施設から報告があった

「下肢の浮腫が悪化してるのを

娘さんが心配している」と

 

3月に入居した

心不全、腎不全の

末期のおばあさん

一時期生死の境をさまよったが

何とか持ち直すことができた

普段から血圧が高く

浮腫、いわゆる心不全の治療に関しても

内服は在宅で出せる限界になっていた

 

実はこのおばあさん

生死の境をさまよった時に

娘さんにはしっかりと説明していた

これ以上の治療は在宅では難しく

希望があれば病院を紹介しますよ、と

しかし娘さんは

「お母さんは病院が嫌いなので…」だった

 

その段階で浮腫を気にしていると言われても…

と思い、すぐに電話を掛けた

娘さんと話してみると

「現場の訪問看護から浮腫を指摘され

塩分の高い梅干しとかをよく食べちゃうので

そのせいかもしれないです、って意味で気になりますとは言いました」

とのこと

受け取り方の違いから報告を取り違えたようだった

 

改めて娘さんに確認するも

「こんな言い方失礼とは思うのですが

お母さんには好きな事やってもらって

それで死ねたら本望だと思っています

先生、このまま病院へは行かずになんとか

見守っていてあげられませんでしょうか?」と

もちろん、そう言ってもらえたらこちらは問題ない

娘さんの気持ちはちゃんと伝わっている

 

施設に入居する患者さん

家族との間にはいろんなドラマがある

自宅で診ている方とは、少し違っているのが普通だと思う

親子の縁を切った方だっているし

施設に入れているのに、やたら治療に口出ししてきて

何かあったら医療のせいにしたりする方も…

 

施設は病院と違って、治療の限界点は非常に低い

ドライに物事を考えれば

ちょっと調子が悪ければ、さっさと病院に行ってもらった方が

こちらはかなり楽だ

しかしそんな簡単なものではない

なるべく施設で、健康に過ごしたい

そのバランスはものすごく難しいのである

そんな中で、じゃぁ命に関わる状況になった時

どうした方が良いのかは、やはり残される家族の気持ちが重視される

 

こんな風に

医療の事は一任します

亡くなっても、文句は言いません

の気持ちに、どう持って行くかが

在宅医の最後の任務だったりする

このおばあさんと娘の関係は良好

病院嫌いの本人の気持ちを

娘さんがしっかりと汲んであげている

だからなおさら

俺は最期くらい苦しまずに看取ってあげたいと

必死に頭を絞って治療をする

 

親が死ぬ

残される家族の気持ち

そこはこれからもずっと考えていかなければならない

 

にしてもこのおばあさん

ホント味の濃いものが好きで

この病気になってしまったのもうなずける

でもやりたいことして死ねたら

やっぱり俺も本望かなぁ