地上波の連ドラだったらしいが

俺は見たことがなかった

 

日本映画専門チャンネルで先日やっていて

一度見てみようと思って録画しておいたのだが

その劇中と言うか

ドラマの中でも決めぜりふと言われるものがあって

「名乗るほどではございません」

と、言い放つのが見せ場らしい

 

いったいいつこの言葉が生まれたのかは知らないが

俺はこの言葉を使ったことがあった

訪問診療を始めて間もないころ

車で訪問先に向かって走っていると

時々事故現場に遭遇する

交通事故とかそんな大きなものではなく

自転車に乗ってた人が転倒したり

うずくまっていて状態が悪い人を見つけてしまったり

そんな時、診察や処置をしながら

119に連絡をして

救急隊が到着するのを待ったことがあった

 

まぁちょっとだけ

自分がやっていることが、カッコいい事のように感じるもので

救急隊が到着すると

「先生ですか?すいません、お世話になります!」って言われ

患者さんの状態を申し送りして

考えられる疾患を伝えたり、外傷の状況を伝えるのだが

初めてそれをやった時、救急隊から

「あの…先生、お名前は?」

と聞かれ、とっさに

「いや、当然のことをしたまでです。名前とか、ホントいいです」と伝えて去ろうとすると

「いや、そうじゃなくて、処置した責任が生じるので、お名前を教えて頂かないといけないんです」

と、なんだかこっぱずかしい状況に陥ったことを覚えている

一緒にいたナースも、車内に戻ってから

「先生、ダサかったです(笑)」

 

今は色々と問題や訴訟が渦巻く医療だから

最初に関わるだけでも、何かしら影響が出てしまう

なのでそれ以降は救急車が到着するまでに名刺を用意しておいて

隊長に渡すようにしていた

そうすることで、受け入れしてくれた病院から

診療情報提供書が届いて、経過を教えてくれたりもする

こういうつながりが、また新たな絆を生んでくれたりもする

 

でもいつか

通りすがりに命を救って

「あの、お名前は…?」

「いや、名乗るほどの者ではござーせん…失敬!」

と、馬に乗って走り去るような

そんなシチュエーション、ないかなぁ…

 

ないわな(´;ω;`)ウゥゥ