ウルフ・スタルク著 エヴァ・エリクソン絵 ひしきあきらこ訳
BL出版 2000年 1296円
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・対象年齢:年齢に応じて読むことができます。
あらすじ
ある日の夕方、パパが突然僕に言った。「今から宇宙を見せに連れていってあげよう」僕たちは帽子をかぶり、靴下を二枚履いて出かけた。
パパは口から白い煙を吐き出しながら、僕と手をつなぎ、大またで歩いていく。「宇宙って遠い?なんなの?」僕の質問に「この世界ぜんぶさ」と手を広げるパパ。
よく分からないけど、僕は歩き続けた。途中で非常食を買い、公園・金物やさん・魚屋さんの前を通った。
しばらく行くと水路があった。パパはぼくを抱き上げ、えいっと飛び越えた。街灯がなくなっていく。「もうすぐだよ」
パパは草の上をゆっくり歩いていく。そして、低い丘に登ると、足をとめた。「ここなの?」僕が聞くと、パパはうなずいた。
僕はがっかりした。ここなら来たことがある。近所の人が犬と散歩している原っぱだ。
「さあ、非常食を食べよう」そして、聞いた「みえるかい?」
僕は暗い原っぱに目を凝らし、カタツムリ・風にゆれる草を発見した。これが宇宙なんだ。とてもきれいだ。と、思っていたらパパは言った。「上だよ。」
空いっぱいに星がまたたいている。パパはひとつひとつ星を指差し、説明する。「気持ちが落ち着いてくるだろう?」
パパは僕がちょっとでも遠い星に近づけるように抱き上げた。と、その時、パパが押し黙った。犬のウンチを踏んづけたのだ。
「一生忘れられない美しい物を見せておきたかったんだが・・・」帰り道、パパはずっと元気がなかった。でも僕は楽しかった。一生忘れないよ。
(浦田ひろみ)