ユリゴコロ(ネタバレ) | 映画でもどうどす?

映画でもどうどす?

映画と読書の感想を気が向いたら書いてます。
どちらも、ホラーとミステリが多め。
ホラーなら悪魔よりゾンビや怨霊。
ミステリならイヤミス。

これって愛の物語やん!

 

一冊のノートに書かれた殺人の記録。
これは真実の殺人記録なのか?それともただのフィクションなのか?
ユリゴコロ…それは一体、なんのことなのだろう?
 
 
 
 
===登場人物===
 
亮介…レストランオーナー、一冊のノートを読んでしまい…。
千絵…亮介の恋人、忽然と消える。
洋介…亮介の父、末期の癌。
細谷…千絵の知人、千絵捜索に協力的。
美紗子…ユリゴコロを持つ殺人者。
 
 
レストランを経営している亮介。
結婚も間近に控え幸せいっぱいだったが、突如婚約者の千絵が突如行方不明に。
傷心の涼介は仕事にも身が入らない。
しかも父親はすい臓がんで余命僅からしいし。
 
 
亮介は父の部屋の押し入れにあったノートを見つける。
「ユリゴコロ」と書かれたそのノートは、ある殺人鬼の手記だった。
 
 
「私のように平気で人を殺すことが出来る人は脳に病気でもあるのでしょうか?」そんな一文で始まる手記。
書き手は「私=美紗子」。
医者に診断してもらう美紗子は「この子にはユリゴコロがないのです」と言われてしまう。
後にそれは「拠り所」だとわかるのだが。
 
 
小学校低学年のある日、クラスメイトの死亡事故に遭遇。
彼女のユリゴコロは蠢いた。
 
 
溝に落ちた妹の帽子を拾おうとしている少年。一人の青年が重い溝の蓋を持ち上げている。
美紗子はそれを手伝うふりをして、わざと蓋を男の子の上に落とした。
男の子は死亡、ユリゴコロが歓喜の声を上げる。
 
 
美紗子が専門学生になった時、みつ子という友人ができる。彼女はリスカをすることでなんとか生きながらえているメンヘラちゃん。
友情を深めていく二人だが結局みつ子は死亡。
 
 
 
 
美紗子は娼婦に身を落とす。
 
 
身体を売っていた美紗子の前に現れた「あなた」。
彼は美紗子に救いの手を差し伸べるが、実は彼こそがあの側溝蓋事件で少年を助けようとしていた青年だった。
彼はあの事件で心に大きなトラウマを背負うことになる。
人生を狂わされて、今も苦悩に身を焼かれながら死ぬことすら出来ず生きていた。
美紗子のユリゴコロが一人の青年の運命を変えてしまったのだ。
美紗子は娼婦のときに関係を持った男の(父親が誰かはわからないけれど)子供を孕んでいたが「あなた=洋介」は全てを受け入れ結婚しようと言う。
 
 
 
 
 
ノートも気になるけど千絵も気になる亮介。
亮介の前に「かつて千絵と一緒に働いていた」という細谷が現れる。
細谷は亮介に千絵のことを出来る限り調べると言ってくれた。
その言葉通り細谷は情報を手に入れてくる。
「千絵は既に結婚していた」「旦那が暴力団関係者だったので逃げ出した」「そこで亮介に出会った」「千絵は今、ヤクザの旦那に連れ戻され娼婦になっている」
という亮介の心を抉るような真実。
「そんな女でも連れ戻したいですか?」
「はい」と答える亮介。
 
 
ラブラブおねがいおねがいおねがいおねがいおねがいおねがいおねがいおねがいおねがいおねがいラブラブ
 
 
洋介と結婚した美紗子は、ユリゴコロが薄れていくのを感じる。
子供が生まれ家庭を持ち「うれしい」という気持ちは「ユリゴコロ」に似ている…幸せを噛みしめる美紗子だったが、かつて美紗子につきまとっていた男が彼女の前に現れた。
彼はどうやら美紗子の犯行を知っているらしい。
美紗子は彼をKILL。
美紗子は洋介に言えなかったことをノートに書き記し、自殺を図るのだった。
 
 
ギザギザドクロドクロドクロドクロドクロドクロドクロドクロドクロドクロドクロギザギザ
 
 
亮介は、美紗子が自分の母だったことを確信する。
殺人鬼の子供…それはあまりにも衝撃的な真実だった。
荒れ、精神が崩壊寸前の(ほとんど壊れてる)亮介は細谷に千絵の居場所を訊く。
細谷は「ヤクザに捕まってひどい仕打ちを受けている、きっと助け出すから待っていてほしい」と言う。
なら、そいつらを殺せば千絵は助かるのか。
事務所に向かう亮介。
だが事務所には、血まみれの惨殺死体が何体も転がっていた。
意識が朦朧としている千絵を救い出し、レストランに連れて帰る亮介。
そして亮介は、ある事実にたどり着く。
 
 
!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?
 
 
洋介は自殺を図る美紗子を助け、真実を追求しする。
美紗子が人を殺めてきたことを知った洋介は美紗子をダムに連れて行くことに。
美紗子が死ぬことで全てが丸く収まる。
美紗子も自分が死んだほうが良いことはわかっている。
だが、洋介は美紗子を殺せない。
「お前は別の人間として生きていけ」
洋介は美紗子と決別し、亮介を一人で育てることを決意する。
 
 
美紗子は細谷として人生を生きてきた。
何度か亮介たちの近くにも来ていたが声をかけることは出来なかったのだ。
千絵と知り合い、千絵が息子の涼介と結ばれることを知り、二人の未来のために人を殺めた。
 
 
亮介はその行為を気が狂わんばかりに憎みながらも、それでも父親洋介の入院している病院を教える。
「あなた」にやっと会いに行ける…。
 
 
亮介は生家の前に立ち、涙を流す。
その胸に去来するものは…。
 
 
     おしまい
 
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かつて「イヤミスと言えば沼田まほかる・真梨幸子・湊かなえ」と評されておったのです。
トンデモなどんでん返しの真梨幸子さん、ざわつく湊かなえさんに比べ、沼田まほかるさんは「そこまでイヤミスか?」と思う作風でしたが、マダムのような生粋の且つコアな「厭な気持ちになる小説がスキー」ではない一般ピーポーは、沼田さんがお好きだったようで。
沼田さんが抜けた後は「イヤミスじゃないのも書いてるけどイヤミス多いよねな」秋吉理香子さんや芦沢央さん美輪和音さん春口裕子さん。「イヤミスに限らないけど結構イヤミスも書いてるよねー」な朝比奈あすかさん朝倉かすみさん水生大海さん…と、女性作家の躍進が凄まじいジャンルになりました。
 
 
あれだ、女性心理の根源には「厭成分」が含まれてるからだ。
 
 
マダムオススメのイヤミス…と言うかもう「ホントやめて」と思う作品。
 
注意猛毒注意なので気をつけるべし注意
歌野晶午さんは、男性なのに女性と違う意味での厭さが…こうね…来るんですよ。
 
 
…で、映画ですが、原作とはちょっと違ってます。
そして大コケしたらしいです。
吉高由里子さん、むっちゃ頑張ってはるし、よく出来た作品だったと思うのになー。
 
 
イヤミスと言うより、愛の物語になってはった。
マツケンはもちろん、ダイコンだと思ってた(ごめん)松坂桃李くんの演技も上手くて、ガッチャマンは気の迷いやったんやね!うん!ってなった程です。
 
 
サイコパスの物語の割には愛要素が強くて、「サイコパス映画を求めてた層」からも「愛の物語を求めてた層」からも「ちゃうんちゃう?」と思われたからでしょうか?
 
 
「彼女がその名を知らない…」も映画化されてますが、あれは原作がどうも好きになれなかったから、多分観ないと思うんだけど。
ユリゴコロは無理なくまとまってたと思うんやけどなー。
 
 
 
 
原作の「この書き手は一体誰やねん?」な謎(書き手の性別すらわからなかったのですよ、最初は)はぶん投げられましたが、その分美紗子の心の変遷は上手く描けていたと思います。
最初のムイムイを井戸に入れるシーンからの友人が溺死するのをじっと見ているシーンからの蓋のシーンは完全にホラー。
チャイルドホラーですが、そこでひるまずに…。
リスカシーンも、切り株ブッシャーに比べたら「ふっ」ですし。
後半のヤクザさん37564シーンも、そんな言うほどグロくないで(マダム主観による)。
 
 
とにかく、グロいホラーっぽいサイコっぽいという概念を取っ払って、観て下さい。
洋介と美紗子の二人が結ばれるシーンは、泣けました。
ちょっと映像が綺麗すぎて「それはアカンよ?」と思ったけど、心情に泣けました。
 
 
ユリゴコロに翻弄される美紗子。
じゃあ、彼女のユリゴコロは、幼いときからどう扱えばよかったんでしょう。
ユリゴコロに変わる愛を周囲が与えればよかったの?
難しいよなぁ。
そしてきっと、誰の心にも多かれ少なかれユリゴコロはあるんじゃないかな?って思ったり。
 
観るまでのハードルが高いけど、観たら「愛なんだ」と思える映画。
「フジコ」も「告白」も「暗黒女子」も映像化したことだし。
「ハナカマキリ」や「ウェンディ」も映像化しないかな。
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