先日

腹痛の往診があった

 

前日に

ひどい下痢をして

右の上腹部の痛みがあったらしく

当日は症状は消失していたのだが

念のため、診察させてもらう流れになった

 

「昨日の夜は死ぬかと思ったわ

体をくの字に曲げてないと痛みが引かなくて

今日はもうなんもないけど

ちょっと吐き気あるからご飯食べたくないねん…」

 

バイタルとしての異常は

37度と軽い微熱がある程度だった

軽い診察だけだったら

俺もそのまま経過観察にしていたと思う

ただ、妙に「右上腹部痛」ということが引っ掛かった

一応、お腹を触らせてもらってもいい?って話して

触診させてもらった

 

右上腹部に軽い圧痛がある

もう一段階奥に指先を入れる

すると「いっっ」と叫ぶ

患者さんを左側臥位にして

さらに触診を続けた

痛みが増強した

これってもしかして…胆石?

 

本人はケロッとしていたが

時は土曜日

このまま様子観察で、悪化した場合に休日になってしまう

念のためと念押しして、しぶしぶ本人も病院受診を承諾してくれた

家族を呼んで、すぐに病院へ行って頂ける手はずに

 

16時ごろ

病院から連絡があった

胆石症、総胆管結石

至急、カメラで処置

場合によっては緊急オペとのことであった

採血で黄疸が出て、肝機能もかなり異常を示していたとのこと

おぉ…良かった、当たった…

 

2週間ほどの入院を経て

今日退院と同時に会いに行くことに

部屋に入ると、しおれるような顔した本人と娘さんがいた

「おかえり」

そう伝えると

「ただいま」と

少し笑顔になった

すると娘さんが

「病院へ行った日、担当の先生から

このまま放っておいたら、夜に急変して命を失ってたかもしれません

良い先生に診てもらいましたね

と言われました

命を救っていただき、本当にありがとうございました」

そう言うと、本人とともに深々と頭を下げてくださった

少し照れ臭かったが

命を救えた事は医者としては本当に喜びである

そして…

病院という大きな組織の医者から

在宅医として褒めて頂けたことも

俺には大きかった

検査もせず、経験と知識だけで診断を下すことの

怖さが大きい中で

診断が相当であった時

本当に良かったと思える

 

在宅医になって

命を見守り、最期を看取る事が多かっただけに

こんな風に命を救うことに対しての気持ちが

少し枯れかけていたところに

水を与えられたような充足感がある

今回の事は一旦喜びとして受け止め

傲慢になることなく、また精進したいと思う