった。
・前政権が、イラクに集中したせいで、アフガニスタンの対応がおろそかになったなり、現政権が政策を転換したことの効果を説明。
その後イラクを攻撃し、軍・外交あらゆるリソースはそちらに過剰に割かれ、さすがにイラクは落ち着きつつあるが、その間に、タリバンは、勢力を回復してきた。現政権で増派したことにより、アルカイダ幹部を殺害し、一応アフガニスタン大統領選挙も行うことができた。
・しかしアフガニスタンの状況が悪化している。
・30000人増派し、一方18ヶ月後に撤退を開始することを決定した。
最高司令官として、軍の任務について、目的が明瞭で、それが戦う価値のあるものである、とうことを念頭において、何度も確認したのち決定を下した。
・これは苦渋の決断だった。
自分は、米軍が行動するのは慎重であるべきであり、イラク戦争にも反対してきた。またイラク戦争は、論争を呼び、国内の分裂招いてきた。
・それ以上にこの決断が、諸君ら(ウエストポイントの生徒)に苦難を強いることであると理解している。
自分は、アフガニスタンで戦死した兵士の家族への手紙にサインし、負傷者を見舞ってきた。もし、アフガニスタンが平和になり、国土が安全なら、即座に撤収する決断を下したい。
・しかし、アフガニスタンとパキスタンは危険な状態にあり、そこは米本土へのテロリストの温床となっている。
・だが、これはアメリカだけの戦争ではなく、同盟国も深く関与している。
・ゴールは、アフガニスタン、パキスタンにいるアルカイダの分裂、解体、打倒(to disrupt, dismantle, and defeat)である。 この為の目的は、テロリストの安全な天国を否定し、タリバン優勢の勢いを逆転させ、アフガン政府転覆の可能性を捨てさせ、アフガニスタン政府による自衛能力の強化することにある。
・これらの目的を達成するために3つの方法をとる。
1)この18か月に、タリバンの勢いを挫折させ、アフガニスタン自身の能力を強化する。
三万人の増派により、①暴動( insurgency)に対応し、②人口集積地を防衛し、③アフガニスタン軍を強化し、責任委譲(transition )する。
2)パートナー、国連(連合軍)と共に、民生戦略を推進する。
カルザイは、今回の就任演説で新しい方向性を示した。アメリカは、腐敗と戦う、大臣、知事、地方のリーダを支援する。また、農業など民生支援を重要視する。アフガン国民に対しては、アメリカは、占領の意図はなく、その戦争と苦難の時期を終割らせようとしている。
3)パキスタンとの強力な協力の下の行う。
パキスタンは、以前は、タリバン打倒に消極的だったが、今は、タリバンの攻撃を受け、今やタリバンにより最も安全が脅かされている国となっており、タリバンへの攻撃行動も行っている。パキスタン国民は、紛争が終了したのちもアメリカは、その安全と繁栄に対する最も力強い支援者であることを忘れないでもらいたい。
・この方針に対する懸念に答えたい。
1)アフガニスタンは、第二のベトナムになるのではないか。
ベトナムと異なり、各国の支援を受けており、ベトナムと異なり、広範な基盤からの攻撃を受けておらず、ベトナムと異なり、アメリカはアフガニスタンからの攻撃を受けており、今も、過激派がアメリカ国境に点在しているという危険がある。
2)現状のままでいいのではないか。
現状維持は、ゆっくりとした悪化であり、結局コストは増大し、駐留は長引く。なぜなら、アフガニスタン軍を訓練する条件もまだ整っていないからだ。
3)責任委譲のタイムテーブルを設定すべきではない。
より劇的な戦争のエスカレーションを求める人もいるが、大統領として、合理的なコストで達成できるものを超えた目的を設定することはできない。さらに、アフガニスタン政府に米国に依存させないようにしなければならない。
過剰な目的を求めるべきではない。アイゼンハワーは国土の防衛についてこう言う。
「各目的は広範な考慮のもと重みづけられねばならない、つまり各国家計画におけるバランスを維持する必要がある。」
ここ数年バランスを失い、安全と経済の接続の評価に失敗してきた。経済の世界競争が熾烈化する中で戦争の費用を無視する余裕はない。
・アメリカの繁栄がすべての基礎であり、これゆえに、アフガンから容易に撤退できないのだ。
・これらは容易ではなく、すぐに解決できないだろう。しかし、これは、例戦後の混沌とした世界におけるアメリカのリーダシップに対する試練である。
・軍事力をすばしこく正確に使い、イエメンであれソマリアであれ、どこであろうとアルカイダへの圧力を緩めない。
・しかし、軍事力だけには頼らない。
国土防衛に注力する。また、核兵器がテロリストの手に渡らないようにする。また、外交を重視する。イスラム世界との相互理解を深める。
・アメリカの価値観の力を再確認せねばならない。
試練の性質が変わろうとも、信じる者は変わらない。アメリカの価値を国内で再確認することが重要だ。また、アメリカは、時に失敗もあったが、誰よりも世界平和に貢献してきた。アメリカは、どこの国の征服を欲したことはなく、ただ、子孫の未来の為に戦ってきたのだ。アメリカは、ルーズベルトの時代ほど、若く純粋無垢ではないかもしれないが、依然として自由への尊い戦いを引き継いでいる。そして忘れてはならないのは、アメリカの力は軍事力からだけでなく、その国民に由来している、ということだ。労働者や仕事、起業家や研究者、教師や、自国のコミュニティのサービス等に由来しているのだ。
・団結すべきである。
常に意見が一致するわけではないし、すべきでもないが、われわれは分裂しないで初めて、リーダシップを維持し、試練に挑めるのだ。戦争がはじまったとき、われわれは団結していたではないか。もうそれができない、ということはないはずだ。
アメリカは試練にあるが、光は力になるという自信と、アメリカと世界をより安全にするコミットメントをもって、前進していこう。
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個人的な要約をすると以下のようになる。
<オバマの心理>
アフガニスタンの状況は、悪化しており、アメリカ本土に対するテロの脅威は現実的なものである為、やはりアフガンでは戦いを継続なければならない。アフガニスタンの戦争はそもそも向こうがまず攻撃してきたものであり、明白な理由があり、かつ、それに対して当時国際社会も含め、みんな攻撃に賛成してきたものだ。一方、ここまで状況が悪化したのは、イラクなどという関係ないところに注力し、アフガンを放置してきた前政権のせいである。つまり、やらねばならないことだが、別に私が好き好んでやりたいというわけではなく、ホントはこんなことしたくない。だから、目的を明確にし、その達成のための効率を追求し、経済などほかの目的との整合性も考え、過剰な関与は避け、なるべく他国に責任を負わせたい。あと予め言っておくが、すぐに解決はしないだろうけど、それはしょうがないことであり、それに対して文句を言い、国内が分裂すると、結局余計に状況がわるくなるから、私を責めないで、みんなで団結を維持しよう。
要は、自分はホントはやりたくないが、やらなきゃいけないものはやらなきゃいけないので、やる。ただ、なるべく効率的にやって、他人に責任を負わせ、さっさと撤退しようと思っている、ということだと思われる。
<政策>
意思決定:
①3万人増派、合計10万人、②18ヶ月後撤退開始。
理由:
①→テロは現実的な脅威であり、テロの撲滅は不可欠。状況が悪化しており、このままだと、余計に悪くなり、結局コストがかかる。
②→オーバーコミットしないようにし、アフガニスタンの戦争をアフガニスタンによる戦争にし、アメリカによる戦争にしないようにする。
目的:
アメリカ本土のテロの脅威の除去。アルカイダの殲滅
手段:
①軍事(ⅰ襲撃への対抗措置(Counter insurgency)、ⅱ人口集積地の防衛、ⅲアフガニスタンへの責任委譲)、②(同盟国と協力しての)民生、
③パキスタンの活用
手段の背景:過剰なコミットを避けるために、「アフガニスタンにおける自由の現出」といったような過大な目標を掲げず、アメリカの利益にとっての現実的な脅威の除去、つまり、テロの殲滅に目的を限定し、目的の達成と共に、それを達成するための効率を追求し、なるべく他人(アフガニスタン政府、国際社会、パキスタン)に責任を負わせる方針をとる。決してオーバーコミットしない。
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(つづく。。。)