『夏からの長い旅』
大沢 在昌著
角川文庫
1991年
新宿鮫シリーズで知られるハードボイルド作家の初期作品。 テーマは、男は愛する女のためにどこまで出来るのか?
私と恋人の久邇子に忍び寄る魔の手。正体は?私は見えない敵を探す。
久邇子が初めて私の家で夜を過ごした晩、それは起こった。
時限発火装置を使った放火であった。警察からは、周到な手口により愉快犯などではないと告げられた。
工業デザイナーである私は多少妬まれることはあっても命を狙われてことはない。
久邇子も同様のことのはずだ。
そして数日後、第ニの事件が起きた。その時、私は忘れようとしていたあの夏の出来事が脳裏に蘇った。あの時の一枚の写真がその答えだつた。
私はかつて戦場カメラマンだったのだ。ベトナム、カンボジアで会った平松 と言う男と激戦地に行く。
そこで平松は最前列に飛び出し、命を落としてしまう。シャツターを切りながらも私は奇跡的に助かる。
平松の遺族は何故助けようとしなかったのかと、憤る。日本に残した恋人と弟がいた。
その恋人だった女と、そして弟はーー。
不思議な関係と驚愕の結末。
女性を描くのが上手く、都会的な作風の大沢在昌に幅広いファンが多い。
初期の良い作品も多く、発掘しがいがあると思う。
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(岩田 誠)