■あらすじ
※時系列を少し変えています。
●栗原佐都子…タワマンに住む専業主婦
●栗原清和…佐都子の夫、無精子症
●栗原朝斗…養子に迎えられた栗原家の息子
●浅見静恵…「ベビーバトン」の代表者
●片倉ひかり…14歳で朝斗を産み流転の人生を送ることに
栗原家に何度もかかってくる無言電話。
そんな中、息子の朝斗が幼稚園でお友達をジャングルジムから突き落としたという連絡が入る。
このことで佐都子と朝斗はマンションで少々孤立することに。
それでも佐都子はくじけない。
朝斗は、佐都子にとっても清和にとっても「かけがえのない子供」なのだから。
無精子症で子供ができにくい夫婦は、毎月一回札幌にまで行って不妊治療をしていた。
辛く、痛く、お金もかかるその治療。
ある日飛行機が飛ばなかった時、佐都子と清和は二人の人生を歩んでいこうと決心する。
だが、子供のいない人生を歩むつもりだった二人の前に、
特別養子縁組制度と言う新たな選択肢が与えられた。
二人はその制度を使い家族を作ることにする。
親に、育てられない事情がある子供。
子供が欲しくてたまらないのに、恵まれない夫婦。
二つの家族を繋ぐベビーバトン。
そうしてやってきたのが、朝斗。
朝斗の母親は、14歳の中学生・片倉ひかり。
ごく普通のJCだったひかりは、
ごく普通に恋をし、
ごく普通に二人の時間を過ごし、
ごく普通に体を重ねた。
そして、命を生み出した。
発覚した時には中絶が出来ない週数に。
両親は激怒。
彼氏も同じような中学生なので子供が生まれてもどうもできない。
理想と現実は違う。
両親はひかりの意思も聞くことなく、
広島のベビーバトンで子供を産み、生まれたらすぐ養子に出すことを決めてしまう。
逆らおうが文句を言おうが、
ひかりに出来ることはない。
広島に行き、浅見に会ったひかり。
彼女は同じような境遇の若い妊婦たちと共同生活を送り、
子供を無事出産した。
子供を引き取ってくれる夫婦は優しそうでお金持ちで。
ひかりはその夫婦に子供と一緒に手紙を託した。
泣きながら子供と別れるひかり。
栗原家に片倉ひかりを名乗る女から電話がある。
これが冒頭の無言電話につながるのね。
「子供を返してほしい。
返さないならお金が欲しい、
言うことを聞いてくれないなら
周囲の人に養子だってバラしていくから」
その女はそう告げて電話を切った。
栗原夫妻が話し合いのために女を家に呼ぶ。
やって来た女は、どこからどう見てもあの時の片倉ひかりとは違う。
「あなたは…誰なんですか」
佐都子は思わず問うてしまった。
ひかりは思い出す。
出産後。
心に大きな負担を抱えて実家に戻ったひかりに親は「肺炎で入院していた」ことにしてあるから高校受験も出来る、と言う。
しかし、そうまでして隠しておきたかったはずの事実を、親は普通に親戚に話してしまっていた。
何しとんねんお前と誰しもが怒る瞬間。
当然激怒するひかり。
そりゃ親の事も信用できなくなるわ。
ひかりはグレていく。
あれほど好きだった彼氏は何事もなかったかのように高校生活をエンジョイしてる。
自分は全部なくしてしまった。
家に居場所もない。
高校を中退し、バイトに明け暮れ、
意を決して浅見を訪ねるが、
浅見は病気でベビーバトンを閉鎖するつもりだった。
ここでひかりは自分が産んだ子を養子にした栗原夫妻の住所をたまたま見てしまう。
関東に出てきたひかりは新聞販売店で働く。
そこで知り合った女に、知らぬ間に借金の保証人にされてしまった。
「私、こんなん知りません」
と言ったところで堅気ではない男たちから逃れられるわけもない。
ひかりは、追い詰められていた。
金もない。
信頼できる人もいない。
この世界にたった一人。
自分を必要としてくれるのは、
誰?
自称、片倉ひかりと対面する栗原夫妻。
「朝斗が養子だということは、周知の事実。
朝斗もそのことは知っています。
あの子には3人のお母さんがいると伝えました。
育ての親である私、取り持ってくれた浅見さん、
そして片倉さんのことは、広島のお母ちゃんと呼んでいます」
そう聞いてひかりを名乗る女は泣き崩れ
栗原夫妻に土下座して謝る。
「私は…、
あの子の…、
母親では、ありません…」
ひかりを名乗る女が家を出ていく。
同じ頃、警察が片倉ひかりという人を探してるんです、と家にやってくる。
新聞販売店で、お金を持ち逃げしたまま、行方不明になっているそうで。
見せられた写真の女性は、あの自称片倉ひかり。
彼女は本物だったのだ!
何が彼女をあそこまで変貌させたのだ?
佐都子が朝斗を譲り受けた際に手渡された手紙を読み返すと、
末尾に何か書いたものを消した跡があるではないか。
そこに書いてあった言葉は。
なかったことにしないで。
佐都子は何かを察し、
朝斗とともにひかりを追いかける。
ひとり佇むひかりに追いついた佐都子は声をかける。
「ごめんなさい…気づけなくて…。
朝斗、この人が広島のお母ちゃんだよ」
この時の佐都子とひかりの表情ったら
純粋ゆえに愛し、
純粋ゆえに苦しんだひかり。
彼女に明日は来るのだろうか。
名前のようにひかりに包まれる日は来るのだろうか。
全ての人に朝が来るように、
きっとひかりにも、
朝が来る。
■おしまい
■感想
予告から泣ける!
原作既読。
辻村美月さんも宇佐美まことさんも、望まぬ妊娠をした少女と少女を取り巻く大人たちの物語を切り口を変えて描いてはるけど、辻村さんの方が一般受けする気がする。
マダムはどちらも好きです
これはねー。
子供を持つ親なら、たぶん号泣だわ。
マダム号泣
冒頭の不妊治療から二人の生活を送ろうと決心し、ベビーバトンにたどり着くまでの流れがたまらん。
永作博美と井浦新の夫婦がほんと素敵なんよ。
そして一人「普通の道」を外れてしまったひかりが、
桜吹雪の舞う中を自転車で進むシーン(ひかりの回想シーン)で、また号泣
ひかりの、はずれくじばかり引く運命に号泣。
泣きすぎて鼻詰まりからの喘息。
マダムを殺しにかかっとるで。
「ひかりパートになると栗原夫妻に比べファンタジック過ぎ」
なんて思ってごめんなさい。
ドキュメンタリータッチで進む物語。
柔らかな光に包まれる映像が美しい。
ひかりと彼氏が急速に近づき、初めての恋に翻弄されていくところが、丁寧に丁寧に描かれれる。
だからこそ、あの別れのシーンで現実を突きつけられるひかりの痛々しさ。
今後壊れていくであろう彼女の人生が予想出来て辛くなる。
ひかり、なんでそっちの道を選ぶん?
そう言いたくなるくらい、あかん方ばかりチョイス。
そして世知に長けていないから騙される
「アサトヒカリ」がすごく効果的に使われていて。
ウルウル。
朝斗、ひかり。
母親の子供に対する愛のかたちって、いろいろあって。
佐都子みたいに寛容で見守れる愛もあれば、
ひかりみたいに純粋すぎる愛もあり、
ひかりの母だって良かれと思ってしたことが裏目に出てしまう。
とにかく映像が奇麗。
ある一定の層にはピンポイントで刺さる映画。
永作博美さんも浅田美代子さんもノーメイク(ほぼ)。
時代が、リフトアップし過ぎの若々しい顔より年相応顔を求めてるのかな。
年齢を重ねたからこそ、佐都子はより寛容になれるし、浅見は女の子たちを守ろうとするんやろうなぁというのが伝わってくる。
ひかりは人生を立て直して生きていくんやろうか。
生きていってほしい。
朝斗のためにも。
この映画のテーマは。
全ての母親は子どもが大事。
泣いてエエんやで。
これ
原作と少し変わってる部分もありますが、大きな違いはなし(多分)。
WOWOW 『W座』は、マジでいい映画持って来る。
『W座』がなかったら、ポンカスホラーしか観てへんで、
マダムは。
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