パパが宇宙をみせてくれた』

ウルフ・スタルク著 エヴァ・エリクソン絵 ひしきあきらこ訳 


BL出版 2000年 1296円
http://tinyurl.com/qga8jp9

・対象年齢:年齢に応じて読むことができます。  
(読んでもらうには)4歳から
(自分で読むには)5歳から大人まで  『パパが宇宙をみせてくれた』_e0171960_11575083.jpg



あらすじ

 ある日の夕方、パパが突然僕に言った。「今から宇宙を見せに連れていってあげよう」

 僕たちは帽子をかぶり、靴下を二枚履いて出かけた。

 パパは口から白い煙を吐き出しながら、僕と手をつなぎ、大またで歩いていく。「宇宙って遠い?なんなの?」僕の質問に「この世界ぜんぶさ」と手を広げるパパ。

 よく分からないけど、僕は歩き続けた。途中で非常食を買い、公園・金物やさん・魚屋さんの前を通った。

 しばらく行くと水路があった。パパはぼくを抱き上げ、えいっと飛び越えた。街灯がなくなっていく。「もうすぐだよ」

 パパは草の上をゆっくり歩いていく。そして、低い丘に登ると、足をとめた。「ここなの?」僕が聞くと、パパはうなずいた。

 僕はがっかりした。ここなら来たことがある。近所の人が犬と散歩している原っぱだ。

 「さあ、非常食を食べよう」そして、聞いた「みえるかい?」

 僕は暗い原っぱに目を凝らし、カタツムリ・風にゆれる草を発見した。これが宇宙なんだ。とてもきれいだ。と、思っていたらパパは言った。「上だよ。」

 空いっぱいに星がまたたいている。パパはひとつひとつ星を指差し、説明する。「気持ちが落ち着いてくるだろう?」

 パパは僕がちょっとでも遠い星に近づけるように抱き上げた。と、その時、パパが押し黙った。犬のウンチを踏んづけたのだ。

 「一生忘れられない美しい物を見せておきたかったんだが・・・」帰り道、パパはずっと元気がなかった。でも僕は楽しかった。一生忘れないよ。
                              (浦田ひろみ)