今回は、白浜温泉近く秘湯の趣のある「えびね温泉」へ。





   白浜温泉を通りぬけて日置川沿いに。和歌山方面からR42を日置大橋信号左折。


     信号から15分のところに建つ温泉だが、山が迫り、川沿いの道路際には野路スミレやシャガの花が咲き、秘湯に誘われているような錯覚すらする。


      目印は赤い橋。この手前にえびね温泉がある。近くには、キャンプの施設などもある。





    昭和9年に本格的に開湯したようで、昔は飲用と入浴癒しの用途があったという。今も各地から、タンクを積んで御湯汲みにきている。



      何度も来てる内に顔見知りになったのであろうか。笑顔の交流である。








       迸る湯が満タンになるまでの交流であるが、中には景色を写真に収める人。ゆっくり散策する人達もいてその人たちまでもが自然と一体になり、いい風景をつくっている。


   入浴は清潔なたたずまいで、なみなみと掛け流しの、なんとも贅沢な温泉。泉質はアルカリ性単純硫黄泉とあった。肌にまつわるような、とろみ感のある湯。


  付近の山河が美しい  ⬆️



      湯船の中での会話は三重県のひと。御湯汲みのついでにいつも入って帰るという。このお湯は腐らないから、買った水よりいいということ。「いつまでも持つから買い換えなくていいんで、災害にはええよ」とレクチュアーを受けた。




      えびね温泉の由来は、以前はエビネ蘭が沢山自然に咲いていたが、乱獲されたり、鹿の害があって今は山にはないが少しずつ増やしているという。いまその蘭はネットに囲まれて生育させていた。このえびね蘭にちなんで「えびね温泉」としたそうな。


      ついでに対岸に渡ってみると、枯れ草が春の陽に注がれ、なんとも穏やかな風景。川の砂洲には、鹿の足跡や糞があり自然一杯の風景にしばらく身をあずけた。


      御湯も汲んだ。温泉も入った。帰りはR311に出ることにして、日置川沿いを走る。


       木立の木洩れ日の風景は東山魁夷の絵のようだと感じ、目で楽しみ、耳で楽しむ贅沢な温泉紀行であった。


   (岡本 炎祢子)


        わかやま新報女性面掲載