■あらすじ
●田中武志…一家惨殺を追う記者
●田中光子…武志の妹、我が子を虐待
●田向宏樹…殺害された夫、エリート
●友希恵…宏樹の妻、上昇志向が強い
●宮村淳子…友希恵と同じ大学
エリート一家惨殺事件は、1年たった今も犯人が見つからないまま。
誰に聞いても「恨みを買うような人ではなかった」「トラブルはなかった」と言う答えが返ってくる、非の打ちどころのない幸せな一家をKILLしたのは誰なのか。
週刊誌記者の田中は今でも事件を追っていた。
田中自身は、妹のシンママ光子が我が子虐待の罪で拘留中。
虐待された子供は意識不明のまま。
面会に行った田中は、弁護士から「光子に精神鑑定を受けさせた方が良い」とアドバイスをもらう。
田向に縁のある人間をピックアップしてインタビューをする田中。
まず、田向と同じ大学の友人に田向の人となりを聞く。
親友だったというその男は、
勤めていた時に、田向とふたりで女子社員を弄んでいた過去を語りだす。
「田向は良い奴だった」言われても、あんたらずいぶんなことしたんちゃうん
次に妻の友希恵についてカフェ経営者の宮村淳子にインタビューをする。
淳子はどうやら友希恵をよく思っていなかった様子。
大学当時、友希恵は淳子と同じ外部生(大学から入ってきた人ね)でありながら、カースト上位の内部生の中に溶け込んでいたこと。
淳子の彼氏を奪ったことなどの情報を教えてくれた。
光子は精神鑑定を受け、父親から性的虐待を受けていたようなことも判明する。
そんな光子を救ってくれたのは兄。
光子の子供は依然意識不明のままだが、光子は自分の世界に入っているため子供のことも気にしない
田向の調査を進める田中は、田向が就職するために社長の娘二人と交際していたことを知る。
彼は今まで調べていた人物像とは違い、かなりえげつないことも平気でやる男だった。
そしてそれは妻の友希恵も同じ。
淳子に「友希恵に人生を狂わされた人もいる」と聞かされた田中。
その狂わされた人物こそが、田中光子…自分の妹だった。
どん底の生活から抜け出すために、名門である文慶大学に入学した光子。
だがそこは、恐ろしいほどのカーストが存在する世界だった。
金持ちで家柄も良い内部生と一般庶民の外部生の間には深い深い亀裂があったのだ。
ある日、外部生でありながら内部生とも交友関係を持つ、美しく華やかな友希恵に誘われた光子は、友希恵の策略で男子学生の餌食にされてしまう。
光子は友希恵にそそのかされ何度も何度も男子と関係を持たされ、
卒業するころには誰も相手にしないような存在になってしまったのだ。
光子の話をする淳子は「あんな風にならなくてよかった」と光子を見下したように言ってしまう。
目の前にいるのが光子の兄だとも知らず。
田中は淳子をKILLし、淳子をフった元カレの煙草の吸い殻(元カレにもインタビューして吸い殻を手に入れていた)を残してくる。
身も心もボロボロにされ、真っ当な道を歩むことすら叶わなかった光子は、ある日町で友希恵を見かけた。
だが友希恵は知らんぷりをして通り過ぎる。
あとをつけた光子は、友希恵が瀟洒な一軒家に住み、エリート然とした旦那と可愛い子供に囲まれて笑っている姿を見てしまう。
光子が願って願って夢に描いて、それでも手に入らなかったしあわせを彼女は全部手に入れていた。
光子は、
旦那を含めた一家全員をKILL。
精神科でその時の様子を嬉々として話す光子。
もちろん独り言だ。
殺していった様子を薄笑いを浮かべながら仔細に語る光子は、ちと怖い。
担当の医師が子供が助からなかったことを告げても光子の心は動かない。
光子はもうすでに何人もKILLしていたのだから。
弁護士は光子の子供が亡くなったことを受けて、
光子たちのもとから逃げてしまった母親のところに行く。
父親の虐待は知っていた。
でも、私には私の幸せがある。
今の幸せを壊したくない
淡々と語る母。
弁護士が光子は父親から性的虐待を受けていたのか、光子の子は実の父の子なのか?と問う。
母は驚いたように言う。
父親の子供ではない…と。
それって、つまり。
光子はひたすら兄を想っている。
「お兄ちゃんとの秘密は守るよ」
田中は、重い重い十字架を背負っている。
その顔は疲れ果て、もはや笑顔すら浮かばない。
■おしまい
■感想
出典:https://www.amazon.co.jp/dp/B071W4S3HT
原作既読…だけどもう忘れてる。
もう一回読まなきゃ。
文慶大学って(モデルは多分慶応)、そんな学部内カーストあるんや。
光子も必死に勉強したんならそんなとこ入らず、東大はきつくとも、筑波とか横国にしとけば、そこまでのカーストもなく、穏やかに学業に打ち込めたのでは?
なんて思ってしまうのです。
でも華やかな学生生活やネームバリューが、将来役に立つと思ったんやろうな
誰からも怨まれてへんよ~な田向は、
クズ!
人間のクズ!
って言いたくなるような
ドクソクズでした。
妻の友希恵も、
クズ!
人間のクズ!
って言いたくなるような
ドクソアマでした。
お似合いの夫婦や。
松本まりかちゃんの演じるOLさんがちょっとかわいそうでした。
あざといけどさ。
宮村淳子さんは、友希恵嫌いオーラが半端なく出てて、
彼氏を奪われた恨みもあってか、
自分よりかわいそうな人=光子を下に見ちゃったのが…いや、思い出しちゃったのがおかわいそうに案件の原因なのかね?
暴力的な父親に、ずっと暴力を振るわれていた兄。
可愛がられていたはずが、突如牙をむかれた妹。
「お兄ちゃんが、お父さんをぼこぼこにしたから、お父さんは出て行った」
これってつまり…だと思っていいんだよね。
そして光子が産んだ子供の父親は…お察しの通り。
学生時代のトラウマで正常な精神を失ってしまった光子。
それでもまだかすかに残ってた友希恵への愛情と友情。
あの時、幸子が「光子ちゃん!久しぶり、どうしたの、元気?」と声をかけていれば、惨劇は防げたのか。
防げたかもしれないし防げなかったかもしれない。
でも、そもそもの原因、光子を壊したのは友希恵だし。
貫井さん原作だから、重いかなーと思ったら、
ずし~~~~んと来ちゃった。
面白いって言うたらアカンのかもだけど、
かなりの良作(心はおれる)だと思いますよ。
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