NO.91 劣化するオッサン社会の処方箋 山口 周 | マルティン・ルターのぶろぐ

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はじめまして、マルティン・ルターです。今年の目標として読了30冊を掲げました。
今まで読んだ本も備忘録として残していきます。
主にビジネス書、リベラルアーツ、などです。+で中日ドラゴンズとごはん屋さんも発信していきます。

劣化するオッサン社会の処方箋 

 

山口周

 

光文社新書



 

ホント、山口周さんの本は読みやすい。スッと心に入ってくる。教養人なんだろうなぁ。

山口周さんは2歳年上の同世代とは初めて知った。

 

50歳を過ぎ、「劣化するオッサン」である私自身耳の痛いことでした。怠け者の私は、古いパラダイムの中で生きてきました。いい大学にいい会社に勤めれば、人生勝ち組だと。生活を心配することなく、生きていけると。

しかし、現実はそうなりません。中堅大学に入り、中小企業に入社しました。そして、27年と数ヶ月。

「オピニオン」を出すことも、「エグジット」することもできませんでした。

 

 

はじめに―本書におけるオッサンの定義

 

1:古い価値観に凝り固まり、新しい価値観を拒否する

 

2:過去の成功体験に執着し、既得権益を手放さない

 

3:階層序列の意識が強く、目上の者に媚び、目下の者を軽く見る

 

4:よそ者や異質なものに不寛容で、排他的

 

 

第1章 なぜオッサンは劣化したのか―失われた「大きなモノガタリ」

 

ここでいう、「大きなモノガタリ」つまり「いい学校を卒業して大企業に就職すれば、一生豊かで幸福に暮らせる」という昭和後期の幻想の形成とともにキャリアの階段を上り、「大きなモノガタリ」の終焉とともに、社会の表舞台から退いていった、ということです。

 

 

第2章 劣化は必然

 

組織が「大きく、古くなる」ことで劣化はより顕著になる

大きな「権力の終焉」という時代のプロセスのなかを生きている

 

 

第3章 中堅・若手がオッサンに対抗する武器

 

革命の武器はオピニオンとエグジット

社会で実権を握っている権力者に圧力をかけるとき、そのやり方には大きく「オピニオン」と「エグジット」の二つがあります。

オピニオンというのは、おかしいと思うことについてはおかしいと意見するということであり、エグジットというのは、権力者の影響下から脱出する、ということです。

 

 

ど真ん中すぎる回答でシラけてしまうかも知れませんが、結局のところ、汎用性の高い スキルや知識などの「人的資本」と、信用や評判といった「社会資本」を厚くすることで、自分の「モビリティ」を高めるしかありません。

 

この「モビリティ」というのは、今後、柔軟で強かなキャリアを歩んでいくための最重要キーワードだと思います。 モビリティを高めるためにこそ、汎用性の高い知識とスキル、あるいは社外の人脈や信用を自分の資産として積み上げる必要があるのです。 「モビリティ」については、のちほど詳しく論じます。

 

どのような場所でも生きていけるためにスキル・知識を獲得する、今いる場所を「いつでもでていける」ような状態にするために学び続ける。

 

 

第4章 実は優しくない日本企業―人生100年時代を幸福に生きるために

 

その人の労働市場における価値は、人的資本(汎用性の高い スキルや知識)と社会資本(信用や評判)の厚みによって決まる

 

 

社会学者の見田宗介は、現代社会を「まなざしの地獄」と評しました。相互が相互に銃弾のような眼差しを交わしながら、お互いの社会的な立場や経済力を一瞬で値踏みし、「勝った、負けた」の精神消耗戦を毎日のように戦っている、という地獄です。

 

このような地獄に残りながら、エグジットするというオプションも取れないままに、まだ残り多い職業人生を生きていかなければならないのだとすれば、おかしくならないわけがありません。

 

 

第5章 なぜ年長者は敬われるようになったのか

 

・年長者は本当に偉いのか

 

単純に「経験の蓄積=判断力の向上」とは言えないように思います。

 

環境がどんどん変化するなかで発生する未曽有の問題に対して、より根元的な人間性や道徳といった立脚点に根ざして、その人らしい正しい判断をしていくには、なによりも「教養」が必要になります。

 

・イノベーションランキングと宗教

 

合理的な根拠がないにもかかわらず信じる行為を「信仰」と言います。つまり、年長者は尊重されなければならない、という考えは、私たちの「信仰」なのです。

 

この信仰が依拠しているのは「儒教」という宗教です。私たちの生活において「儒教」の 影響を表立って意識する局面は少ないかも知れません。しかし、次のデータを見れば、おそ らく多くの人は、この宗教の小さくない影響を、理解されるのではないでしょうか。

 

年長者に向かって反論する際に私たちが感じる心理的な抵抗の度合いには、民族間で差が あるということがわかっています。

 

オランダの心理学者ヘールト・ホフステードは、全世界で調査を行い、この「年長者に対 して反論するときに感じる心理的な抵抗の度合い」を数値化し、それを権力格差指標=PD

 

(Power Distance Index) と定義しました。

 

ホフステードは権力格差を「それぞれの国の制度や組織において、権力の弱い成員が、 力が不平等に分布している状態を予期し、受け入れている程度」と定義している。

 

 

 

株式会社はその宿命として、成長を求められ続けることになります。しかし、成長すると いうことはまた同時に、組織の肥大化をも意味します。その結果として、人員は増加し、組織の階層は増え、アイデアを生み出す若い人と資源配分の意思決定をする経営者との物理的・心理的距離は広がることになります。

 

組織階層が増えれば増えるほど、情報が上層部に上がりにくくなることは理の当然です。 加えて、第2章ですでに指摘したとおり、大きく、古くなった組織では、意思決定の能力も低下する。

 

 

・権力格差が年長者を甘やかしている

組織上のポジションさえ与えられれば、人望や尊敬、あるいは信頼関係などは抜きにしても、人に命令し、組織を動かすことができる。

 

・出世したのだから優秀なのだろう、は危険な考え方

組織のポジションと能力や人格には、統計的にあまり相関がないことがわかっている

「出世した人は、強欲で権力志向が強く、プライドを捨てて上司にオベッカを使ったから出世したのだ」ということになります。

 

ラジカルに「年長者を敬う必要はない」と考えている民族もまたない

 

 

第6章 サーバントリーダーシップ―「支配型リーダーシップ」からの脱却

 

リーダーというのは、そもそも部下よりも知識や経験が豊富であり、であるからこそより高品質の意思決定ができる、という思い込みがある。

 

 

第7章 学び続ける上で重要なのは「経験の質」

 

・権力の終焉する時代

世界中の、あらゆる場所で「権力の弱体化」が進んでいる

 

権力は「情報の独占と支配」によって、その生命を維持する

 

 

・弱体化しているときこそ、権力は支配力を強めようとする

権力が弱体化する時代だからこそ、私たちは自分自身を知的に武装し、オピニオンを主張し、相互の発信に耳を傾けて対話していく必要がある

弱体化する権力は躍起になってその支配力を強めようとする

 

 

第8章 セカンドステージでの挑戦と失敗の重要性

 

残された時間をなにに使っていくのかを明確にするという「覚悟」の問題でもあります。

 

・学びの密度を上げる

 

「同じ入力に対して、より良い出力を返せるように自分というシステムを変化させる」こと

 

「学習とは変化することである」

 

「何かを止めないと、なにかにチャレンジてきない」、チャレンジの難しさの本質は、チャレンジそのものよりも、それ以前に横たわる「なにかをやめること」にある

 

・逃げる勇気

セカンドステージにおけるチャレンジを阻害する最大の要因の一つが「逃げてはいけない」という信条です。

 

 

 

最終章 本書のまとめ

 

ここまで「劣化するオッサン社会とその処方箋」という問題について、様々な考察を重ねてきましたが、ここで本書の主要なメッセージをまとめて確認してみたいと思います。

 

1:組織のトップは世代交代をごとに劣化

 

2:オッサンは尊重すべきだという幻想を捨てよう

 

3:オピニオンとエグジットを活用してオッサンに圧力をかけよう

 

4:美意識と知的戦闘力を高めてモビリティを獲得しよう

 

 

 

 

本書冒頭に記した米国の詩人、 サミュエル・ウルマンの「青春」から、もう一度引いて本書を閉じることにしましょう

 

青春とは人生の或る期間を言うのではなく、心のありさまを言う。

 

優れた創造力、逞しき意志、炎ゆる情熱、怯えをしりぞける勇気、安易を振り捨てる冒険心、これを青春と言う。

 

年を重ねただけで人は老いない。理想を失う時に初めて人は老いる。

 

サミュエル・ウルマン「青春」