海南市の地域おこし協力隊員に
瀬戸山 江理さん
体験イベント開催も
各自治体が都市地域からの移住者を『地域おこし協力隊員』として任命。隊員はその地域の漁業・農業・林業などに従事したり、地域の魅力のPRやお祭り・イベントの運営に関わるなど地域協力活動を行う。そうしたことで地域への定着・定住を図る取組みが総務省から平成21年に始まり全国に拡がっている。今回登場いただく瀬戸山江理さんも和歌山市内から 海南市黒江地区に移住した「地域おこし協力隊」の一人である。彼女に話を聞いた。
(中村 聖代)
【笑うことができない】
江理さんは幼小の頃から自己主張するより、自分を後回しにするような性格だった。母親が父親に従うのが当たり前の日常で育った。
彼女はそれを重苦しく感じ取り、早く家を出たくて20歳で結婚、3人の子どもをもうけた。
夫の素行だけが原因ではなかったろう。しかし笑うことはおろか作り笑いすらできない自分がいた。
「(自分の)母親より忍耐力がないなあ」と思いつつ、子どもたちに本音をうち明けた。すると3人はすぐさま「苦しくても母についていく、父とはお別れを言う」と、背中を押してくれた。29歳の時に離婚した。
【りら創造芸術】
海草郡紀美野町真国宮にある「りら創造芸術高等学校」(前専修学校)の職員として勤務したことがある。「りら」は、生徒たちがとことん話し合って様々なことを決める。また、体験から学ぶことを重視したユニークな学校だ。多分野で優秀な人材を輩出している。2人の子どももそこに学んだ。
自分の殻を割って成長していく生徒たちの姿に動かされ、江理さんは「このままではいけない」と、思い切って辞めた。
【黒江に移り住み】
「りら」での経験は瀬戸山さんたち親子にはかけがえのない基となった。
彼女にとってその時々の選択は、何かしらの直感―わくわくする・幸福へと導く―といったキーワードで進んできた。
その直感や流れのまま1年半前、両親・家族ともども市内から黒江に移り住んだ。
【古民家との出会い】
黒江地区で、築160年の古民家に出会った。自分の年齢よりも長くそこに在り続けている家、その存在感に引き寄せられた。今いる私たちがバトンを受け取り未来につなげていく―使命を感じた。
隊員として何ができる?町のファンを増やしたいと考えた。町に在るものを伝える。町を訪れた人の満足度を高めることを考えた。おしゃれな「黒江町あるき」マップ作りに携わった。
旧岩崎邸。築100年は超えている商店兼住居だった建物です。断定はできませんが建物 は構造的に築200年近くともいわれています。木造2階建て、土壁瓦葺。なかなか味わいのある外観の物件。ここを再生しました。
紀州漆器まつり
11月8日、例年では紀州漆器まつりが賑やかに開催される日。不特定多数の人を集めることができない。江理さんたちは知恵を絞った。そしてコロナ対策を行いながらクラウドファンディングを利用した事前予約性の体験イベントを開催したのだった。
古民家再生の外と内部
【これからのこと】
江理さんの隊員としての活動は3年間であと残り1年である。
「まだまだ自分の役割を果たしきれていないような気がします」。と厳しい評価をくだしている。