建築家 高松 


【豊かな空虚さ】生み出す空間こそ




  私の日課はジョギングである。  ベルリンでは「テイア・ガルデン」(写真上)、  ロンドンでは「ハイド・パーク」(写真下)などを走る。                      



      緑地というよりも、日本人のわれわれからすれば単に茫漠(ぼうばく)たる空き地である。そこでは、人々が緑にまみれながら都市生活のひとときを満喫しているのに出合う。 


         魅力的な都市には必ずと言っていいほどこのような空虚な空間が存在する。それも都心である。効率的な都市づくりからすると、無駄としか言いようがない空虚こそ、実は都市の豊かさとゆとりをひっそりと育(はぐく)んでいるのだと思う。                                


       この空虚を守り続けるのは実に大変である。ばく大なコストを必要とする。そのことを覚悟の上で   都市づくりには今「豊かな空虚」を生み出すデザインが求められている。                    







   京都の【縮んだスケール】         



      ところで京都には独特のスケールが潜んでいる。私はそれを「縮んだスケール」と呼ぶ。現代の都市や建築をつくるメートル法に比べると少し縮こまったスケールというわけだ。               


       そのわずかに縮んだ寸法によるしつらえがこの町ではなんとも心地よい。  祇園や町家などその典型である。                    





     都市は勢い巨大な建造物や建築が主役になる。そんな主役たちのデザインに、この人肌の「縮んだスケール」を忘れずに臨むことができれば、都市はもっともっと身近になる。