ある施設に

一人のおばあさんが退院してくると耳にした

病院からも紹介状が来ていた

 

経鼻胃管が入っていて

注入すると肺炎症状が出現

注入を辞めて点滴にすると

その症状も治まる、とのこと

 

なぬ?

それって

施設に戻ってきて、注入したら

一発で肺炎起きると思うんですけど?

 

クリニックのナースに聞いたら

これまでも数日施設に帰ってきては

すぐに病院に搬送されてきた、というのだ

俺が主治医になるからには

同じ轍は踏みたくない

 

病院に連絡すると

ソーシャルワーカーの方が対応

療養型病院の方が適切な退院先では?との投げかけに対して

確かに、と理解を示してくださった

もちろん、家族に説明したうえで、看取りを覚悟で施設に戻る分には

こちらとしては何ら問題ないのだが

状態悪化したらすぐに病院を希望する家族であれば

施設に帰ってくるのは、ちょっと違う

よし、病院サイドはこれで良し!と

 

じゃぁ次は

施設に話さなければ…

こういう案件は、安易に退院許可すべきではない

許可するのであれば看取りの同意とともに、受け入れる施設側もその未来を把握する必要がある

まずは訪問看護に連絡

少し話すと、訪問看護サイドは理解を示してくれた

施設長に代わります、と

代わった施設長と話すと、なんだか返事がおかしい

どうも、呑み込めてない感じがする

もっと上に相談しますとのことで、一旦電話を切られてしまった

 

クリニック内で、施設長の対応について話したところ

この施設長はいつもこんな感じらしい

恐らく、施設として空室を作りたくないという思いや

病院が退院できるというのであれば、条件関係なく元の場所に戻ってくるということを

美談としてでも捉えているかのような人みたいで

ビジネスとして人を扱い、命に関しては考えが希薄なようだった

 

確かに施設運営するにあたって

空室ができることは非常にストレスとなる

それを埋めるためにはまた営業活動も必要だろうし

適切な入居者がすぐに見つかる保証なんて何もない

だが、何度も入退院を繰り返しているような方であればなおさら

その人の病状をしっかりと吟味して、介護の施設として対応を熟考すべきだと俺は思う

それがビジネスに徹するがあまり、大切な部分がぽっかりと抜けているようだ

もっと言うと、恐らく入居を妨げようとしている俺の思いは

収益を下げる厄介な人間とでも言わんばかりであろう

 

医療と介護の違い

また

病院と施設の違いのみならず

そこに経営者の思いや、金銭的な収益の問題が絡んでくるから

ややこしいこと、この上なしである

施設がつぶれてしまうと、元も子もない

そりゃもっともで

だけど、何のための施設なのか、どうありたい施設なのか

その部分を明白にしておかなければ、この施設はきっとどこかでとん挫する気がする

命を預かることは、そんなに甘いものじゃない

何でもかんでもお金に換算する人間に、命を預ける家族の身にもなってもらいたいものである